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恩人はエルフでした。

僕がこの世界に来てから3日。

その間にシーナとミナからこの世界の知識や常識、それから僕が現れた時の事を教えてもらった。



まずは今僕が居るこの場所について。

ここは《西の大陸》って大陸の南西部に在る《リンディア王国》って国の更に南西部、森林地帯の入り口に在る《タマタ村》っていう小さな村。

村人達は主に農業や放牧、狩りなんかで生計を立てている。

村にある一番大きな建物がこの教会で、診療所や集会所みたいな役割も持っているらしい。

つい最近神父さんが亡くなって、代わりにシーナが村人達に支えられながら教会の仕事をこなしているみたい。

それと週に一度、行商人の一行がやってきて、村で穫れた野菜や動物の皮と、街で売っている日用品や食材なんかを売り買いしてる。

行商人の馬車やシーナの話を聞く限り、この世界の文化レベルはまだ低い。

産業革命以前のまま停滞しているみたいだ。

その理由は魔法が有る所為だと思う。

多分だけど、魔法の技術を発展させようとすると、科学の技術は成長していかないのだろう。



――魔法かぁ。やっぱりまだ現実感が無いなぁ。



聞いて驚いたのは、この世界の人は大なり小なり皆魔力を持っているという事。

その魔力が多い人は、魔導師になる為に国が運営する学校へ行く。

優秀な人材を集める為に入学金や生活費は国持ちらしい。シーナも学校に入っていたのか聞くと「私みたいに魔力が少ない人は入れませんよ」と笑って言われた。

僕の傷を治したくらいだから、きっと大魔導師なんじゃないかって思った、と伝えたらちょっと照れてた。

詳しく聞くと、シーナの杖に秘密が有った。

あの杖は神父さんが使っていたもので、大怪我でも治療出来る《ライブ》の魔法が込められたものだったんだ。

魔法を使うにはそれぞれの魔法が込められた杖や魔導書が必要で、治癒系の魔法が込められた杖は比較的高価な物らしい。

そんな貴重な物を僕に使って良かったのか、って聞いたらシーナは困ったように笑いながら答えた。



「ミナの命の恩人を放っては置けませんよ」



そこから、話は僕が現れた時の事に飛んだ。

事の始まりは3日前の朝。

ミナが1人で薬草を取りに近くの森へ入っていった。

この時期には珍しく大ぶりの薬草がいっぱい生えてて、取るのに夢中になる余り普段は立ち入らない森の奥へ進んでしまった。

昼近くになり、さぁ帰ろうかと歩き出した所で《荒熊》に遭遇してしまった。

荒熊は文字通り熊なのだが、気性が荒く鋭い爪で獲物を切り刻んでから食べるという、残忍極まりない習性があるらしい。

恐怖で動けなくなったミナに荒熊が近付き、腕を振りかぶる。

ぎゅっと目を瞑るが、痛みの代わりにやってきたのは優しく包み込むような感触。

目を開けると、僕がミナを抱きかかえるようにして、荒熊の攻撃を防いでいたらしい。

荒熊は駆け付けた狩人に退治され、意識の無い僕はそのまま教会へ運び込まれた、という訳。自分でも知らない間に、僕は村のちょっとした英雄になってた。

ミナは命を助けてくれた――結果的にそうなってた――僕に好意を持ったようで、甲斐甲斐しく身の回りの世話を焼いてくれた。

まぁ、荒熊に襲われた時の恐怖が、そのまま僕へのドキドキにすり替わったんだろうなぁ、って思う。

吊り橋効果だっけ?

