【プレゼントは雪と俺と3日間】
「あ……雪だ」
時刻は午後十時。今年のクリスマスは天気予報通りホワイトクリスマスとなったらしい。
私はカーテンを捲っていた手をおろして、ちらりと携帯電話に目をやった。さっきからその携帯電話は誰からの電話もメールも受けてはいなかった。
友人たちはそれぞれのお相手とラブラブなクリスマスを過ごすのに忙しいらしく、一介の友人である私の存在など頭の隅にも残ってはいないのだろう。そして、私のお相手と言えば……
「今頃、仕事に追われてるんだろうなぁ……」
新幹線に乗って二、三時間という距離に住んでいる愛しの恋人は、今日で付き合ってようやく一年を迎える。クリスマスの日にクリスマスツリーの前で愛の告白、という今時珍しいくらいにロマンチックな付き合いを始めた私たちは、しかし蜜月と呼ぶのには程遠い生活を送っていた。
というのも、付き合い始めてわずか三ヶ月で彼の移動が決まってしまい、互いに仕事を抱えながらのため二カ月に一度会えればいい方であった。
それでもこのクリスマスでようやく一年。私たちが付き合えた特別な日であるのに、彼は無理してでも会うどころかここ数週間碌に連絡もなかった。
“しばらく仕事が立て込むから連絡いれられない、悪い。”
という彼からの最後のメールの日付が今日で丁度二週間前だ。
「会いたいなぁ……」
不意に滲みそうになった目蓋を押さえてそう呟くと、突然ドアのチャイムが鳴った。
「お届けものでーす」
「っ、はーい……」
こんな時間に宅配なんておかしいと、後で冷静になれば分かるのに、涙に気を取られていた私は気付けなかった。
慌てて零れかけた涙を拭い、ハンコを片手に慌てて玄関のドアを開けると、そこには───
「えっ……?」
「付き合って一年になる恋人のお届けです。ハンコをお願いします」
そう言って、言葉を交わすのは二週間振り、姿を見るのは二ヶ月以上振りになる彼は自分の唇を指差す。
意図を察した私は苦笑いを浮かべるが、結局は…………涙の滲む瞳のまま、その唇に思い切りその唇に口づけたのだった。
END
※おまけ(種明かし)
「よく来られたわね。仕事忙しかったんでしょ?」
「この日の休み勝ち取るために二週間仕事詰め込んだんだよ」
「……そうだったんだ」
「今日から三日間はいられるよ。……それで?」
「?……それでって?」
「プレゼントはお気に召しましたか?可愛い恋人さん」
「──ええ。とってもね!」
───そんなある年のクリスマス