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まったりティータイム。

最近、首都の住民の間に噂になっているものがある。

お昼を過ぎたくらいの時分になると、公園のベンチで日向ぼっこをする少年とそれにくっ付く幼女3人を見られるのだ。

まるで兄妹のように微笑ましいが、幼女達に聞いてみると自分達は妹ではなくお嫁さんなのだと言う。

少年にも聞いてみるが、少し困ったように微笑む事から血の繋がりは無いと解る。

大方幼馴染みの少年が幼女達の世話を、幼女達は少し年の離れた少年にべったりというのが真相だろう、と公園に子供を連れて来ている奥様方は認識している。

人当たりも良く、幼女達に振り回されながらも屈託の無い笑顔で対応している事から奥様方には大人気である。

公園のゴミ拾いや迷子の世話等も嫌な顔一つせずにやるので、よく公園へ散歩に来るご老人達にも評判はすこぶる良い。

毎週日曜日には少年と幼女達お手製の新作お菓子が振る舞われているので、興味の有る人は訪ねてみては如何だろうか。

淑女の皆様方には嬉しい事に太りにくい材料を使っているらしく、安心して食べられるそうだ。

ともあれ、食べ過ぎにはご注意を。

筆者の友人にも余りの美味しさについつい手が伸び、翌日から走り込みを始めた者もいるくらいだ。







「――という文面で行こうと思うんだが」

「うん、いいんじゃないかな。ってか僕達の事、そんな噂になってたのかぁ」

「はっはっは、ユーリ君は少し自己評価が苦手のようだからね」



からからと朗らかに笑うエアリィさんの横でまったりとお茶を啜る。

ニア騒動から早くも1ヶ月が経った。

すっかり忘れていたご近所さんへの挨拶まわりやギルドへの出稼ぎやらを終え、気が付いたら1ヶ月なんてあっと言う間だった。

ん、ニア騒動?

あぁ、それは僕がニアのかわいさにブレイクした挙げ句酸欠に陥って気絶した時の事だよ。

良く考えて欲しい。

あのコピペはくんかくんかすーはーすーはーから一切息を吸い込まずに最後まで言い切っている。

あれを真似したら酸欠になるのは当然じゃないか。

いやまぁ、僕はあのコピペを全部やった訳じゃないけどさ。



「ぜー、はー……ただい、ま」



息を切らせてロビーに入ってきたのはシーナだ。

汗だくで疲労困憊といった風体に思わず苦笑を漏らしながら、タオルとよく冷えたお茶を渡す。

こきゅこきゅ、ぷふー。

喉が潤っていく感覚に、へにゃりと顔を綻ばせるシーナ。

やっぱりこの辺は姉妹なんだなぁ、へにゃり顔がそっくりだよ。

首や背中を軽く拭いて、バスタオルを渡してあげる。



「お風呂沸かしてあるから入ってきなよ」

「ありがとうございます。あ、一緒に入りませんか?」

「あはは……シーナが脱水症状になりそうだし、今回は遠慮しとくよ」



むぅ、とちょっぴりほっぺを膨らませて不満げなシーナを見送って、再びお茶を飲んでまったり。

時計が示すのは朝9時。

がっつり暑くなる時間帯の前に帰って来れたのは良かった。

熱中症で倒れたら大変だもんね。

にしてもダイエットかぁ、女の子は大変なんだね。



「それにしてもエアリィさんに文才が有ったなんて……天は二物を与えず、なんて言うけどありゃ嘘っぱちだよね。かわいくて綺麗で弓も得意で頭も良くて文才まで有るとか」

「随分と買ってくれているみたいだね?」

「そりゃあ、大好きなエアリィさんの事だもん」

「有り難う、と言って置くよ。しかし幾ら何でも買い被り過ぎじゃないかい?」

「まだ見くびっているかも知れませんよ」

「……ユーリ君、そんな格好良い台詞をサラッと吐くのは女誑しの最たるものだよ」



え、今の格好良かったの?

