表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/34

ハーレムルートとトラウマ喚起。

ぱからっぱからっ。

そんな軽快なリズムを刻んで馬車は進む。

意外と早く荷造りが終わった僕達は、山賊達を捕縛して刑務所へ連れて行く騎士団の隊長さんに頼んで、一緒に首都リレジーまで同乗させてもらった。

荷造り優先で出て来た結果、ミナにしたプロポーズの詳細や向こうでの出来事を逃げ場の無い馬車の中でする事になった。

僕の迂闊過ぎる行動や髪飾りの下りまで話す事になり、途中シーナに説教されながらも、みんな興味津々に聞いてくれた。

ただ、ティス姉の事は細部まで話さなかった。いや、話せなかった。

思い出しただけでも悔しくて、悲しくて。

それでも僕の拙い話で察してくれたのか、みんな温かい言葉をくれた。

ちょっぴりしんみりしちゃった空気を吹き飛ばそうと、美由里が話題を振ってくれたんだけど……妹よ、そのチョイスはどうだろう。



「そ、そういえばお兄ちゃん、私には指輪くれないの?」



その言葉にシーナとエアリィさんの目が色めき立……いや、殺気立つ。

余りの眼力にぞわりと鳥肌が。

本気で怖いです。

最初にミナに指輪を渡した後でシーナに聞かれた時は「麻袋からいっぱい出て来たんだけど、ミナが欲しそうにしてたから1つあげたんだ。小さくてもやっぱり女の子だね」って答えたせいか、余り深く追及してこなかった。

そしてその時の行為の意味を知ったのはついさっき。



――いや、地球じゃ左手の薬指だったのに何故この世界では中指!?



男性が女性に指輪を贈り、左手の中指にはめる事は「貴方は私のもの」って意味を持つんだ。

言わば言葉にしないプロポーズ。

そして女性の返事がイエスなら唇にキスを、ノーなら左手に右手を重ねて相手に見えないように指輪を抜き取る。

あの時は……なかなかに激しいキスをしたような気がする。

唾液交換もしたし。

舌、柔らかかったなぁ、と無意識の内に視線を送るとミナは照れたように小さく微笑んだ。

よし、後で絶対襲う。

かわいすぎて我慢出来ません!

と、どんどん我慢の出来ない人間になっていく僕へ更に強く視線が突き刺さった。

あぁっ、エアリィさんまで僕を見る目が濁ってきてるよぉっ!?



「私にも勿論くれるよねユーリ君?あぁ、私の返事は聞かなくても解るね、虜になるくらい激しい口付けをしてあげよう」

「私にも勿論くれますよねユーリさん?なにしろ指輪はたくさん余っているのですから」



獲物を見つめる蛇みたいな視線を僕に向ける2人。

って、いつシーナの攻略フラグ立ったの!?

そんなフラグ立つような行動したっけ?

取り敢えず出会ってからのそれっぽい行動を思い出してみた。



――もやもやもやっと回想開始。



『んゃぁ、ユーリしゃん、んぁっ、しょれ、らめれしゅぅ、ふぁぁっ♪』



――やもやもやもっと回想終了。



あれかぁぁぁぁっ!?

い、いや落ち着け僕。

幾ら何でもあのシーナがそんな事で落ちる訳が無いじゃないか。



「あの時から自分で慰めてもイケないんですよ……ふふふ、責任取って下さいね?」



堕ちてたぁぁぁ!?

落とす前に堕としていたとは、流石に思わなかった。

っていうか女の子がそんなえっちな事言っちゃいけません!

修道女でしょ!?

焦りが焦りを呼ぶパニック状態に陥っていると、すかさずエアリィさんが追撃する。



「私はいつでもユーリ君を受け入れるよ。……ユーリ君、君の子を孕んだぽっこりお腹のエルフを更に犯してみたくはないかい?」



アウトォォォォ!?

その発言はアウトですエアリィさん!

風紀的にも常識的にも理性的にもアウトですよ!

っていうかふくよかな胸の谷間をアピールしちゃらめぇ!?

息子よ、ステンバーイステンバーイ。

多分ゴーのかけ声は無いけど。

もう後が無くなった僕の理性に、美由里がトドメを刺した。



「ねぇ、お兄ちゃん。私達今は血の繋がり無いんだよ。……妹と、合法な近親相姦、しよ?」

「スリープ!」



ぷちんと理性の糸が切れる瞬間、僕は自分に睡眠魔法を掛けた。

なんでかって?

