表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天壌命の人間倶楽部  作者: 水無亘里
第二話“自傷衝動”
7/23

第二話"自傷衝動"④

 天壌にとって、他人に関心を抱いたのは二度目だった。

 一人目は、向笠華恋。不器用で甘えんぼで、そして人一倍慎重な彼女は、その友好関係がめっぽう広く、めっぽう浅い。

 そのために誰の傍にいても孤独を感じてしまう。

 適切な距離感を保てず、近づかれることに極度に緊張する彼女は、親友もいない。

 そんな彼女こそが、天壌にとっては重要だった。

 彼女の状態を知れば知るほど、その精神状態の危うさを識れば識るほど、天壌は彼女を愛しく感じていた。

 きっと、私が手を差し伸べねば、この子はどうにかなってしまうのだろう。……いや、もう、とうにどうにかなってしまっているのかもしれない。そう思うと、天壌は自然と笑みがこぼれる。

 彼女が《私のもの》だと、そう認識できるからだ。

 そうであれば、彼女は天壌を欲するだろう。

 天壌だけを欲するようになるだろう。

 向笠は、天壌無しでは生きていけなくなるだろう。

 最終的には、そこまで堕ちて欲しい。

 どこまでも、どこまでも深く。二度と立ち上がれないほどに深く。

 彼女を自分だけのものにしたい。

 天壌はそんな想いで人間倶楽部を設立した。

 天壌が愛する人間を観察、保護するための倶楽部活動。それこそが人間倶楽部なのだから。

 だが。

 今までは向笠と出逢うまで、ついぞ見掛けることのなかった美しい少女が、またも天壌の前に現れたのだ。

 女子トイレに立ち竦む、片手から血を滴らせた少女。

 細く不健康な体型。病的に白い肌。小さい身体によれよれのセーラー服。

 きゅん、と胸が疼いた。

 思うほどに焦がれた。想うほどに焦がれた。

 赤く滲んだ傷跡が思い返される。

 天壌は漏れる吐息を殺すようにして、足を進めた。タイルが乾いた音を鳴らす。

 角を曲がる。そこには。

 目を見開いた彼女がいた。

 天壌は背筋を凍らせるような美しすぎる微笑を浮かべながら、一歩だけ彼女へ詰め寄った。

「みぃ~つけた。あなたを、探してたの。……硫崎茉水りゅうざき まみずさん」

二度目の出逢いです。

しっかり名前も洗い出してるところはさすがのミコト様です。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