表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

第10章 本番の始まり

冬休み前の最後の日。

屋上の鍵を借りた。

あの場所に、彼女が来ることを願って。


夕暮れ。

空の色が、橙から群青へと変わる。

フェンスの向こうに街の灯りが滲む。

手の中の金属の冷たさが、

今度こそ言葉を出す準備をさせてくれた。


足音。

振り向くと、彼女がいた。

マフラーを外して、髪を耳にかける。

その仕草が懐かしくて、

まるで“あの日”の続きを見ているようだった。


「来ると思ってた」

「来てほしいと思ってた」

言葉が重なって、二人で少し笑う。

笑うことで、怖さを少しだけ誤魔化す。

それでも、目の奥は真剣だった。


「中嶋くん」

「うん」

「練習、終わりにしよう」

「……うん」

「これからは、“本番”でいい?」

「いいよ」

その瞬間、風が吹いて、

髪がふわりと舞った。

彼女が目を閉じた。

俺も、ゆっくりと目を閉じた。


沈黙のあと、

雪の音と、二人の心臓の音だけが響いた。

それが、

練習の終わりであり、

恋の始まりだった。


夕陽は沈みきって、

街に灯りが灯る。

冷たい風が吹いても、

もう怖くなかった。


“言い訳の温度”は消えて、

そこに残ったのは、確かなぬくもりだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