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第7章 空席の時間

彼女と話さなくなってから、一週間が経った。

話さない、というより、話せない。

言葉を口にすると、終わりを確定してしまう気がした。


教室では、いつも通りの声が飛び交う。

笑い声。鉛筆の音。

その中に、彼女の声も混じっているのに、俺の耳だけが拾わない。

聞かないことで、日常の形を保っている。


昼休み、ファストフード店の前を通った。

あの日と同じ席が空いていた。

窓から差し込む光も、テーブルの傷も、同じ。

なのに、そこには何もなかった。

空席というのは、思い出を一番強調する形だと知った。


放課後、校舎を出るとき、彼女の後ろ姿を見つけた。

数人の友達と笑っている。

笑顔は綺麗だった。

けれど、その中に“練習で見た笑顔”の形はなかった。

あのときの彼女は、俺を見て笑っていた。

今の彼女は、俺のいない方を向いている。


帰り道、靴の音がやけに重く響く。

歩くたび、何かを思い出す。

ポテトの塩気、紙コップの温度、袖を掴まれた感触。

全部が、日常に混ざってしまっている。

忘れるには、生活が近すぎた。


夜、机に座ってノートを開いた。

白いページの上で、ペン先が動かない。

“好き”という文字を書こうとしたが、手が止まる。

書けば、どこかに届いてしまいそうで。

届かないはずなのに、怖かった。

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