戸惑う僕にくすりと笑いを漏らして、エアリィさんは作業に戻った。

実は先日、亜人ギルドに行った際に『私の好きな物、人』って題材で作文を募集してたんだ。

ヒナちゃんに聞いてみた所、亜人ギルドが発行してる情報誌のコラムに載せる作文を大々的に募集していたとの事。

案外集まりは良くて傑作も数多く有るらしく、結構人気も有るみたい。

せっかくだからと、僕達家族も書いてみる事に。

……題材に僕を選んだら部屋から出ないからねっ、恥ずかしいもん!とみんなに言い放ったのは記憶に新しい。

そんなこんなで応募した所、なんとエアリィさんの書いた作品が見事最優秀作品に選ばれた。

タイトルは『食べ歩き珍道中』で、各国各町の美味しいものを面白おかしく綴った作品だ。

話を飽きさせない構成力と美味しさが伝わってきてよだれが止まらない文章力で紹介されたお店に突撃する人が後を絶たず、材料が無くなって臨時休業するお店まで出る始末。

その文才を買われて、エアリィさんは亜人ギルドの情報誌の1ページを任される事になったんだ。

それで今は首都で最近噂になってる事を題材に執筆してる、って訳。

……ん、僕?

佳作にも引っ掛からなかったさ!

ふんだ、いいもんね。

僕はシーナとイチャイチャするもん。

ナギさんと美由里は言うに及ばず、ミナとニアも文章の素直さが評価されて佳作に入選。

結果、見事に弾かれた僕とシーナで傷の舐め合いという名目の1日デートを敢行。

作品を読んだ美由里に「ぽんこつ夫婦」と言われてしまった。

うぅっ、最近美由里が厳しいです。

いいじゃないか、文才無くたって!

学校の読書感想文では毎回『良く……良く頑張ったでしょう』を貰って図書券手に入れてたんだし。



「……ゆーり」

「んぇ?」



下から届く声に顔を向ければ、ニアがじっと僕を見上げていた。

今日は耳の上やや後方で髪の毛をちょろんと結び、ミニツインテールにしている。

どうしたの、と聞く前にニアはよじ登って太ももの上に乗っかる。

そのまま肩を登り肩車の状態に。

むふー、と息を吐いてご機嫌な様子。

ニアは肩車が大層お気に入りらしく、よくよじ登っては僕のおでこをぺちぺち叩いて遊んでいる。

ちっちゃな手でぺちぺちされる感覚はなかなか気持ち良い。

調子に乗って『ニア専用ゴーレム、ゆーり壱式』とかやって公園で全力疾走してみたりもした。

ちなみに弐式は四つん這いになってのお馬さんごっこだ。



「ゆーり、しゅっぱつ」

「了解、お姫様」



ウィーンと立ち上がる僕に、ニアはどうやらご満悦な様子。

それをエアリィさんは羽ペン片手に眺めている。

思わずドキッとするくらい優しい笑みを浮かべて、軽く手を振ってくれた。



「じゃあ地下へ探検に行こうか?」

「……ん」

「出発進行~」



ニアを肩車してテクテク歩く。

地下には貯蔵庫や倉庫といった施設の他、何故か鍛錬場も有る。

僕も暇な時にチョイチョイ魔法の練習をするのに活用してる。

いやね、付呪は某スタァァァァップゲームのお陰でイメージが楽なんだけど、代わりに攻撃や回復に補助といった基本呪文が使えないんだよねぇ。

あのゲームのだと少し内容が偏るから、別のゲームの呪文を練習してるって訳。

お陰で回復と補助はバリエーションが豊富になった。

パーティーに1人居れば全滅しない人材だね。

攻撃呪文は……イマイチ。

まともに使えたのはファイヤーとサンダーとフィンブル(吹雪の呪文)くらいで、後は上手く発動出来なかった。

やっぱりイメージが大事なのか、上手く発動までの道筋を想像出来ないと使えないみたいだ。

取り敢えず攻撃呪文で使えるのはファイヤー、サンダー、フィンブル、それと……ノスフェラート。

ノスフェラートは余程の事が無い限りは封印して置こう。

まぁそんな鍛錬場も有る地下は、案外広くて遊ぶには持って来いなんだ。

付呪も色々施したから、寒過ぎたり湿気が酷かったりなんて事は無い。

照明も有って明るいし。

天井までの距離も有るから、ニアを肩車してもぶつかる心配は全く無い。

広い通路を抜けて遊び場にしている大広間へ。

スポンジボールで野球も出来る広さだ。



「さて、今日は何をして遊ぼっか?」



頭上のお姫様はするすると器用に僕の体から降り立ち、両手を上げて綺麗に着地。

ちょっと得意気だ。

鼻からむふーって息吐いてるし。



「……ん、あっち……」

「あっち?」



ニアが指差す方向、不自然に盛り上がった壁がある。

ちょうど入り口からは見えない場所だ。

……いやいや、不自然極まりないよ!?