そんな訳でミナに介護されて、やっとベッドから出ても大丈夫とシーナに言われたのが今朝。

なんだかんだですっかり鈍ってしまった体に喝を入れようと、教会の庭で軽くストレッチを始めた所で現在に至る。





朝の日差しが目に滲みるなぁ、とぼやきながら両腕を上に伸ばす。

ボキボキと療養生活で凝り固まった肩や背骨が音を立てた。

その音に混じって、背後から草を踏む音が聞こえる。



「いやはや、凄い音だね。おはよう、ユーリ君。もう起き上がっても平気なのかい?」



掛けられた声は、女性にしては低めだけど、つい耳を傾けたくなるような綺麗な声。

僕は振り返って声の主に笑顔を向けた。



「おはようございます、エアリィさん。もう怪我は完治したんですけど、流石に体が鈍っちゃいまして」



目の前に立つ女性はエアリィさん。

荒熊を退治し、僕を教会まで運んでくれた恩人の狩人さんだ。

身長は僕と同じ160cmくらいで、すっごい美人なオトナの女性。

切れ長の緑色の目と薄い金の長髪がとてもチャーミングだ。

何より目を引くのは、ピコピコと揺れる長い耳。

そう、エアリィさんはエルフなんだ!

いやぁ、まさか本物のエルフを見られるとは思ってなかったから、最初にエアリィさんを見た時は衝撃だったね。思わず「その耳触っても良いですか!?」って聞いちゃったし。

あの時は顔を赤くしたエアリィさんに断られちゃったけどね。



「元気なのは良いけど、余り無理はしないようにね。あれだけの怪我をした後というのは、存外動けないものだから」

「あはは、解ってますよ。今日は精々散歩くらいにしておくつもりでしたから」

「それじゃあ散歩が終わったら、私の家に寄ってくれ。何も無いがお茶くらいならだすよ」



そう言って微笑むエアリィさん。

その姿は近所の優しくて美人なお姉さんって感じだ。

今日も森へ入るのだろう、ゲームとかで狩人やアーチャーが着てそうな――グリンサーコート?を纏い、背中には木で出来た弓と矢筒を背負っている。

ただ、僕の視線が向かうのはコートの盛り上がった部分。

エアリィさんはスレンダーな体型をしてて全体的には華奢なんだけど、胸元はしっかり女性らしさをアピールしてる。

――あれは間違い無くCはある!

と、僕の視線を感じ取ったのかエアリィさんは胸を隠すように腕を抱き、身を捩りながら頬を赤く染めた。



「私も元気なのは良いと言ったが……あんまり見られると恥ずかしいものだよ?」



僕の理性はダメージを受けた!

いや、エアリィさん、それ反則です。かわいすぎです。

雰囲気はオトナの女性なのに、こういったちょっとした仕草が、どことなく子供っぽくてかわいい。

屈託無く笑った時なんか、僕と同い年――14、5歳の女の子にしか見えない。

前にお見舞いに来てくれた時のワンピース姿は永久保存版だった。

あ、思い出したら鼻血出そう。

反射的に鼻へ手を伸ばす。勿論鼻血は出ていない。



「……ふふっ、まぁそれだけ元気なら心配はいらないか」



僕の動きが面白かったのか、エアリィさんが笑みを零す。

思わずぼーっと見ていると、



「ん、どうしたんだい?」

「笑ったエアリィさんが素敵だったので見惚れてました」



……ハッ!?僕は今何を口走ったんだ!?

上がりっぱなしのテンションに任せてとんでもない事を言ったような気がする。

見ればエアリィさんは顔を真っ赤にして俯き、ぷるぷると肩を震わせていた。

――うっわぁ、エアリィさんマジ切れ状態?一体何を喋ったんだ僕!?

