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幸せになりますように。  作者: かめ
秋葉と店長

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第十四話 デート


登場人物

----草苅秋葉(くさかりあきは)

22歳の女子大生。思ったことは言う、真面目な性格。"居酒屋 たくみ食堂"にてアルバイト中。父が亡くなり、恵の身の回りの世話をしている。


----十日恵(とおかめぐみ)

恵比寿様の本当の姿。今まで草苅家が世話役として身の回りの世話をしていたが、秋葉が引き継いだ際に秋葉の家に住み始めた。神社に捨てられていた秋葉の名付け親。


----宍戸拓海(ししどたくみ)

"居酒屋 たくみ食堂"の店長で、巧の名前で動画配信活動もしている。チャンネル登録数10万人。秋葉に好意をよせている。

 

「すみません、お待たせしました!」


 店長とデートに行くことになった。秋葉の悩みは恵にこの件を言うか言わないかだった。けれど言ったらうるさそうだし、それに自分には関係ないみたいな態度をとられるのが薄々わかったので、恵には言わないことにした。

 そもそも神様にデートという概念があるのかもよく分からないし。


 服は悩んだ末に、淡い色のシャツワンピにタイツ、ブーツと少しおめかしをした。対する店長も、白シャツにグレーのカーディガンを羽織っていて、なんだかいつもよりオシャレに見える。顔にはいつもの眼鏡。

 実は昨日の夜中まで巧配信を見ていたので寝不足気味だが、店長は配信をしていた側だというのにいつもと変わらない。

 地元ではなく、電車で30分かかる都会の駅前で待ち合わせをしたので、人が多い。人混みの中から店長を見つけて謝ると、店長は笑った。


「俺も今来たとこ。ってさ、時間より早いじゃん。草苅ちゃん真面目だなぁ」

「真面目なんですよ、こう見えて」


 お茶らけると、店長はさらに吹き出した。


「さて、今日はどうする?どこか行きたいところある?」

「いや……ごめんなさい何も考えてなくて」

「じゃ、とりあえずお昼食べに行こっか。何食べたい?」

「え〜〜〜なんだろう。韓国料理とか?」

「辛いものかぁ、いいね。俺ちょっと行ってみたいお店あんだよね。そこでもいい?」

「ああもうどこでも!」


 方針が決まったので、店長の案内で歩き出す。

 秋葉は恋愛経験がある方とは言えない。高校、大学とそれぞれ付き合った人はいたが、なんだか嵐のように訳が分からないうちに過ぎ去っていった。

 しかも年上の男性だ。年上ってみんなこんな風なんだろうか。少しどきどきと、緊張があいまざる。

 そう思っている間にも、店長は話を進めていた。


「今回はさ、お互いを知ることが目的じゃん。だから草苅ちゃんも敬語やめて、普通に話してよ」

「あぁ、たしかにそうですね」


 返事が既に敬語になってしまう。


「………そうだね!ごめん、気をつけます!」

「いやもうぐちゃぐちゃだよ」


 店長が笑ってくれる。いつもよりももっと朗らかな雰囲気である。

 そうこうしているうちに、ビルの3階にある韓国料理屋についた。金属製のドアの向こうに、セラミックのテーブル、硬めの椅子が並んだ空間が広がっていた。


「フタリ?コチラどうぞー」


 片言の店員さんが2名席に案内してくれる。店長がさりげなく奥の長椅子に誘導して、座った。


「へーー、こんな感じなんだな。ここ前に話題になっててさー、一回来てみたかったんだよね」

「いいですね、雰囲気いいお店」


 さて、とメニューをめくった店長は既に同業者モードだった。


「うんうん……イチオシはやっぱビビンバで……あぁこういうメニューの配置もあるなぁ。あーーー、キムチで単価を上げられるっていいな、うちでも使える…?逸品に追加するか」


