転生幼女はココア色。
更新遅れて申し訳ありません、そして相変わらずの駄文です。
日も暮れて辺りに夜の帳が降りる。
期待と焦燥感がごちゃ混ぜになりながら最高潮に至り、とても落ち着いては居られなかった。
あっちへうろうろ、こっちへうろうろ。
「まだかな、まだかなぁ~」
「まだだよ、まだだよぉ~」
僕の腕に抱かれているミナが苦笑を滲ませながら返してくれる。
庭のベンチに腰掛けてそのまま膝の上に乗せ、小さな体をむぎゅむぎゅ抱き締める。
「まだかにゃ~」
「まだだにゃ~」
「にゃにゃっ?」
「にゃにゃん♪」
ネコ語で会話しながら丸めた手でお互いのほっぺをむにむにし合う。
脇の下に手を潜らせて抱き竦めたら、唇を尖らせてキスをねだってきた。
そっと唇を重ねたら、柔らかな舌がすぐさま割り込んでくる。
くにくに、れろれろ。
淫らな幼女に口内を余す事無く蹂躙され、抱き締めたまま背後に倒れ込みそうになる。
と、背中を支えるようにむきゅっと何かが抱き付いてきた。
「うにゃにゃ~♪」
甘えん坊ネコモードになった美由里が、後ろから僕の肩に顎を預けてきた。
右手を伸ばしてほっぺを撫でてあげると、美由里は器用に喉をごろごろと鳴らした。
竜族じゃなくて実は猫族じゃないんだろうか。
そんな事を考えていたら、左手にぱたっと重みが掛かった。
振り向けばどこから取り出したのか、イヌミミカチューシャを着けたシーナが期待するような瞳で見上げてきていた。
――わ、シーナ似合うなぁ。
余りの違和感の無さに一瞬本物かと見間違えた。
頭を撫でてあげるとくすぐったそうに首を竦めてもっともっと、と体を擦り付けておねだりしてくる。
「にゃぁにゃぁ♪」
「うみみゃあ♪」
「わんわん♪」
3人共抱き寄せ順番にキスしてあげると、にへらぁとだらしなくとろけた笑みを浮かべる。
みんなかわいいなぁ。
さっき設置したテーブルの向かいではナギさんがあらあらと微笑みながら、幸せそうな顔で鼻血を噴きながら気絶しているエアリィさんを介抱中だ。
……そう言えば猫ごっこは禁止されてたんだっけ。
禁止令を発布したシーナが骨抜きになっちゃってるから止める人がいない。
お陰でエアリィさんの出血量は右肩上がりの一途を辿っている。
まぁ、いざとなったら回復魔法が有るから大丈夫だろう。
意識を逸らしていたら、お腹に軽い衝撃が生まれた。
視線を下げればミナと美由里が丸めた手で、ぽこぽこと攻撃を仕掛けている。
「フシャァー!」
「にゃうん」
「うみゅぅ」
両手を挙げて威嚇してみたら、2人は頭を抑えて縮こまった。
怯えたフリをしてぷるぷる震えている。
いつもはここで抱き締めてあげるんだけど、今日はちょっぴり意地悪してみよう。
2人を放置してシーナを抱き上げて膝の上に乗せると、シーナは嬉しそうにわんわん言いながら両脚を僕の腰に絡めてきた。
体が密着した事で、女の子特有の柔らかさと体温が伝わってくる。
優しく唇を重ねると体がぴくんと揺れる。
最初は唇から、ほっぺ、首、肩、鎖骨と順番にキスをする。
その度に体がぴくぴくと跳ね、悦びに満たされた吐息が僕の首筋をくすぐる。
「はぁ……ぁん、ご主人様ぁ……♪」
「いいこいいこ」
「えへへ♪」
「……むぅ~」
不機嫌な声のする方へ目を向ければ、ミナが頬を膨らませていた。
ぷくっと膨れたほっぺに指を押し当てる。
「ぷちぅ」
「つんつん」
