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【第一話:八つの声と、一つの刃(拡張版)】

はじめまして、CROSSOHクロスオーです。


はじめまして、CROSSOHクロスオーです。


初めての投稿作品になります。


「crying heads」は、記憶・赦し・歪んだ世界をめぐるダークファンタジーです。

記憶のかけら(フラグメント)を拾いながら、自分自身と向き合っていく少年の物語を描いていきます。


読んでくださった方に、何か一つでも“引っかかる言葉”が残れば幸いです。

「また神社?」


柚月の声が、ほんの少しだけ風に紛れて揺れた。


「うん。……なんとなく、今日は寄っとこうかなって」


そう答えた宗一郎の返事には、意味なんてなかった。けれど、足は勝手にそっちへ向いていた。


 


放課後の校門を出ると、秋の陽がすでに低く、影を長く引いていた。

駅とは反対側、商店街の外れにぽつんとある、あの神社。

何度も通っているはずなのに、今日は妙に静かだった。


 


鳥居をくぐる瞬間、空気の色が変わった気がした。

風が止まり、蝉も鳥も、人の気配も、全部どこかへ消えた。


 


——ザリ。砂利の音。

なのに、誰もいない。


 


そのときだった。


 


「……ーーノo」


誰かが呼んだ。

誰の声か、分からない。

けれど、その響きは宗一郎の胸の奥で、ひどく懐かしくも、苦しかった。


 


「誰だ……?」


声に出すと、自分の声だけが神社に跳ね返ってくる。

まるで、封印された何かを揺さぶってしまったかのように。


 


「久しぶり、スサノオ」


 


声の主が、姿を現した。

白い髪。赤い目。中性的な顔立ちの少年。

制服の第1ボタンだけが外れていて、そこから覗く鎖骨がやけに生々しい。


 


宗一郎の足がすくむ。心臓が速くなる。呼吸が浅くなる。


 


「……ユウヒ?」


名前を呼んだ瞬間、脳裏に閃光のような痛みが走った。


 


「君が僕を殺したこと、ちゃんと覚えてるよ」


そう言ったユウヒの目に、怒りも憎しみもなかった。

ただ、哀しみの底に沈んだままのような光が、確かにあった。


 


その瞬間、宗一郎の右腕が焼けるように疼いた。

皮膚の下で何かが脈動し、

——刃が、目を覚ました。


 


世界は、音を失った。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


第一話では、過去の記憶と“彼”との再会を中心に描きました。


次回は、「傲慢」と呼ばれる人格と宗一郎が向き合うことになります。


感想・ご意見などいただけたらとても励みになります。


これからもよろしくお願いします。

—CROSSOH

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