CRYING HEADS #3|蛇の数え歌 覚えてはいけない夜がある。——それでも、八つの声が「思い出せ」と叫ぶ。
夢を見るたびに、何かを忘れていく。
忘れるたびに、何かが目を覚ます。
今夜もまた、宗一郎の中で“声”が増える。
雨の匂い。腐った花びら。
宗一郎は夢の中で「八つの顔」を見ていた。
一つは笑い、一つは泣き、一つは囁き、一つは喰らう。
残りの四つは、彼の中にまだ眠っている。
「おまえは、どれを選ぶ?」
誰かが問う。
血の匂いとともに、蛇の舌が空を舐めた。
現実に戻ると、柚月の手が震えていた。
「また……見たの?」
「いや、まだ“見せられてる”途中だ」
宗一郎の瞳に、淡い赤が灯る。
記憶が侵食してくる。
“神”と“人間”の境界が、声によって削がれていく。
——八つ数えるたびに、ひとり死ぬ。
——ひとつ忘れるたびに、ひとり生まれる。
八岐の歌。
それはこの世界の誕生を逆再生する、禁断の数え歌だった。
「覚えてるか、宗一郎」
夢の奥から響いた声は、
優しく、そして絶望的に懐かしかった。
「おまえを喰ったのは、俺だ」
彼の背後で、蛇が八つの首を広げる。
一つ一つが過去の“人格”の顔をしていた。
そして、九つ目の影が、ゆっくりと目を開く——。
第3話「蛇の数え歌」、読んでくれてありがとう。
次回は、ユウヒが“神の断章”を読む回。
面白かったら★とブクマ、そして「あなたの好きな神話」をコメントで教えてください。
—— CROSSOH




