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Dロード  作者: jUDo
12/12

契約者

 〜東側〜




「………排・除・完・了」


 ジョンの足下には―――、

 形を無くした肉塊と、多量の鱗、多量の血がばらばらに散乱していた。


「………」


 まるでゴミでも見るような目で散らばる()()()()()を見下ろす。


「………」


 それから視線を這わせて自分に付着した血を見る。


「………」


 足、膝、腰、手、肘、肩、そして、折れた剣。

 …興奮?…狂気?…喜び?

 違う。これは、「衝動」だ。


「クロノス・ジョンッッ!!」


 誰だ?こいつを呼ぶ奴は?


「ジョン!!」


 …上か…。


 視線を家の屋根に移す。と、男が一人、すぐ近くまで走ってきていた。

 男が屋根から飛び降りる。

 着地する際にしっかりと己の足にかかる衝撃を分散するように降り立つところを見ると、只者ではないことが分かる。

 男がゆっくりと顔を上げてこちらを見る。


「ジョン………ではないな。この感じ…」


 屋根から飛び降りた男―――、マックスは、ジョンを睨みつけるように凝視しながら刀の柄に手をかける。


「…そ・う・だ」


 重い。


 対等な位置にいるのに、遥か上から話されているような感じだ。普段の彼からは想像など出来ないような変貌である。


「…契約か…。気づいていた…。ジョンも”Dの紋章”が備わってるって…。…だが、いつ契約を…」


「さ・せ・な・い・よ・う・に・見・張っ・て・い・た・の・に・か・?」


「ッ!!?」


 マックスは驚きの表情を見せ、半歩退いたが、すぐに、冷静さを取り戻す。


「…そうだ。訓練生の時から既に私は気づいていた…。私はDの紋章を持っている奴が”見える”から…」

「…な・る・ほ・ど・な・。”見極める眼スコープ・アイ”か・。・こ・の・町・で・は・貴・様・の・み・だ・な。今・の・と・こ・ろ。」

「今のところな…。だが時代の流れとともに増えていくだろう…。Dの紋章を持つものも…。いや、今はそれより契約をいつ…」

「つ・い・さ・っ・き・だ」

「!!?」


 ”さっき”!?そんなに速攻で契約などできるのか!?

 脳裏でそんな疑念が生まれる。


「正・確・に・言・え・ば、こ・の・戦・闘・が・始・ま・る・寸・前・だ。うつわ・が・私・を・求・め、私・は・そ・れ・に・応・じ・た。本・人・も・そ・の・事・に・気・づ・い・て・い・た・か・ら、契・約・は・す・ぐ・に・済・ん・だ」

「そうか………。それで貴様の真名しんめいは?」

暴・発・竜(ブラスト)