周囲に全く溶け込む気の無い星条旗と、その上にちょこんと飛び出た小さな手。

極め付けに紫銀の髪の毛が星条旗の上に揺れていた。



「……こそこそ」

「いやいや、こそこそって口に出しちゃダメでしょ」



星条旗の描かれた布を取り上げると、わひゃんって悲鳴を上げてミナが現れた。

そのまま僕に抱き付いてくる。



「おっと」

「んー、ユーリの匂いがいっぱい♪」

「甘えん坊なお嫁さんだなぁ」



胸にほっぺをすりすりしてくるミナをむぎゅっと抱き締め、お返しに軽くキスをしてあげる。

ふにゅっと柔らかい感触が唇に伝わる。

と、服の裾をくいくい引っ張る感覚。



「ゆーり、にあも」

「……おいで、お姫様」



少し屈んで顔の高さを合わせると、ニアは僕の頭を両手で抱き留め何度もちゅっちゅと唇を重ねてくる。

情熱的におねだりする姿に絆され、小さな舌に僕の舌を絡ませた。

ぴくっぴくっと震えながら、なすがままに受け入れるニア。

ひどく背徳的な官能に胸が高鳴る。

唇を解放すると、ニアは瞳を潤ませ熱い吐息を吹き掛けてきた。

幼女特有の甘い匂いに、発情したメスの匂いが重なる。

生まれてすぐなのに発情しちゃうニアがえっちなのか、それともこんな幼気なニアに欲情しちゃう僕がえっちなのか。

そんな事を考えていたら、部屋の右奥から抗議の声が上がった。



「ずるいずるい~!ミナお姉ちゃんとニアちゃんだけお兄ちゃんとちゅーしてずるいよ~!」



耐え切れなかった美由里がオモチャ箱の裏から姿を見せる。

いや、ばっちり尻尾がはみ出てたけどね。

ぷんすか膨れるぷにぷにほっぺをつんつんしながら、僕は美由里も抱き締めた。



「うみゅっ」

「あはは、せっかく隠れてたのに出て来ちゃダメじゃないか」

「う~、だってだってぇ」

「文句言っちゃう口は塞いじゃうぞ~」

「んむっ、んっ……ちゅ、ちゅぷっ……んはぁ、んくっ……♪」



顎をくいっと持ち上げて唇を重ねると、すぐに舌を伸ばしてきた。

口内の唾液を舐め取り、んくんくと飲み込む美由里。

すっかりえっちな娘になってしまった。

妹がこんなにいやらしくなっちゃうなんてお兄ちゃん嬉しい。



「……ぷくー」



不機嫌そうな声に唇を離すと、ミナがむぎゅっと抱き付いてきた。

膨れたほっぺをつんつんすると、ぷちぅと空気が抜ける。



「どしたの、ミナ?」

「つーん」

「ミナー?」

「ぷいっ」

「べろちゅーしなかったからヤキモチ?」

「つ、つーん」



相変わらず解りやすくていいなぁ。

いじけるお嫁さんの姿を微笑ましく眺めていると、更にぷくぷくほっぺが膨らむ。

あんまり意地悪してもかわいそうだな、と思い口を開いた。



「ミナ、舌をべーって突き出してみて」

「ん、こう?」



膨れていたのにすぐに「んべっ」と舌を伸ばすミナ。

そういう素直な所、僕は大好きだよ。

かわいいお嫁さんに笑い掛けながら、伸ばされたピンク色の舌を唇で甘噛みしてちゅぅぅっと強く吸い上げた。



「んんっ、んうぅぅっ!?んっ、んんぅっ、んーー、んーーーーっ!」



舌を吸われる快感と舌を動かせない事で声が出せず、唸りのような喘ぎ声を上げる。

ミナは舌を吸われると気持ち良いのか、いつもふにゃふにゃのとろ顔になる。

今回も膝をガクガク震わせながら、かわいいとろ顔になっていた。

一頻り気持ち良くしてあげた後で解放すると、くてっと凭れ掛かってきた。



