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霊魂が住まいし廃屋。

どうも、ついさっき7回戦を終えてお疲れモードなユーリです。

ちょっと早めのお昼ご飯を食べて宿屋で休憩してたけど、お盛んな年頃の男の子と愛らしいお嫁さんが一緒の部屋にいたらやる事は1つ。

猿か!ってお叱りはごもっともだけど、はっきり言ってミナ相手に我慢出来る方がおかしいと思う。

気だるい体を起こして、指先に魔力を集中させる。

生まれたのは縦に薄く広がった円環状の水膜、名付けてアクアリング。

これを通り抜ける事で全身の汚れやバイ菌なんかを濯ぐ事が出来るんだ。

2秒でおっけーな簡易お風呂みたいなものかな。

通り抜けさっぱりした所でミナを起こす。



「ほら、ミナ起きて。そろそろ準備するよ?起きないといたずらしちゃうよ」

「あはっ……♪んぁぁ……っ♪」



体を揺する度に小さく跳ねて、軽く絶頂を迎えるミナ。

……ちょっとやり過ぎたかな?

取り敢えずお姫様抱っこして「あんっ♪」アクアリングを潜り抜け「やらぁ、ゆーりのみるく、ながれちゃうぅ」綺麗になったミナをベッドの端に座らせ「ゆーりぃ、もっとしよぉ」ダメだ、このままじゃまた理性が無くなる。

指先に魔力を集めて沈静化の魔法をミナに掛ける。

悦びに囚われていた顔がちょっとずつ落ち着いていき、くりくりした瞳に理性の光が戻ってきた。



「……ほぇ?ユーリ?」

「おかえり、ミナ。色んな意味で。さ、そろそろ準備するよ」

「え、うん。あれ?」



多少記憶が混乱してるみたい。

無理矢理抑えつけられた感情の推移に思考が追い付いていない弊害かな?

沈静化魔法は要改良、っと。

オリジナル魔法はなかなか副作用が強いのが欠点だなぁ、と僕は1人ごちる。

昨夜、ミナの初めてをもらった後に痛みを抑える魔法を試しに使ってみたら、ミナがえろえろっ娘になった。

どこをどう間違ったのか、僕が使った魔法は痛みを抑えるのではなく、痛みを快楽に変換する魔法になってた。

快楽を倍増させる効果もあったみたいで、早くも4回戦目でミナが僕の上で腰を振り始める始末。

ま、まぁすごい気持ち良かったけどね。

試行錯誤の結果、僕のオリジナル魔法には幾つかの法則が見付かった。

まず、創作時に抱いたイメージに結果が大きく左右される事。

痛みを抑える魔法を使う時も、もっとミナを気持ち良くしてあげたいって思ったのが効果に反映されたみたい。

今の沈静化の影響も、急に感情が落ち着いたら何が起こったか解らなくなるだろうなぁ、ってチラッと思ったせいだ。

今のも充分厄介だけど、それ以上に厄介なのがもう1つの法則だ。

それは、最初に使った魔法の効果がある程度固定されてしまう事。

これはまぁ、仕方ないっちゃ仕方ない事だけどね。

新しい魔法を創ろうにも、最初に使った魔法を効果の基準にしちゃうから、どうしても微調整くらいしか出来ない。

だから、似たような効果の魔法を創りたい時は微調整に微調整を重ねて、こっそり効果を入れ換えるしかない。

微妙に使い勝手が悪い気もするけど、オリジナル魔法を創れるってだけで満足するべきかなぁ。



「ユーリ、準備出来たよ」



思考の世界に意識を飛ばしてる間にミナの準備が終わっていたみたいだ。

ミナが着ている服は午前中に2人で買ってきた、ワインレッドのシャツと色を合わせたフリルがあしらわれたスカート。

まるでお姫様みたいな気品とかわいさがミナの魅力を存分に引き出している。

ミナはスカートの裾を軽く持ち上げて、くるくると回り始めた。



「にへへ、似合う?」

「うん、すごくかわいい。このまま連れ去ってしまいたいくらいだよ」

「連れ去らなくても、私の体も心も、ユーリ専用だよ♪」



僕のツボを的確に突いてくるミナ。

またベッドに押し倒したくなるのをなんとか我慢して、右手を差し出す。



「行きましょうか、お姫様」

「どこまでもついて行きます、旦那様♪」



僕の手を取ったミナは向日葵みたいな笑顔を見せてくれた。





「お、きたきた。やっほ~い」

「お待たせ、ティス姉」



相変わらず食べ終わった皿でバベルを創造している褐色お姉さんの所へ歩いていく。

ホント、この細い体のどこに入ってるんだろう。

……おっぱいかな?