みんなが僕に好意を持ってくれてるのは解ったけど、やっぱり初めては2人っきりでもらってあげたいじゃない。

あ、これ言うの2度目だ。

そんな事を考えながら、僕は夢の世界へ旅立って行った。

淫夢を見なかったのは奇跡に近い。





強制睡眠から目覚めた僕を、その後も色んなイベントというか事件が待ち構えていた。

寝ぼけて膝枕してくれてたナギさんを抱き締めたり、起きたらミナが美由里とシーナとエアリィさんの3人を正座させて説教してたり、夕飯の時にあ~ん合戦が始まったり、騎士団の若い人達から「爆発しろ」って血涙流しながら言われたり、夜中トイレに起きた帰りにミナが散歩しようと誘ってきたり、そのまま近くの林の中でミナと4回戦くらい……げふんげふん。

翌朝はミナ以外の面々に指輪贈呈と防護付呪を行った。



――シーナには風に揺られる天使の羽が彫られた白金の指輪を。



――エアリィさんには葉を繁らせた大樹が彫られた金の指輪を。



――美由里には一面に咲き誇る桜が彫られた碧水晶の指輪を。



――ナギさんには夜空を暖かな光で照らす月が彫られた翡翠の指輪を。



それぞれ、僕がみんなに抱くイメージを元に四次元麻袋から取り出したものだ。

そしてミナの指輪にしたのと同じ付呪を行っていく。

ナギさんは僕に好意を持ってくれてるか解らないから、安全の為に身に付けて置いて欲しいと説明した。

勿論特別な意味は無いから手渡しだ。

3人は指にはめて欲しいって言ってたけど、そうしたらナギさんだけ仲間外れみたいになっちゃうからダメって言ったら渋々納得してくれた。

先にナギさんに手渡して置いて良かった。

ダシに使っちゃってゴメンなさいって後で謝りに行ったら、笑顔で気にしないでって言ってくれた。

あぁ、ナギさんの心遣いが沁み入るなぁ。

優しく母性愛に溢れるナギさんにちょっぴりデレデレしていたら、他のみんながむくれて僕を見ていた。

そして僕を三白眼で見つめるシーナが一言。



「そんなに女の子が好きなら、ユーリさんを女の子にしてあげますよ」



恐ろしく低い声で告げられた内容に、僕はトラウマを刺激された。

それは小学校の修学旅行での出来事。

テンションの上がりまくった小学生が沸いた脳で考え出したイベントの1つが女装大会。

クラスの女子も何故かノリノリでメイク道具やウィッグを貸し出し、クラスの男子全員が女装する事になった。

童顔でやや女の子よりな顔だった僕は、数人の女子に取り囲まれてあっという間に女装させられた。

まぁテンションも上がってたし僕自身ノリノリだったけど、クラスの男子の前に出た時に恐怖を覚えた。

それまでのお祭り騒ぎが一変、男子のギラついた視線が僕を捉えた。

僕のメイクを担当したのが、プロのメイクさんを親に持つ女の子だったって事も要因の1つなんだろうけど、あの瞬間から僕は男に苦手意識を持つようになったんだ。

それから卒業まで、一部の友人を除いてクラスの男子には近付けなかったし。

今では苦手意識も薄れたけど、女装というワードに恐怖心が湧き起こるようになってしまった。

男らしさというものに並々ならぬ執着を抱いたのもこの頃だ。

そして今、シーナの言葉にトラウマを刺激された僕は軽い錯乱状態に陥った。



「いやだ、女装だけはいやだぁぁっ!」



自分で言った女装というワードに自分で恐れる悪循環。

いつになく弱気で逃げ惑う姿がツボに入ったのか、悦に入った表情で僕を追い詰めるシーナ。



「ふっふっふ、かわいいですねユーリさん。でも私が更にかわいくしてあげますよ」

「や、やぁぁっ、やだぁぁぁっ!」

「あぁっ、その絶望に染まった悲鳴、ゾクゾクきちゃいます。もっと鳴かせてあげましょう、エアリィさんそっち抑えて下さい」

「あ、あぁ。すまないユーリ君、だが……なんだろう、確かにゾクゾクくるね」

「やぁ、やぁぁっ、やだよぉ、こないでっ、いやぁぁぁぁっ!」



そして数分後。

純潔を奪われた女の子みたいにシクシク泣く僕を、やけに満足そうにツヤツヤした顔で眺めるシーナの姿が。

ますます解らない、シーナの性癖が。

エアリィさんは少々罪悪感があるのか、ばつの悪そうな顔で頬をポリポリ掻いていた。

ミナと美由里はナギさんが目隠ししてくれていたおかげで、僕の痴態を見ていない。