 そう言ってジョンが―――、いや、暴発竜ブラストがゆっくりと手を挙げてマックスに向ける。

 瞬間―――、

 マックスの真横を突風が撫ぜる。

 …いや、正確には、真横にあった倒壊した家々が跡形も無くまとめて微塵に吹き飛んだのだ。その時起きた風圧が過ぎただけ。


「…暴発竜ブラストか………。………ついでに聞くが、ジョンは返ってくるのか?」

「さ・あ・な。す・ぐ・帰・っ・て・く・る・か、い・づ・れ・帰・っ・て・く・る・か、も・し・く・は、」

「………二度と戻ってこないか…」


 苦々しげに吐き捨てる。


「ほ・う。知・っ・て・る・の・か」

「そういうことに詳しい上司がいるだけです…。まあ、よく振り回されますが…」


 困ったような顔をして、ため息交じりに肩をすくめる。


「ふ・む。人・間・に・も・面・白・い・奴・が・い・る・も・の・だ・な」

「はた迷惑なだけです」

「は・は・は・は・は・は・っ。………さ・て、そ・ろ・そ・ろ・寝・る・か…」

「寝る………??」


 マックスが困惑気味に返した時だった。

 ジョンの体がふらっ…、と揺れたかと思うと、前のめりに倒れた。

 吊っていた糸が突然切られた人形のように。


「っ!?」


 驚いたマックスが慌て駆け寄り、倒れたジョンを抱きかかえる。


「ジョン!?」


 返事は無く、目を閉じたままぐったりとしていた。


「………気を失っているのか………?」


 マックスの単なる推測だったが、胸の奥の不安感が考えたくない一番最悪な事態を想像させる。

 だが今はジョンを取り敢えず一旦安全な場所へ運ぶしかない。

 ………こんなに血だらけのボロボロな人を、こんな所に放置したら間違いなく死んでいると思われるに違いない。

 無言で手早く担ぎ上げ、駆け足で城に向かう。

 そして、その表情はあまりにも悲哀に満ち、今にも泣き出しそうなくらいに顔をしかめていた。


「………また…、部下を…、仲間を…、家族を…、親友を…、…失えと言うのかっ…」

 そんな小さな呟きは、崩れた町の中では誰にも聞こえることは無い。




 ―――――――――――――――――




 〜西側〜




 地に倒れ伏すワーロック・コリンは嘆いていた。


 何故―――


 何故、こんなにも自分は無力なのかを。


 コリンは、突き刺すように繰り出された尾を肩に食らい、吹き飛ばされた。

 無論、全力で避けた。でなければ、今頃、死んでいたに違いない。………が、避けても変わらない。

 ただ悪戯に生を伸ばしただけ。


 部隊で自分が最後の一人。


 先輩も、隊長も、皆、炎に焼かれるか、爪でバラバラに引き裂かれるか、竜に喰われるか………。それで死んだ。全員が。


 …隊長が炎に焼かれる最期の寸前に叫んだ。


 逃げろ!!


 瞬間、爆音と灼熱に辺りは包まれて、真っ赤な火柱が立った。


 そして、俺は一人。全力で逃げ出した。

 でも、それは無理だった。

 城に向かって逃げる、その振り向いた瞬間、ものすごい速さで竜の尻尾が後ろから迫ってきており―――。


 今。



 よく反応したと自分を褒めるべきか、なぜ避けれなかったと貶すべきか…。いや、それ以上に。


「………………弱すぎ………俺………」


 地面に倒れ伏したまま己の手を見つめる。

 息をするたびに全身が軋む。

 飛ばされたときに強く打ったのだろう。

 多分、骨もどこか折ってるのかもしれないが、何処を折ったのかなど分かる訳がない。全身が痛いのだから。

 苦しい。苦しい。


 でも、


 立たなければ。

 立って逃げ切らなければ。

 隊長が自分に言った最期の命令。

 それを果たさなければならない。絶対に。

 それが、自分の代わりに死んでいった者達へのせめてもの報い。


 ゆっくりと立ち上がる。


 腕に力を入れればメキッ…。と嫌な音がし、両足に力を入れればミシミシ…。と悲鳴を上げる。視界はぼやけ、呼気は荒く、重心は前に偏り、今にも倒れそうだ。


 が。


 歩く。


 城に向かって。


 隊長の最期の命令を。


 果たすために。




 …今更ながら自分の忠誠心の強さに驚く。………が、本当に今更だな………。


 後に熱気を感じる。多分、竜が火球でも吐いたのだろう。逃げ切ることもできずに焼かれる。


 構わない。


 まで足掻いてやる。


 それがせめてもの俺ができる抵抗だ。




 そしてコリンが一歩踏み出した瞬間。

 辺りに爆音が響き渡った。




 ――――――




 ………あれ?生きてる??


 つい数秒前、確かに自分の体が焼けた気がしたはず…。だった。だが、体には全く火傷の後すら見受けられない。


「…あっぶねえ…ギリギリ間に合った」


 後ろから誰かの声。

 声の主は能天気にそう呟き、『何か』をした。でなければ、いきなり目の前が全く見えなくなる濃い煙りに巻かれるはずがない。

 だが、コリンは振り返らず何も訳がわからないままひたすら前へと進んでいった。


 ――――――――――――――


「はぁ〜。また助けられなかったか…」


 真っ白い煙の中でバルハラスは竜3頭と対峙していた。

 闇夜を飛ぶような速度で駆けてきて竜が見えた場所に今さっき着いたのだ。が、既に時は遅く部隊はほぼ全滅状態。唯一生き残った一人をたった今助けたばっかり。


「俺はあんまり怒るの得意じゃねえんだけどなぁ…」


 頭をボリボリと掻きながら面倒くさそうに帯刀している刀に手をかける。


「取り敢えずお前らブチ殺す」

 ”………ふざけるなよ人間!!”


 急に頭の中に声が響く。


「…なぁんだ。やっぱ、話せんのかお前ら」


 感心したようにバルハラスは刀を抜き、正眼に構える。


 ”我らは貴様らとは違う!貴様らのような愚鈍な生命体は全員抹殺せねばいかんのだ!!”