「おっ、ミナちゃんその服かわいくてオシャレ!」

「にへへ、ユーリが選んでくれたんだよ」

「へぇ~、ユーリ君もなかなかセンスいいじゃない」



喋りながらすごい勢いでお皿の上から料理を消していくティス姉。

あっという間にデザートまで平らげて、お皿を返却口まで持って行く。



「なんであれで太らないんだろう?」

「羨ましいなぁ……」

「お待たせっ、それじゃ出発……どしたの、2人共?」



疑問と羨望の視線を受けてちょっぴりたじろぐティス姉。

びくってした時に豊かな胸がぷるんって震えてた。

……うん、ミナの胸もあれくらいになるまで揉んで大きくしよう。

取り敢えず詳しい話を聴きながら、その豪邸を目指す事にした。



「今まで依頼受けた人はなんで失敗したの?いくらなんでも腕利きの冒険者なら原因くらい突き止められそうだけど」

「ん~と、罠にやられたって報告が1割、不死者にやられたって報告が3割、6割は音信不通で行方不明だね」

「不死者って……ゾンビ?」

「うんにゃ、スケルトンしか確認されてないよ」



その言葉に胸を撫で下ろす。

屍肉の臭い撒き散らされると集中力や思考力が低下してくからね。

視覚的にも辛いし。

内臓がはみ出たまま襲い来るゾンビ……うわっ、肝臓飛び出してるよ!キモッ!

うん、今のは僕が悪かった。

もう少しダジャレも勉強しないとな。

それにしてもスケルトンしかいないってのも不思議だよね。

普通アンデッドダンジョンならスケルトンだけじゃなくゾンビやゴーストもいるハズなのに。



「ティス姉、幽霊が出るって噂になる前の情報は無いの?」

「あぁ、幽霊が出るようになるちょっと前に先代の当主が行方不明になったんだってさ」

「行方不明?」

「詳しい事は解らないけど、ある日突然姿形が忽然と消えちゃったんだって。一部の人は冥界に連れ去られたんじゃないかって」

「冥界?なんでまた」

「晩年、黒魔術に手を出したって話が残ってるよ。それで魂諸共引きずり込まれたって言ってる人もいる」



内心、僕は舌を巻いた。

全体像は見えたけどさぁ、余計に気が進まないよこれは。

僕の予想だと、原因は十中八九先代の当主さんだ。

黒魔術を始める理由なんて学者でも無い限り、怨恨による仇討ちか不老不死だ。

多分先代は不老不死の秘術とか思って死霊転生でもするつもりなんだろう。

老衰か服毒自殺した後で霊体を予め用意した器に移して幽霊騒ぎを起こして、家族や使用人、様子を見に来た隣人やギルドから派遣された冒険者の血肉を手に入れてるんだ。

考えるだけでも吐き気がする。

胃から酸っぱい臭いが上がってきた。

と、繋いだ右手を引っ張られる。



「ユーリ、大丈夫?」

「うん、ちょっと気持ち悪くなっただけだから」

「無理しないでね?」



ミナの優しさが胸に染みる。

ただ、このままその邸宅へ向かっていいのだろうか。

少なくともミナは宿屋へ戻した方がいい気がする。

恐らく凄惨な結果が待っている事は間違いないだろうし、向けられる悪意だって半端じゃないハズだ。

そこまで考えて、ミナの指輪に幾つかエンチャントし忘れたのがあった事に気付いた。

慌ててミナに指輪を出してもらい、付呪を重ねていく。



「耐精神干渉、耐幻惑、耐変性……いっその事耐非物理干渉も重ねておこう。それに精神保護、肉体保護、自然治癒、能力維持……あ、そうそう、ディスペル無効も付けておこう。うん、こんなもんだ」