ナギさんはちょっぴり顔を赤らめていた。

そして僕はというと、髪に星形の髪留めを着けられた上に、耳の上辺りで左右の髪の毛を結ばれぴょこんと触角みたいにされていた。

鏡を見せられた時、自分でもかわいいと思ってしまったのが悔しい。

更に服も脱がされ、無理矢理着替えさせられた。

勝手知ったるなんとやら、シーナが四次元麻袋に僕の手を突っ込み取り出したのは……何故か巫女服だった。

しかも袴は膝上でカットされててハーフパンツみたいになってたし。

流石に下着は死守したおかげでボクサーパンツのままだったけど、シーナとエアリィさんには着せ替え人形のように扱われた。

そうして誕生したのが、巫女服を着た美少女ユーリちゃんだ。

ここまでされたら、もうどうでもいい。

あぁそうさ、僕は今美少女ですよ!惚れたら火傷するぜっ!

半ばヤケクソになって、僕はこの状況を受け入れる事にした。

まぁ、そんなイベントをこなしつつ僕達は馬車に揺られる。

そして気付けば首都は目前に迫っていた。





首都リレジー。

リンディア王国の中心地なのに何故王都じゃないの?って思ったお嬢さん、貴女の疑問にお答えしましょう。

え、男性?膝でも抱えて黙ってて下さい。

ここリンディア王国では民の上に君臨しているのは王族だけど、政を担当するのは各町村を取り纏める11人の首相達が国民の意見や要望を纏めつつ、多数決で政を運営するって言う形態で国が成り立っているんだ。

解りやすく言うと、王が治める都が王都、政府が治める都が首都って感じだ。

ここら辺の認識は、地球の住人だった僕や美由里に若干の違和感を与えている。

まぁ文化どころか世界まで違うんだから、こうして言葉の使い方に差違が有るのは当然なのかもしれない。

それは置いといて、リレジーはかなりの大都市と言っていい。

大きな湖の真ん中にある島の上……というよりは、低地に流れる川で囲まれた平地の上に大都市が建設されている。

その地形の特性上守備に適していて、昔に起きた数多くの戦争の中でリレジーが陥落した事は一度も無い。

攻め込むには西に架けられた大橋を渡るか湖を船で渡るしか無い。

しかし街の周囲は高い城壁で囲まれ、大橋は特殊な仕掛けが施されていて中程から跳ね橋のように吊り上げて侵入を阻む事が出来る。

まぁ今では大きな戦争も無いから観光名所になってるけどね。

入り口で降ろしてもらい、騎士団の人達にお礼を言う。

僕達の会話――というか僕の悲鳴が聞こえてなかった数人は僕の姿を見て目を丸くしてた。

1人が「君は女の子だったのか?」って聞いてきたから、脛にキックしてやった。

僕は男だいっ。

捕縛した山賊達の手続きを検問で行うみたいだから、取り敢えずここでお別れ。

……別れ際に隊長さんがぽんと肩に手を置いて慰めてくれた。

思わず泣きそうになった。

気を取り直して、僕は首都へ入る為に検問の列に並んだ。

面倒な検問も僕のギルドカードで難なくパスして、いよいよ首都に乗り込む。

ちょっと緊張してきたなぁ。

大きな門を通され、遂に僕は大陸最大の街に足を踏み入れた。



「わぁ……!」



思わず言葉を失った。

華やかな通りには人々の活気が溢れ、数多くの露天や商店があり、正面には王城が高くそびえ立っている。

賑やかな街並みの向こうでは、大道芸人が噴水をバックに華麗な芸を披露している。

一歩横道に逸れれば、玄人受けしそうな年季の入った鍛冶屋やちょっぴり大人な雰囲気の酒場がある。

まさにファンタジーまさに異世界な街の光景に、僕はすっかり魅了されていた。



「ユーリ君、感動している所悪いが……早い所移動した方が良くないかい?」



エアリィさんに言われて意識を取り戻し、慌てて周囲を確認する。

知らない間に随分と注目を集めていた。

男1人に美女2人美少女1人美幼女2人というなんとも奇妙な組み合わせが目立たないハズが無い。

幾人かの男達は早速ナンパしようと近付いて来てるし。

その中から如何にも軽薄そうな2人組が僕の目の前にやってきた。



「やっほ、お嬢ちゃん達。この街は初めて?良かったら俺達が案内するよ」

「かわいい子ばかりじゃないか、女の子6人で旅行かい?」



マテ、今なんて言った?