「やぁん、つんつんしちゃダメぇ」
いやんいやんと身を捩るミナ。
その動きがかわいくて、ついつい意地悪したくなっちゃう。
服を捲り上げるように左手をもぞもぞと這わせて、最近僅かに膨らんできた胸を直に揉む。
一瞬身を強ばらせたミナだったけど、すぐに体を寄せて快楽を受け入れた。
ぷっくりと充血したさくらんぼを人差し指の腹でこねる。
くにっくにっ、と指が左右する度にミナの口から歓喜の喘ぎが漏れ出る。
本当にえっちで淫らなお嫁さんだ。
もっと気持ち良くさせてあげようと左手を下半身に伸ばして、
『キィン!キィン!』
「――っ!?」
突如鳴り響いた甲高い音に頭が冷める。
音の出所を探れば、庭の中央に魔方陣が幾重にも連なって浮かび上がっていた。
見た事の無い紋様が方陣の外側に敷かれていて、内側には幾何学模様が並び幻想的な雰囲気を醸し出している。
咄嗟に身構えたナギさんとエアリィさんを右手で制する。
多分アレは転生の方陣だろう。
「――遂に始まったか!」
「わぅん!?」
「あ、ごめんシーナ」
急に立ち上がった所為でバランスを崩したシーナがしがみついてきた。
ゆっくり下ろしてあげたら、ちゅっとキスをして離れてくれる。
うん、忠犬だね。
ミナはちょっぴり顔を赤くして左手に抱き付き、美由里は放置されてしょんぼりしながら僕の服の右端を掴んだ。
お詫びに頭を撫でてあげると、すぐに太陽みたいな笑顔を見せてくれた。
ほんわかしつつも、意識は魔方陣から外さない。
魔方陣は尚も『キィン!キィン!』と甲高い音を立てながら、術式の密度と込められる魔力を高めていく。
中空から新たな魔方陣が地面に落ち重なる度に、浮かび上がる紋様が変化していく。
随分と派手な転生方法だけど、家に掛けてある付呪の効果で近隣の住民には全く気付かれていない。
音も漏れなければ光も囲われているから、敷地の外からは何が起こっているのか認識出来ない。
――まぁ、そうじゃなきゃこれだけの音と光で警備兵がすっ飛んで来るハズだし。
魔方陣から溢れ出る白い光は尚も輝きを増して周囲を照らし出す。
一見昼間かと見間違う程に明るく照らされた事で、一瞬だけ目が眩んだ。
すぐに慣れて光を見据えれば、魔方陣に描かれた紋様が最終調整の段階に入ったのが読み取れた。
理論は解らないけど感覚で解る。
どんな娘が現れるのがとドキドキしながら光を見つめて、5分程過ぎただろうか。
不意に魔方陣から重なる音が消え、発せられる光も大人しくなっていく。
最後に1つ、パリンと硝子が割れたような音を残して魔方陣は消え去った。
後に残ったのは静寂と、
「…………」
仰向けに倒れ込んでいた全裸の幼女だった。
気絶していた幼女を用意していた部屋に運び、水挿しを手に台所へ向かう。
服を着せるから、と追い出されたからでは無い、断じて無い。
シーナやエアリィさん達は幼女を介抱したり着せる服を選んだりと、起こさないよう静かにハシャいでいる。
唯一、ミナだけは僕の手伝いをするからと着いて来てくれた。
「僕、ミナのそういう所が大好き」
「……にへへ」
ほっぺに手を当てて照れてた。
くそぅ、かわいいなぁ。
気が回るし安らげるし、やっぱり僕の居場所はミナの側に違いない。
台所に着くと、ミナは食器棚の隣に置かれた踏み台を流しの前にセットする。
身長が足りないミナと美由里の為に、適当な魔法で作り上げた踏み台だ。