 竜の一匹が咆哮を上げる。


「俺達をどう思っているのか正直どうでもいい。だが、一つだけ重要なのは、それはお前ら個の意なのか?」

 ”貴様が知ることでは無い!何故なら貴様はここで死ぬのだからな!”


 竜が三頭同時に咆哮を上げ、バルハラスに突進を仕掛ける。


「言ってくれるねぇ…。じゃあ、手前ら全員を”裁く”!来い!『雷竜ライディーン』!!」




 ―――城内―――




 再び響き渡った爆音によって、城の中が大きく揺れる。

「きゃあああああ!」「うわああああ!」「わああああああ!」

 と、避難してきた市民が口々に悲鳴を挙げて恐怖に駆られて慌てふためき身を寄せ合う。


「落ち着いて!みなさん!落ち着いて下さい!!いま、我が国の『奇行竜討伐隊』が竜どもを何とかしてくれますから!どうか落ち着いて冷静になってください!!」


 城の兵士がなんとか落ち着かせようと大声を出すが、街の全人口が集約した城の中では蚊の鳴き声程度にしか響かない。


「怖いよー!ママー!怖いよー!」「俺達はもう終わりなんだーっ!」「いやだーっ!死にたくないっ!死にたくないぃーっ!」


 より混乱は増すばかり。


「…っ!くそっ!まだ竜は倒せないのか!?これ以上の混乱はっ…」


 アルバン城はさほど狭い城ではない。むしろ広い方だ。が、街の人口約1000万人。それを全員収容したのだ。大広間、客間、地下倉庫、食堂、会議室………それら全てに振り分けても、まだ収容出来ない人が大体100人程いる。

 また、人口の過密化による熱が城の内部の温度を上げている。

 まさに蒸し風呂状態。いずれ何人か暑さで倒れる可能性も…。

 …いや、それよりも怖いのが、


 暴動。


 これ程人数が集まっているなかでそんなことをされたらひとたまりもない。

 ただでさえこの人の密集地。正直、苛立ちが相当来ている人もいる。

 その状態で暴れだしたら止める術はない。


「早く…、竜を…止めてくれ!」




 ―――――――――――――――――――――




「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 バルハラスが剣を突き出す。

 ―――と、そこから青い雷が走り、最後の一頭に直撃する。


 ギギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!


 断末魔のような金切り声を天に向かって吠えた途端、竜は崩れるように灰と化した。


「………………………っはぁ!!…はぁ…はぁ…はぁ………っく」


 倒れ込むように膝をつき、呼吸を整え始める。


「はぁ、はぁ、はぁ…。はぁ…。はぁ………。あーっ。しんどっ!…まさかこんなに持ってかれるとは…いや、俺ももう歳ってことか。おーやだやだ」


 愚痴るように吐き捨ててからゆっくりと立ち上がる。


「えーと?あとは………?」


 ゆっくりと目を瞑り、竜の居場所を探し始める。




 バルハラスは、竜と契約してからかなり経つ。アルバンに帰るその間に契約した竜から教えられた”探知”で、竜の気配を察知できるようになった。規模は大体半径5キロ圏内が限界で、竜の気配しか察知できない。が、有ると無しではだいぶ違う。かかる時間は大まかに数えて5~6秒。かなり集中力がいるため早くやろうとすると逆に集中できなくなり、余計に時間がかかる。




「…一匹…。って、おいおい北の端っこじゃねえか。面倒くさいなあ…っと!」


 ”探知”を終えたバルハラスはそうぼやいて地面を蹴り高く跳躍し、移動していく。

 そして、その姿は既に人を超えていた。

お久しぶりです。JUDOです。初めての人は初めましてです。


初めてこのサイトにある「高機能フォーム」を使わせて頂きました。

…が、文章能力が向上したわけではありません…orz


夏休みが終わってる人や、終わって無い人も居ますでしょう。ちなみに作者は当の既に終わってます。コンチクショウ!!(泣)

そして明けてちょっとしてからテストとか…はぁ…


その他もろもろの事情で今日まで投稿できませんでした。

またゆっくりじっくりのそのそと書いていきたいと思います。

駄文ですが、応援よろしくお願いします。


良いところ、悪いところ、感想なんでも待ってます。

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