 などとブツブツ言っているのがおかしくて、笑ってしまう。


「あっ………ごめんごめん、癖なんだよね。いっつも妹にも怒られてさー、原価がどうとか言っちゃって」

「分かりますよ。私も入った瞬間テーブル番号考えちゃいます」

「あ」

「あ」


 また敬語になっている。最近家でも恵に敬語を使っているから、染みついているかもしれない。


 まーでも、職業病だよねぇと言いながら店長とメニューを決めた。純豆腐セットとビビンバセット、小鉢も全て二人とも別々。隅々まで食べてやろうという魂胆丸出しのオーダーである。



 *



「さて、と。何か聞きたいことある?」


 メインと小鉢をある程度食べ終わったところで、店長が切り出した。


「何か聞きたいことあればなんでも聞いてよ」

「聞きたいことか〜〜…………店長、眠くない?」

「え、草苅ちゃん眠いの?」

「昨日夜の配信見てたら眠くって…」

「あぁ〜、慣れてるからかな。大体配信の後もサムネ作ったりショート動画作ったりしてるし。今は草苅ちゃんといるから目は冴えてるよ」


 にっこりと笑った店長はいつも通りだ。


「配信者ってすごい…」

「そうかな?元々あんまり寝ない方だとは思うよ」

「そういえば、なんで配信始めたの?」

「んーー、元々趣味でゲームするのが好きだったから、いっそ配信してワンチャンお金もらえればいいかなぁと」

「あっ結構単純な理由だ」

「悪かったね単純で。………ゆっくり話できるとこでもいく?草苅ちゃん疲れてそうだし、ゆっくりできるカフェとかどう?」

「うん、移動しよっか」


 立ち上がると、店長がサラッと伝票を取り上げた。


「あっ」

「デートって言ったでしょ。ここは男を立てるもんよ。あとで払うとかもメンドイからなし」

「…………ありがとう」


 またまたとてもスマートな立ち振る舞いだ。年上だからだろうか。



 *



 どうやら寝れるカフェというコンセプトらしい。

 とても大きなソファー、もしかしたら秋葉の部屋よりも大きなソファーだった。

 等間隔にクッションが並べられ、そこで各自くつろぎながらお茶を飲めるようだった。テーブルは小さい膝の上に乗るサイズが一人一人与えられ、お茶なんかはその上に置くようだ。

 秋葉はワンピースだったので、店長がブランケットを借りて膝にかけてくれる。


 照明もそんなに明るくなく、周りの人たちも落ち着いた雰囲気でゆったりと喋っている。ここ、今度未来と絵麗奈と来てみようかなと考えながら、気がついたら秋葉はウトウトとしていた。

 店長とは色んな話をした。店長の家族のこと、活動のこと、仕事のこと、学生時代の話。店長は話がうまく、気まずくなることもなく、時間はあっという間だった。

 秋葉は秋葉で、生い立ちをまだ話す気にはなれなかった。店長の家族の話は、ある意味眩しい。


「ごめん草苅ちゃん!名残惜しいけどお店戻らないと!」

「あ、そんな時間?早いね」


 デートというから店休日に約束をするのかと思ったが、意外にも指定されたのはお店が開いている日だった。


「なんでお店休みの日じゃなくて、今日だったの?」

「………いやさ、終わりがないといつまでもダラダラしちゃったり、帰りが遅くなってもあれだから。いっそのこと終わり時間決まってた方が楽っていうか」


 そういう店長が一瞬真顔になった。


「それに、帰したくなくなったら困るしね」


 その時の店長はなんだか妖艶に見えた。思わずどきっとしてしまう。いちいちプランがよく考えられている。


「草苅ちゃんは帰ってゆっくりしてね!また配信も遊び来て〜。あと、またこうやって会ってくれる?」

「うん……ぜひ」

「よかった」


 店長は本当に安心したようだった。


(………大人の男性って、すごい)


 店長が慌てて電車に飛び乗るのを見送った。

 そういえば、デートの間恵のことはほとんど思い出さなかった。家に帰ったらまただらしなくソファーに寝そべっているだろうか。

 店長とは本当に正反対だなぁ。

 そう思うと、家路を急ぐ。まだ日はあるが、この時期すぐ真っ暗になる。



「夕食まだ?」


と言う顔をして恵は待っています。

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