軽くパニックになっている僕をキッと見据えて、エアリィさんは腰に手を当て怒るように言った。



「そっ、そういう事は余り軽々しく言わないでくれないか?」

「は、はいっ!もう言いません!」

「いや、たまにというか、言うならもっと雰囲気の有る所で……」



最後の方は声が小さくなって聞こえなかったけど、取り敢えずエアリィさんが怒ってるのだけは解った。

もうテンションに任せて喋るのは止めよう、うん。



「それじゃあ、私はそろそろ行くよ」

「はい、あ、エアリィさん」



うん?と軽く首を傾げて僕を見る。やっぱりかわいいなぁ。

恩人の無事と狩りの成功を願って、僕は自分に出来る100%の笑顔で言った。



「行ってらっしゃい」

「――あぁ、行ってきます」



僕の言葉にきょとんとしたエアリィさんだけど、花が咲いたような素敵な笑顔を返してくれた。





エアリィさんを見送ってから、僕は一通りの軽い運動を始めた。

目測50mダッシュや腕立て伏せ、スクワットなんかは少しキツかった。

筋トレって1日サボっただけでキツくなるけど、3日も寝転がっていたらここまでキツくなるのか。

額に汗を掻きながら、大きく深呼吸する。

吹き抜ける風が気持ちいい。

一息吐いて、僕は庭に生えている大きな木の根元に腰を下ろした。

右手を伸ばし、隣に置いてある麻袋を掴む。



「はてさて、一体何が入っているやら」



実はこの袋、僕が肩に引っ掛けていた物らしい。

少なくとも僕はこの袋を見たのは今朝が初めてだ。そう言えば、とシーナが僕の替えの服を調達してきてくれた際に、思い出して持ってきた物だ。

見た目の割には随分と軽く感じるので、あんまり中身は入っていないんじゃないかと思う。

さぁ、鬼が出るか蛇が出るか。

ちょっぴりドキドキしながら麻袋に手を突っ込んだ瞬間、



「ユーリっ♪」

「わひゃあっ!?」



突然掛けられた声と背中にぶつかる感覚に、妙ちくりんな悲鳴を上げてしまう。

そのまま僕の肩に手を回してきゅっと抱き付いてくる。むむっ、この甘い香りは――



「ミナ、脅かさないでよ」

「にへへ、ゴメンね」



ていっ、とミナの体を持ち上げて僕の膝の上に乗せる。

背面座……げふんげふん。

頭をくしくしと撫でると、ミナは嬉しそうに目を細める。

と、僕の左手が入っている麻袋に目が行ったようだ。



「気になる?」

「うん、ユーリが何を持ってきたか点検しようよ」

「じゃあ一緒に見てみようか」



左手を突っ込んだまま袋ごと持ち上げ、ミナの前に置く。

袋の口を開け、中の物を取り出す。



「これは……折り畳み傘?」



取り敢えず足元に置いて他の物を取り出す。

次に出て来たのはなんとみかんの缶詰め。

更に手を突っ込むと栓抜きの付いた缶切りが見付かった。

その後も出るわ出るわ、折り畳み傘3つ、缶切り1つ、みかんの缶詰め5個、白桃の缶詰め3個、釣り糸50mが4つ、ガムテープ2つ、お土産の木刀1振り、2L入る水筒が2つ、招き猫の貯金箱が1つ、手動発電式の懐中電灯が2つ、露天商で売ってそうなアクセサリーが幾つか、他にも大量に出て来た。

