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日向ぼっこは最高の贅沢です。

目が覚める。

何時だろうと枕元の目覚まし時計を見たら、朝の5時半。

随分早くに起きたなぁ、と窓の外を見れば爽やかな快晴が広がっていた。

昨日の雷が嘘みたい。

今日はみんなの予備日って事になってるけど、実質ただの休みだ。

隣で眠るミナの頭を撫でながら、今日の予定を考える。

本を買い揃えてもいいし、色々食べ歩いてもいい。

いっその事誰かを誘ってデートするのも、とそこまで考えてはたと気付いた。



「そろそろ金欠だ」



家を買って食費も出してアクセサリーも買って、知らぬ間に懐事情はかなり切迫していた。

ギルドへ行って稼いで来よう。

なんだかすっかり社会人っぽくなったなぁとへらへらしていたら、ほっぺをむにっと押された。



「みにゃ?」

「おはよう、ユーリ」

「おはにょー」

「にょー♪」

「にゃにをすにゅ!」

「きゃぁん♪」



いたずらしてくるお嫁さんに抱き付き、ほっぺをむにむにしてやる。

ミナのほっぺはすべすべのもちもちですごく手触りが良い。

身を捩って逃げようとする小さな体をつんつんしてると、逆に脇腹をつつかれる。

お互いつんつんむにむにしてると妙なテンションになり、段々相手を悦ばせる為の動きに変わっていく。

耳たぶを優しくはむはむすると、ミナは嬉しそうに体をぴくんぴくんと揺らす。



「かわいいなぁ、ミナは」

「にへへ、ユーリの為にもっとかわいくなるから、期待してていいよ」

「これ以上かわいくなったら僕キュン死しちゃうよ?」

「人工呼吸で蘇生したげる♪」

「じゃあ今すぐお願い」

「んっ♪ちゅ、ちゅぷっ、ちぅ」



唇を割って小さな舌が入り込んでくる。

舌を伸ばして絡ませ合い、互いの唾液を交換して吸い上げる。

ミナの体が数度跳ね上がり、甘い香りが鼻をくすぐる。

唇を離すと銀糸が僕とミナを繋いでいた。



「ねぇねぇ、ユーリ」

「うん?」

「私ね、ユーリと触れ合ってるだけでえっちな気分になっちゃう悪い子なの」



ミナは僕の右手を取ると、そっと導く。

その瞳は妖しく潤みを帯びていた。



「だから私のえっちなここに、えっちなのが治るように、いっぱいお注射欲しいな♪」



えっちなお嫁さんが満足したのはそれから4時間後、すっかり日が昇った後だった。

最近起きてから布団を出るまでが長いなぁと苦笑を漏らす。

みんながかわいいから仕方無いか、とダメな方向に納得する僕だった。





さて、若干朝からハードな運動をした僕は1人で冒険者ギルドへ向かっていた。

明日ティス姉が精霊になって転生する、と闇さんからの情報を伝えると、みんな準備に走り回ってくれた。

ナギさんとエアリィさんは部屋の掃除と家具の調達、シーナは一応の服の調達、ミナと美由里は歓迎パーティーの準備だ。

まぁ先立つものが必要なので早い所稼いで来よう、とみんなに送り出されてきた訳。

頼りにされてる感に、僕のテンションも上がりっぱなしだ。

冒険者ギルドの扉を潜り受付のお姉さんに話を通して、階段を軽快に昇っていく。

執務室まで行くと、軽くノックを2回。

返事が聞こえたので扉を開けると、書類の山が机に載っていた。