女の子6人?

ぴしっと固まった僕を見て美由里だけが慌て出す。

他のみんなはそれに気付かず困ったような顔をしている。

すっかり忘れてた……いや、無意識の内に無かった事にしていた事実を突き付けられて、僕は恥ずかしいやら腹立たしいやらで頭に血が上った。

そこへ軽薄そうな2人組の内の、ツンツン頭の方が僕の肩に手を置いた。



「君かわいいね、珍しい服だけど似合ってるよ。控え目な胸がまたいいね」



ぴしり。

そんな音が脳内に響く。

もう片方の肩にオールバックの優男が手を乗せる。



「せっかくだしお茶でも行こうよ。なんなら2人っきりになれる場所まで連れて行ってあげようか?大丈夫、俺結構上手いから」



ぶちっ。

どこか遠くでそんな音が聞こえた。

女の子にかわいいと評されるのはちょっぴりへこむくらいだけど、男にかわいいと言われるのは勘弁ならん。

しかも僕を性的な対象に見たなコイツら。

よろしい、ならば殲滅だ。

無言で顔を上げ、2人に微笑みかける。

それを肯定と受け取った2人がいやらしい笑みを浮かべて、



『ズダァァァァン!』



轟音と共に地面にめり込んだ。

一瞬で街から喧騒が消え、辺りに静寂が訪れる。

今使ったのは魔法でも何でもない。

集めた魔力をそのまま固めて2人の頭上から思いっきり叩き付けただけだ。

ぽっかりと広がるクレーターの中心に寝転ぶ気絶した男達の頭を踵で踏みつけると、なにやら気分が良い。

ガシガシと男達を足蹴にする僕の手を、美由里とミナが掴み全力で走り出した。



「に、逃げるよみんな!」



美由里の声に弾かれるようにして、全員で入り口広場を後にする。

背後からどよめきが湧き起こるのを、僕は暗い笑みを浮かべながら聞いていた。





「「めっ」」

「ゴメンなさいでした」



平静を取り戻した僕は幼女2人に怒られて絶賛土下座中。

手近な宿に転がり込んで着替えを終えてほとぼりが冷めるのを待っている間、僕は先程の暴走を咎められていた。

シーナとエアリィさんは隣の部屋でナギさんにお説教されている。

声を荒げず淡々と何がいけなかったのか諭すように語るナギさんのお説教はかなりキツそうだ。



「ユーリ、聞いてるの?」

「はい、聞いてます」

「ダメだよお兄ちゃん、いくら何でも一般人に魔法使ったら」

「はい、反省してます」

「あんまり騒ぎになったら困るのはユーリなんだよ?これからこの街に住む予定なんだから」

「はい、重々承知しております」

「それにみんな怖がってたよ。お兄ちゃん、みんなに怖がられたらイヤでしょ?」

「はい、いやです」



幼女2人に正論で怒られるのもキツいです。

それも僕の為に苦言を呈してくれてるだけに心が痛い。

でも僕は男なんだ、女の子じゃないやい!

その言葉をぐっと飲み込んで、ひたすら2人に頭を下げ続ける。



「ユーリ、反省した?」

「はい、反省しました」

「お兄ちゃん、もうしない?」

「はい、もうしません」

「「じゃあ、許してあげる♪」」



そう言って僕を抱き締めてくれる美由里とミナ。

思わず抱き返すと幼女特有の甘い匂いが鼻をくすぐる。

くんかくんか。

ハッ、無意識の内に嗅いでしまった。

なんという幼女トラップ。

これを戦場に配置すれば4割の男は戦闘不能に陥るハズ!

残り6割はお姉さんのおっぱいで掌握可能かと思われます。

そんな事を考えていると、両頬に柔らかい感触が。

男なら誰しもが夢見る両頬同時キッスだ。

ちょっぴりほっぺを赤く染めて、2人はもじもじしながら言った。



「にへへ、ユーリのえっち♪」

「お兄ちゃんのヘンタイ♪」



辛抱たまらん。

2人を抱っこしながら、しばし幼女の匂いを堪能していた。

様子を見に来たシーナとエアリィさんにべしべし叩かれたのは言うまでもない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