最初はミナも物珍しい品に多様な反応を見せていたけど、流石にこの量を前に黙り込んでしまった。

僕も疲れやら呆れやらで、この四次元ポケットみたいな麻袋に手を突っ込むのを止めた。

多分、まだ何か入ってる。だって袋を振ったら中でガサゴソいってるもん。



「ふわぁ……すごいね、これ」

「取り敢えず手分けして倉庫に持って行こっか」



目的の倉庫は教会の隣に建っている。

ちょっと寂れた木造2階建てで、1階は壊れた家具なんかを置いてある所謂粗大ゴミ置き場。2階が余り使わない雑貨なんかを保管する場所。

たまに掃除しているのか、埃が積もっていない階段を2人で登っていく。

大半のガラクタを整理して倉庫に納め、やっと片付いたのは昼近くだった。

ふぅ、と一息吐いているとミナが一点を見続けているのに気付いた。

その視線を辿ってみると、無造作に置かれたアクセサリーの山が有った。

――やっぱり女の子だなぁ。

なんとなく微笑ましく思い、僕は右手を麻袋に突っ込んだ。

目的の物を思い浮かべて右手を引き抜くと、想像してたのよりちょっぴりオシャレな物が指の間に挟まれていた。

手のひらに隠しながら、僕はミナに声を掛ける。



「ねぇミナ、ちょっとこっち向いて」

「え、なぁに?」

「いいからいいから。じゃあ目を瞑って左手を前に出して」



要領を得ない僕の言葉に首を傾げながらも、ミナは要求通りに動いてくれた。

ちっちゃなミナの手を両手で優しく包み込み、そっと、それを挿し込む。



「ん。ミナ、もう目を開けていいよ」



少しの不安と沢山の期待が混じった表情で目を開くミナ。

そして左手の中指に光るそれを見て、顔を輝かせた。



「わぁ……!」



ミナの左手に光るのは銀の指輪。

蔦が絡まり合う装飾が施されていて、控え目ながらも気品のあるデザインだ。

ちなみに何故かサイズはぴったりだった。



「ありがとう、ユーリ♪でも、こんなに立派なの私がもらっていいの?」

「うん、ミナにはいろいろお世話になってるからね。いつもの感謝って事で」

「……にへへ、じゃあ私からユーリにお返ししないとね」



そう言ってミナは、屈んだままの僕に照れたような笑顔を見せた。

お返しなんていいのに、って言おうとした僕の口が塞がれる。

頭の後ろと背中に腕を回して僕が逃げられないようホールドしながら、ミナは小鳥が餌を啄むように僕に唇を押し付けた。



「んっ、んちゅ、ちゅっ、はむぅ、ちゅ、ユーリ、んっ、しゅきぃ、ちゅっ」



動けない僕を貪るように情熱的なキスをするミナ。

小さな舌が僕の口内を弄り、唾液を舐めとっていく。

んくんく、と白い喉を鳴らして僕の唾液を飲み込む姿に理性が焼き切れそうになる。

僕の唾液を飲み干したミナが一息吐くと、今度はミナの唾液が僕に流れ込んできた。

鼻へ抜ける甘い香りに脳を揺さぶられた。

体が熱い。

今僕にキスをしている、この幼女が欲しい。

そんな衝動に突き動かされ、僕は抱きかかえるように腕を回す。

急に動かれ驚いたのか、ミナの体が硬直する。

僕はミナが動かないのをいい事に、舌で彼女の口内を蹂躙する。

夢中で舌を伸ばし唾液を舐めとっていると、舌先がミナの舌に触れる。



「んむっ、ふむぅっ!?んっ、んくっ、んふぅぅっ♪」



ミナの舌に触れる度、奥からじゅぷっと蜜が溢れる。

溜まった唾液ごと柔らかく小さな舌を吸ってみる。

幼い体がびくんびくんと軽く跳ね、ミナは力無く僕に凭れ掛かった。

息が苦しくなって口を離す。

僕とミナを繋ぐ銀色の糸が服に落ち、妖しく輝いていた。



「んぁぁ……っ♪ユーリぃ、しゅきぃ……♪」



僕の腕の中でとろけた笑みを浮かべるミナ。

ミナの胸の小さな突起が、服を押し上げていた。

それを摘もうと僕は手を伸ばし――



『ガラーン……!ガラーン……!』



突如鳴り響いた鐘の音に、僕もミナもびくぅっ!と身を震わせる。

一瞬、誰か来たのかと思ったけどすぐに思い当たる。

あれは正午の鐘の音だ。

来客用の鐘は建物の中には良く響くけど、教会の隣に併設されているこの倉庫までは音が届かない。

それに若干音色も違う。



「……あは」



びっくりした反動か、どちらともなく笑い声が漏れた。

もうさっきのピンク色な雰囲気は無い。

ちょっと惜しかったかな?と思いながら、僕はミナに右手を差し出した。



「それじゃあ、お昼ご飯を食べに戻ろうか」

「うん、戻ろう♪」



純真な笑顔で僕を見上げたミナ。

手を繋いで倉庫を後にする。

と、教会の入り口まで来た所でミナは手を離した。

数歩先に行くとくるっと振り返り、僕にだけ聞こえる声で言った。



「……また、しようね♪」



頬を赤く染めて教会の中へ駆けて行く。

残された僕は顔を真っ赤にしながら、ゆったりとその後を追った。





だから待つんだ息子よ。君の出番はまだまだ先なんだから。

いや、まぁ、ミナとキスしてた時は、僕のズボンに五重塔が建ってたけどさ。

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