その奥で揺れるポニーテール。



「どちら様……ゆ、ユーリ殿っ!?これは失礼致しました!」



椅子から立ち上がりビスィッ、と敬礼を決めるテュルエさんに思わず苦笑いを返す。



「そんなに畏まらないで下さい、僕はまだ自分1人では何も出来ないひよっこなんですから」

「いえ、ユーリ殿はワナギューテ2番札の背君と成られる御方、その様な方に無礼を働く訳には参りません」

「出来れば気さくな方が僕も嬉しいんですが……まぁ、それは置いといて。出稼ぎに来ました」



説得するのは諦めて本題を切り出した。

長年ナギさんが説得して無理だったんだから僕に説得出来るハズも無いし。

するとテュルエさんは幾つかの装飾品が入った籠と数枚の書類を取り出した。



「これは?」

「ユーリ殿の噂を聞きつけ、ギルドに回されてきた依頼書、嘆願書の類です。付呪を使える者は大抵王宮付きですので、どこにも所属しないユーリ殿は与し易い相手と見られているのでしょう」

「どれどれ……雷撃の付呪、浄化の付呪、獄炎の付呪、雹牢の付呪……何で半数以上は攻撃系の依頼なんだろう」

「例の死霊を葬り去った事に様々な憶測が付随しての事でしょう。更にユーリ殿の邸宅に掛けられた付呪も話題を呼んでいる様です。決して傷付かず侵入も出来ず風雨も弾く要塞だと」

「……ちょっとやり過ぎたかな」

「私共と致しましては、なるべく効果を落とした治癒系統の付呪に限ってお受けして頂きたいのですが」

「うん、了解です。僕もいたずらに火種を撒き散らしたくは無いので。あ、テュルエさんにも色々付呪して置きますね。肩凝り解消とか目の疲れを癒やすのとか肌荒れを防ぐのとか腰の痛みを和らげるのとか」

「よっ、宜しいのですかっ!?」



目を見開いて食い付くテュルエさん。

デスクワークには堪らない効果を取り揃えてみただけあって、眼鏡の奥の瞳がキラキラしてる。

ソファーを借りて治癒魔法を付呪する傍らテュルエさんの眼鏡に色々重ねていく。

付呪が連なるに連れて体が快調になるのかどんどん表情が柔らかくなる。



「はい、これで大丈夫です。でも働き過ぎて無理しちゃダメですよ?」

「有り難う御座います。心配には及びません、働くのは私の趣味でも有りますので」

「倒れたらナギさんとお見舞いに行きますから」

「そっ、そんな恐れ多い!?」

「だから無理しちゃダメですよ」

「りょっ、了解しました!」



座ったままビスィッ、と背筋を伸ばすテュルエさん。

なんか扱い方が解ったかも。

取り敢えず付呪を終えて白金貨27枚と金貨32枚をゲット。

やっぱり首都だけあってお金の貯まる速さが段違いだ。

それなりにいい効果の付呪をしてるけど、それでも3秒で総HPの1%しか回復しない。

普通に考えたらすごい効果らしい。

けどミナに掛かってる自動回復は0,00001秒で総HPの80%を回復させるし、総HPの5%を超えるダメージを強制的に総HPの5%分のダメージに置き換える付呪もエンチャントされてるから、実質無敵だ。

というかそもそもダメージが通らないし。

もう僕でも為す術が全く無いから、夫婦喧嘩になったら必ず負ける。

……まぁ、ミナにされるならキスでもびんたでも喜んでされちゃうけれどね。

え、手遅れ?

