保護者の話
魔族というものはオーブというものから産まれる。我々は長寿であったがために人間のような性交では子供が出来づらかった。
そこで考えられたのが魔力から子供を作ることだった。オーブという特殊な鉱石に2人が魔力を込める。そうすると約100年ほどで子供ができる。
赤ん坊というが、我々の赤ん坊は人間の2歳児ほどだ。
「今日も異常なしっと。」
俺は魔族の中でも有力な貴族の三男坊。跡継ぎにはなれないため、仕事としてオーブの洞窟の見張りをしている。ここで働いて200年、500歳の時に始めた仕事だが、新たな命を守る仕事というものに俺は誇りを持っている。
「…ん?おかしいな、この子…」
オーブを見回ってとあるオーブの前に来た時俺は違和感を感じた。なんだろう。
「あれ?両親の名前が、ない?」
普通、オーブのあるクリスタルの前には両親の名前と魔力を込めた日付、赤ん坊の名前がある。しかしこの子のところにはこの子の名前しかない。
「嫌な予感…」
話には聞いたことがある。子供が欲しくて作ったはいいが何らかの理由で両親が死んだり、離婚していたりすると記入されたものが消えるということは。
「可哀想に…」
透けるクリスタルの中に薄く光る翡翠色のオーブ。その中には水色の髪にクリーム色の羽、白い肌の女の子が眠っている。
「…」
俺は、この子を欲しいと感じた。
(いやいやいや!?いくら年の差を気にしない魔族であっても赤ん坊を欲しいと感じたってなんだよそれ!?落ち着け俺!!)
顔を赤くしながらしゃがみこんだ瞬間、派手な爆発音と人間の気配がこの洞窟に満たされる。
野太い声が響きわたり、俺は不快感を覚える。
「ここを潰せば魔族は産まれてこない、さぁ行くぞ野郎共!!」
そんなことはさせるか。お前らが我々魔族を悪者にするように我々にとってお前らは悪者だ。
「容赦はしないぞ、赤子を、新しい命を絶やそうとする愚か者どもがっ!!」