「やり過ぎちゃったかな?」

「はー……はぁー、ゆ、ユーリぃ、こりぇ、しゅごいよぉ……♪」

「うわぁ……お兄ちゃん、えっち過ぎだよぉ……キュンキュンきちゃったぁ」

「ゆーり、えっち……」



美由里は刺激が強過ぎたのか顔を真っ赤にしてニアの目を覆っていたけど、ニアも顔を赤く染めて指の隙間からバッチリ見ていた。

ちびっ娘達はキスだけでとろとろになっちゃうから、すっごくかわいい反応が見れる。



「……で、かくれんぼの続きやる?」

「ふみゅう……む、無理だよぉ……♪」

「私もドキドキしてダメかも……」

「ゆーり、まったり、しよ?」



という訳でニアを肩車、左脇腹にミナ、右脇腹に美由里をくっ付けてロビーに戻る事に。

ちょうど執筆を終えたらしいエアリィさんにニヤニヤされた。



「おや、随分と早く帰って来たね。しかも3人共とろとろじゃないか?」

「いやぁ、まぁ、色々有りまして」

「ユーリ君のみるくの匂いはしないが……お盛んなようで何より」

「あら、ゆーくん朝からお盛んなのぉ?」



キッチンからパウンドケーキと紅茶を持ってナギさんがやってきた。



「エアリィちゃん、今日はパウンドケーキを作ってみたのよぉ。お口に合うといいんだけれどぉ」

「いつもすまないねナギ君。……お、入っているのはみかんのチップだね?みかん大好き教の信者である私には堪らない演出だ」

「いつも?って事は毎回ナギさんがお菓子の差し入れを?」

「えぇ、頭を使ったら甘い物が欲しくなるでしょぉ?新しいお菓子の開発も出来るから、私も楽しくなっちゃってぇ♪」

「エアリィさんいいなぁ。ねぇお姉ちゃん、私達もケーキ食べたい!」

「ちゃぁんとミューリちゃん達の分もあるわよぉ」

「さっすが~、お姉ちゃんは話が解るっ」

「……もしかして、今までも用意してくれてました?」

「ふふっ、みんな遊びに行ってて余っちゃうから、いつもシーナちゃんが頑張って食べてたのよぉ?」

「それで最近、お姉ちゃん毎日走ってたんだ……」

「日曜日のお菓子作りだけじゃ我慢出来なくなっちゃってぇ」

「いやん、我慢出来ないだなんてお姉ちゃんったら欲しがり屋さん!」

「妹よ、着眼はそこでいいのか」

「兄としてはなかなか微妙な心持ちみたいだねユーリ君」

「ユーリはミューリちゃんの発想力に嫉妬してるんだよね」

「くそぅ、僕だって面白い着眼が欲しいんだい!」

「……ん、てつだう」

「あらぁ、有り難うニアちゃん♪」



やいのやいのと喧しく喋りながら、時間はゆったり過ぎていく。

テーブルにパウンドケーキが配られ、紅茶の香りが鼻をくすぐる。

みんなに行き渡った所でお風呂上がりのほこほこシーナもやってきて、仲良くティータイムの始まり始まり。



「あ、美味しい。みかんのチップがアクセントになってて良い感じ」

「……ん、おいしぃ」

「ねぇねぇ、これ今度の日曜日に作ってみよーよ」

「きっと喜ばれるだろうなぁ」

「うぅっ、美味しい……ダメ、我慢しなきゃさっき走ったのが無駄になっちゃう」

「カロリー控え目だから、これ5つでバナナ1本分よぉ」

「ナギさん、おかわり下さい!」

「私にもおかわりを頼むよ。いやはや、余りの美味しさに無言で食べてしまったよ」

「うふふ、喜んで貰えて何よりだわぁ」



まったり過ぎていく日常の1コマ。

今回はそんなお話っ。


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