ははっ、何を今更。





一度家に帰ってお昼ご飯を食べた後、みんなに生活費を渡して再びギルドへ。

今度の行き先は亜人ギルド。

ヒナちゃんとお茶する序でにベンチの修復をする予定。

ギルド前に到着したら、所々炭化したままのベンチが片付けられずに置いてあった。

修復魔法を適当にイメージしたらあっという間に元通り。

これでまたシズナが日向ぼっこ出来る。

意気揚々と亜人ギルドに入り、受付の女の子に用件を伝えようとすると周囲から視線が刺さった。

そういえばこないだ説明する前に走って逃げたんだっけ。

受付の狸っ娘はちょっぴり頬を染めてる。

なんだか気恥ずかしい。

取り敢えず用件を伝えて階段を昇る。

扉をノックすると「はぁ~い」と間延びした声が聞こえてきた。

がちゃっと開けて中に入ると、ちょうど書類整理を終えたヒナちゃんと目が合った。



「あ、ゆ、ユーリくんっ!?」

「やほ、ヒナちゃん。遊びに来たよ」

「い、いらっ、いらっしゃい!」



わたわたと駆け寄ってきたヒナちゃんは、両手を広げて抱き付いてきた。

甘い花の香りがする。

お返しにむぎゅむぎゅ抱き締め返すと、ヒナちゃんは顔を真っ赤にしながら更に花の香りを強めた。

柔らかいなぁ、ぷにぷにだ。

髪の毛もいい匂いがする。

くんかくんかしたら体をぴくぴくさせて恥ずかしがってた。



「はぅぅ……」

「ヒナちゃんの匂い、好きだよ」

「う、あ、ユーリくぅん……」



目を合わせていると、突然ヒナちゃんが唇を重ねてきた。

歯がぶつかってカチカチ鳴る程に情熱的なキスをされ、僕は驚いた。

以前口にしたのとはまた違う味の蜜がヒナちゃんからとぷとぷ溢れてくる。

癖になる味だ。

舌を伸ばして夢中で蜜を吸っていると、僕を抱き締める力が急に弱くなった。

唇を離すと、ヒナちゃんは荒い息を吐く。



「んっ、はぁっ、はぁ……っ、ユーリくぅん……ご、ごめんね、急に」

「どうしたの、ヒナちゃん」

「ゆ、ユーリくんの顔を見たら、す、好きって気持ちが、溢れちゃって、止まらなくって、ち、ちゅぅ……しちゃった」



びっくりするくらい真っ直ぐに伝えてくるヒナちゃん。

アルラウネさんは基本的に思った事は真っ直ぐ伝えるのが好きみたいで、自分からは捻った言葉を使わない種族。

だから仕事も恋も一直線だ。



「僕もヒナちゃんに逢えて嬉しいよ」

「は、はぅぅ」

「今日は一緒に日向ぼっこしよっか?」

「う、うん。じゃあそっちの椅子で、ひゃわぁっ!?」



言葉の途中でヒナちゃんをお姫様抱っこしたら、かわいらしい悲鳴が上がった。

軽いなぁ、5キロの米袋の方が重い気がするや。

すべすべの肌を堪能しつつ、日当たりのいい窓際のソファーに座る。

勿論ヒナちゃんは僕の膝の上。

後ろから抱き締めると更に花の香りが強く漂い始める。

ちょっぴりくらくらしてきた。



「ヒナちゃんかわいいなぁ」

「そ、そんな事ないよぉ」



恥ずかしそうにくねくねしながら体を擦り付けてくる。

ぽかぽかした陽気に包まれてまったりふにふにしてると、ヒナちゃんが振り向いて僕を見上げた。

柔らかい控え目なぷにぷにおっぱいが胸板に当たってちょっと気持ちいい。



「ゆ、ゆっ、ユーリくんっ」

「んぅ?」

「あのっ、あのねっ、わたしもユーリくんの、お、およっ、お嫁さんにして欲しいのっ」

「僕のお嫁さんに?」



言ったきりヒナちゃんは俯いてもじもじしている。

ぴくぴく頭の花が揺れてすごくかわいい。

優しく頭を撫でながら、きゅっと体を密着させた。



「僕の事、どんな人が聴いてる?」

「う、うん、ナギ姉ぇから。優しくて暖かくて、た、太陽みたいな人だって」

「あー、うん、ありがとう。そうじゃなくて、僕お嫁さんいっぱいいるから、ヒナちゃんが望むような良い旦那さんにはなれないと思うよ?」