ふんふん、と鼻歌を奏でながら水挿しに水を汲むミナ。
その小さな背中が、急に愛おしく感じた。
踏み台を使って流しに立つミナを後ろからむきゅっと抱き締める。
髪の毛から桃の香りがする。
「わ、ユーリ?」
「やっぱり僕の一番はミナだけだなぁ」
「今日のユーリは甘えん坊さんだね?いいこいいこ♪」
振り向いたミナの小さな手が頭を撫でる。
その度に全身から力が抜けていって、ふにゃふにゃの骨抜きにされちゃう。
僕の方がお兄さんなのにミナに頭を撫でられたりぎゅっと抱き締められたりすると、思わず「ミナおねぇちゃん」って呼びたくなる。
それくらい心から安心出来る。
「くんかくんか」
「やんっ、嗅いじゃダメぇ♪」
そんな風にイチャイチャしつつ、水挿し片手に部屋へと戻る。
勿論右手はミナと恋人繋ぎだ。
部屋に戻った時、みんなから羨望の視線がミナに注がれていた。
それを受けて、ミナはちょっぴり得意顔。
にゅっふっふと胸を張る姿もかわいくて思わず笑みが零れる。
水挿しをベッド横のテーブルに置くと、寝かされている幼女が目に入った。
褐色より少し濃い、ココア色の肌。
肩甲骨付近まで伸びるサラサラの髪は、銀の中に少しだけ青みを滲ませている。
程良く整った顔立ちはミナや美由里に負けず劣らず、将来絶世の美女になる事は疑う余地も無い。
この世界には美幼女や美少女、美女しかいないんだろうか。
ふと、そんな疑問が頭を掠めた。
眠り続ける幼女が着ているのは、白い下地に青い小さな花びらがあしらわれたパジャマだ。
生地の白さが肌のココア色とマッチしていて、エキゾチックなかわいさを引き出している。
「すぅ……くぅ……」
かわいらしい寝息を立てて眠る姿は保護欲を存分に掻き立て、僕の父性を刺激してくる。
知らずに腕が伸び、幼女を撫でていた。
少しくすぐったいのか、軽く身動ぎする。
――ティス姉が、自分と言う存在を捨ててまで僕に会いに来てくれたのが、この姿。
完全に切り離して考えるのは難しいけれど、この娘の為に出来る事が有るなら、何だってやってみせよう。
そう決意を新たにしていたら、やけに周りが寂しい。
首を巡らせたら、ちょうど部屋を後にするミナと目が合った。
側に居てあげて、と唇の動きだけで伝えてくる。
どうやら気を利かせてくれたミナが、みんなを連れ出してくれたらしい。
ありがとう、と僕も唇の動きで伝えたらとびっきりの笑顔を返してくれた。
音を立てずに扉が閉まり、部屋に響くのは幼女の安らかな寝息だけ。
暫く寝顔を見ていたら、なんだかこっちまで眠くなってきた。
欠伸を噛み締めながら部屋の隅に置かれていたロッキングチェアをベッドの脇に移動して、快眠や疲労回復といった付呪を掛けていく。
そうそう、この娘にも付呪して置かなくちゃ。
前みたいに喪う訳には行かないからね。
懐から黒檀の指輪を取り出し、例の完璧防護の付呪を重ねる。
薄く光を纏った指輪に1つ頷き、幼女の小さな左手を取って薬指に嵌めてあげる。
これでよし。
取り敢えず幼女の安全は守られた事にほっと息を吐いて、ロッキングチェアに凭れ掛かった。
ふかふかなクッションが体を包み、温かな感触に眠気が増幅する。
「ふわぁ~ぁ、おやすみぃ」
もぞもぞとネコのように体を丸めて、天井に掌を向ける。
灯りが弱まったのを確認して、僕は瞼を閉じた。
明日はこの娘とお話出来るといいなぁ、なんて思いながら。