第二話"自傷衝動"⑤次々文
ぴちゃり。
そんな音が、トイレに谺していました。
私は肌を滑る柔らかい感触に、どうにもこそばゆく感じてしまい、歯を食いしばるようにして堪えていました。
そんな心情を理解しているかのように、彼女は舌を滑らせながら呟きます。
「いいの。恥ずかしがらないで……。もっと、あなたの、声を……、聴かせて……?」
つつー……っと、私の指の間を、柔らかいものが通過してゆきます。私は堪えきれなくなって、思わず声を出してしまいました。
「あっ、やっ……、ん…………」
必死に堪えていると、彼女は上目遣いに視線を上げてきます。
ああ、なんて綺麗な瞳なんでしょう。
よく、綺麗な瞳のことを、吸い込まれそうな瞳、などと表現することがありますが、そんな大げさな現象は実際そうそう起きはしないでしょう。
ですが、この、彼女の瞳であれば吸い込まれそうになるのも分かる気がします。
この瞳になら、私はいくらでも吸い込まれてみたいものです。
夜のように綺麗で、静かで、その深淵は一向に見えそうにありません。
その深みがそのまま、彼女の心の深さを表しているようで、その神妙な表情が、私の思考能力を奪います。
瞳だけではありません。
彼女の触れる指は冷たく、私の腕を掴んでいます。
見るからに細い腕です。全力で振りほどこうと思えば、いくらでも振りほどけるだろうと思うのですが、そんな気は微塵も起きません。
私の指を拭うその舌は、腕とは正反対に温かいです。
指の一本一本を執拗に舐められ、思わず身体が火照ってしまいそうなほどです。
ちゅぷ……っ。
水音が響きます。
その光景はどうしようもなく淫靡で、なのにちっとも不快ではないのです。
彼女の舌が指先をなぞるだけの、ゆったりした時間が流れていました。
さて、そもそもどうしてこんな事態になっているんでしょうか……。
私は少し、夢心地のような感覚の中、思考を巡らせていたのでした。
何故かペロつくミコト様。
なにやってんのー?
……というか更新忘れてましたすみません……。
まとめて⑥も上げます。