「だ、大丈夫っ、ぜ、全部聴いたからっ。それでも、ゆ、ユーリくんが好きなのっ!ぅ、ぁ……」



再度俯いてしまうヒナちゃん。

自分で言った台詞が恥ずかしいらしく、あぅあぅしてる。

そんなかわいい姿にニヤニヤしながら僕は思考を巡らせていた。

ヒナちゃんの告白をどう受け入れるか。

受け入れるのは確定。

だってヒナちゃんかわいいし優しいし一生懸命で応援したくなるしこんな僕を好きって言ってくれるし。

ただ、まだ会うのも2回目。

ナギさんみたく一週間もしないで告白しちゃった例も有るけど、ヒナちゃんの事をもっと知って僕から改めて告白したい。

初々しいヒナちゃんに思考を引っ張られているみたいだ。

クスリと笑いを滲ませて、僕は口を開く。



「ねぇ、ヒナちゃん」

「は、はひっ!」

「僕達はまだお互いの事をあんまり知らないから、すぐに結婚しちゃうのは勿体無いと思うんだ」

「も、勿体無い、ですか?」

「うん。ヒナちゃん、良かったら恋人から始めてみない?お嫁さんに迎える時は、僕の方から告白するよ」

「ふぁ、え、えっと?」



恥ずかしさやらなんやらでちょっと混乱してるヒナちゃん。

僕の腕の中にいるかわいい女の子の顔を、くいっと持ち上げた。

つぶらな瞳をじっと見つめる。



「ヒナちゃん、僕の彼女になって下さい」

「……ひぁ」

「え、ひ、ヒナちゃん!?」



諸々が脳内でオーバーヒートしたらしく、頭から湯気を立てて気を失うヒナちゃん。

後ろへ倒れ込む体を慌てて抱きかかえると、すごい濃い香りが鼻を刺激した。

頭の花が満開になり、濃密な匂いを撒き散らしている。

余りの匂いの強さに視界が真っ暗になり、ヒナちゃんを抱きかかえたままソファーに倒れた。

匂いで失神するというレアな体験をしつつ、僕は意識を手放した。





2人仲良く気絶して、気が付いたらヒナちゃんの抱き枕にされていた。

目が合うとすぐにそっぽを向くけど、チラチラこっちを見てくる。

腕を回してむぎゅっと捕まえる。

すっかり服にヒナちゃんの匂いが染み着いちゃった。



「ヒナちゃん」

「な、なぁに?」

「今度デートしよっか」

「でえと?」

「逢い引き」

「……ぅええぇっ!?わ、わたしと、あ、あぃっ、逢い引きって、え、えぇっ!?」

「ヒナちゃんの仕事が片付いて一段落したら、僕の家に招待するよ。広くてぽかぽかの庭があるから、一緒に日向ぼっこしようよ」



ヒナちゃんはしばらく口をぱくぱくさせた後、恐る恐るといった顔で聞いてきた。



「わ、わたしで、良いの……?」

「ヒナちゃんが良いの」

「はぅ……どうしよう、ユーリくん、ドキドキが止まらないよぉ……」



ドキドキが振り切れたのか真っ直ぐ僕を見上げてくる。

頭の花はずっとキラキラ満開のままだ。

匂いも相当強いけど、さっきみたいに気絶する程じゃない。

多分麻痺してるよね、僕の鼻。

その後日が暮れるまでヒナちゃんとらぶらぶちゅっちゅしてたら、報告書を提出に来たハーピーさんにバッチリ見られた。

というかすぐに濃密な匂いに中てられて倒れちゃったけど。

また会いに来るね、とキスを交わして家に帰る。

出迎えてくれた美由里とナギさんが鼻を摘み、シーナとエアリィさんには消臭剤を掛けられ、ミナには「めっ」てされた。

よっぽど匂いがキツかったらしい。

晩ご飯の前にお風呂に入れられ、全身をみんなに洗われてから食卓へ。

ヒナちゃんとにゃんにゃんしてたら晩ご飯抜きになっていたのは想像に難くない。


更新、遅くなりすいませんでした。

クリスマスはドムキャノンで拠点壊してました。

すぐにビービー鳴らす癖は治ってません。



クリスマス一緒に過ごすならミナ一択。


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