第二話"自傷衝動"①序文
血が、流れていました。
血が、私の腕を滴り、落ちてゆきます。
私は、それを眺めています。
じっと、じぃっと眺め続けます。
痛みが腕を縛り付けます。
痛い。とても痛いです。
でも、まだ足りません。
もっと。
もっとください。
私は、カッターナイフを手首にあてがい、すっと引き抜きます。
皮膚が、裂けます。血が、出ます。赤い。赤い血が、出ます。
痛いです。とても、とても痛いです。
ズキズキと、痛みが身体を走り抜けます。
これです。この感じです。
はぁはぁ、と私は荒い息を吐きます。
そして、そのまま壁にもたれ掛かります。
ふぅ……。
昇り切った疲労感に、冷たい壁が気持ちいいです。
ですが、すぐにそれは焦燥感へと取って代わります。
これはいつものことなのです。
いつも、いつもそう。
もっとメチャクチャになりたいのに。されたいのに。
そう思って突き立てたというのに、一度は昇り詰めたというのに、私はすぐに満足できなくなります。
もう一度、もう一回くらいいいかな……。
あ、やっぱ二回……。ううん、三回。って、だめです私。やめるときはきっちりやめないと。一回。一回ですってば。
私は、そう思いながらカッターナイフを、ちきちき……と出します。
刃がギラリと輝いて、私は思わずうっとりとしてしまいます。
なんて綺麗なんでしょう……。
私は、ぽたぽたと血が滴るそのカッターナイフの刃を、ぼんやりとした気分で眺めていました。
丁寧語で可愛らしく自傷するという暴挙に出ました。
個人的に超可愛い文章になったなーと。
あと、もし声優の花澤さんあたりに朗読してもらえたら、作者は思わず昇天してしまうかもしれません。
今回はわりと傑作だと思ってます。思うだけなら自由です、はい。