「わ、なんだかいっぱい」

「現時点で考えられる最高の防護付呪してみた」

「ありがと、ユーリ」



お礼にキスしてもらった。

たまりません。

思わず抱き締めて舌入れちゃった。

うん、美味しかった。



「それで、ミナは一旦戻ってもらおうと思うんだ」



僕の予想だけどって前置きして、さっきの想像を話してみる。

2人共すごく沈痛な面持ちだった。

自分の勝手で家族を殺すって事が可能性としてあるだけでも信じられないみたいだ。

ミナは僕を心配しながらも、宿屋で待つ事を了承してくれた。

念の為部屋まで送り届けてから、女将さんに了解を得て宿屋全体に結界を張っておく。

相手が本当に死霊術師ならこれぐらいの対策をして対等なくらいだ。

気を張って邸宅へと足を向ける。

道中、会話は少ない。

流石に幽霊屋敷へ出向くのにピクニック気分ではいられなかった。

北の居住地区の東側へ行くと、目標の邸宅が姿を見せる。

それと同時に空が暗くなり、霧のようなものが立ち込め始めた。

前に進む度に霧は纏わり付いてくる。

全身に鉛が積まれたような重さが襲い、息苦しさを感じる。



「ゆ、ユーリ君、やっぱり帰らない?」

「帰りたいけど、どうやら帰してはくれないみたいだよ」

「え、な、嘘っ!?」



いつの間にか僕の袖を掴んでいたティス姉に背後を示す。

今まで僕達が歩いてきた道は霧に呑まれて掻き消されていた。

幻惑の類だろう、恐らく真っ直ぐ後ろに歩いて行っても、あの邸宅の前に出る。

もう向こうは僕達に気付いたハズだ。

それなら、来たやつを片っ端から吹き飛ばすに限る。

後味は悪いけど、スケルトン相手なら成仏させるくらいの気持ちで戦える。

だから、僕は敢えて前衛を買って出た。



「ティス姉、戦闘は僕がやるよ。代わりに罠の解除や閉鎖された扉の開錠をお願いね」

「りょ、了解っ」

「さ、行こっか」



この時、戦闘への緊張と高揚からティス姉に防護付呪をし忘れた事が、最悪の結果を招く事になるのを僕はまだ知らなかった。





一歩一歩、辺りを警戒しながら進む。

まだ通りではあるけど、既に相手方のテリトリーに入ったって考えた方がいいだろう。

100m程進むと急に視界が開け、古めかしい門を構えた邸宅が姿を見せた。

豪邸と呼んで差し支えない程の大きさを誇る邸宅は、今やその輝きを失って久しい。

ここからは更に警戒しなくっちゃ。

ぐっと握った手に力を込める。

ティス姉は僕の左後ろから服の裾を掴んでついて来る。

普段なら癒される所だけど、今はそんな余裕は無い。

錆び付いた門は開かれているけど、なんとなく嫌な予感がする。



「待って、ユーリ君。門の前に糸が張ってある、罠だよ」



そう言ってティス姉は腰のポーチから小さなナイフを取り出して、門に張られた糸へ投げつける。

ザッ、と門の後ろに溜まっていた落ち葉を掻き分けて、斜めに切り揃えられた竹が門の中程で交差する。

気付かずに足を踏み入れていたら、首が飛んでいたハズだ。

全力で殺しに掛かってくる事実に思わず唾を飲み込む。



「ありがとう、ティス姉」

「ううん、罠なら任せて。その代わりしっかり守ってね、騎士様」

「はは、頑張るよ」



周囲を警戒しながら門を潜り抜ける。

どうやら他に罠は無いみたいだ。

地面にも特に変わった所は無い。



――変わった所が無い?



慌てて振り返って錆び付いた門に視線を巡らせると、違和感の正体が解った。

血が付いてない。

さっきの竹には切断面に赤黒い染みが付いていたのに、周りの土や外壁や門には一切血痕が残っていない。

相手が死霊術師なら飛び散った血を回収するから、門や土に血が付いていなくても不思議は無い。



――なら、なんで竹にだけ血が残ってるんだ?いや、あれは本当に竹なのか?



その考えに至った時、僕は反射的にティス姉を抱きかかえて前方に跳んだ。

一拍遅れて、僕達が立っていた場所に鈍い殴打音が響く。



「ひぃっ!?」



ティス姉が短く悲鳴を上げる。

視線の先では、1体のスケルトンがメイスを打ち下ろしていた。

僕は内心で舌打ちをしながら指先に魔力を込めた。



「ファイヤー!」



放たれた魔力が獄炎となってスケルトンを包み込む。

わずか2秒後には欠片も遺らずに消え失せた。

油断したなぁ、罠が発動したら効果を現す術式かぁ……大方、落ち葉の中に転がってた頭蓋骨の裏にでも彫ってあったんだろう。

もう少し意識を巡らせないといけない。

ホラー系のサウンドノベルをプレイするみたいな心境で捉えないと、こういった仕掛けは見破れない気がする。

そうでも考えないと向けられる殺気に精神が耐えられないから、って理由もあるけどね。



「ユーリ君……」

「あ、ゴメン。とっさに抱きかかえちゃったけど、痛くなかった?」

「う、うん、大丈夫。ありがとね」



横抱きにしていたティス姉を下ろす。

強く抱き締め過ぎちゃったかな、余裕無くてゴメンね。

取り敢えず、第一関門は突破だ。

ここからが本番だな、って気合いを入れ直して玄関を見据える。

僕達が手を触れずとも、古びた重厚な玄関の扉は耳障りに蝶番を軋ませて僕達を招き入れた。


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