生きているけど死んでいます。
誰にも気づかれずに、生きているけど、もう死んでいた。
そんな感覚に、覚えはありませんか?
本作は、静かに、そして取り戻せないまま流れていく“存在”についての短編です。
暗く、淡々と進みますが、どこか誰かの「心の奥」に触れられたら嬉しいです。
※R15指定相当の描写あり。
※死生観・虚無・自己喪失などのセンシティブな内容を含みます。
とある男は身体の不調を訴えて
自宅から近い市立病院を受診した。
医師は薄気味悪い顔をした女性だった。
医師が検診を終えると男にこう言った
「生きているけど死んでいます。」
男は困った顔をしてそれがどういう状況なのかを分からなかった。
医師は話を続けた。
「あなたは、数日前に心肺停止した形跡が見られます。ですが、私の前でこうして今受診して私の目の前にいます。あなたの心肺は停止していますが、身体の破損も見られず、見た目は生きている人そのものです。にわかに信じ難いですが、あなたは、生きていますが、死んでいるといえます。」
男はショックを隠せなかった
男の名前は灰原梓聖20代過ぎの平均体重以下のショートカットの黒髪の肌が真っ白なアルビノのような男性。
医師は黒髪ロングに白人のような白さの肌で白衣を纏い、薄気味悪い笑みをずっと浮べている。
灰原が医師にこう返した
「先生、俺は入院でしょうか?」
医師は薄気味悪い笑みを浮べながら灰原に伝えた
「生きている状態なので、何も問題無く日常をおくれます。ただし、たまに検診に来てください。前例が無い症状なので。」
医師はそういうと次の診察があるからと灰原に伝えた。
灰原は帰宅しながら自分が死んでいた事に驚いていた。
灰原が帰宅してアパートの自室で帰宅中に買っていた缶コーヒーを飲んだ
「味覚が無い。」
灰原は生きているが死んでいる為味覚が無いのだ。
彼はため息をついてその日を終えた。
数日後、灰原は検診で市立病院に向かった。
医師は薄気味悪い笑みを浮べながら灰原を検診していた。
「レントゲンを撮りますね。」
心肺停止状態の灰原の心電図以外はその日のうちに医師は全て調べた。
灰原が医師に味覚が無いことを伝えた。
「あなたは、死んでいる状態なので、味覚が無い状態です。聴覚や、視力、運動能力等があるのが不思議なくらいです。」
医師は笑みを浮べながら灰原に検診後に、何かがあればすぐに連絡するように伝えた。
灰原は帰宅中に近くの公園で月を見ていた。
味覚障害以外は残っているのが奇跡的な状態の自分を客観的に見ていた。
「気持ちが悪い。」
そう言って帰宅した灰原は帰宅後、自分の胸を果物ナイフで刺した。
痛覚も無く、彼は出血しても倒れなかった。
彼は死ぬ事が出来ない身体なのだ。
医師に連絡し、身体を刺したことを伝えた。
灰原は市立病院に向かい医師の処置を受けた。
「あなたは死ぬ事が出来ません。身体を破損させても、効果が無いので、今後はお控えください。」
___それから数日後。
灰原は死ぬ事が出来ない身体だからと、死ぬ全ての方法を禁じられていた。
灰原は数日間に、首吊り、首を切る、身体を切り刻むなどを試したが死ななかった。
ある日灰原が買い物に出かけていた。
買い物かごに缶コーヒーや、食べ物を入れていると、スーパーから悲鳴が聞こえた。
武装した集団が周りにいた人を銃殺していたのだ。
灰原はいきなりの展開に驚きが隠せなかった。
「この集団に身体でも爆破されたら、跡形も無くなるが生きているんだろうか。」
そう頭で考えながら灰原は集団の1人に頭を撃たれた。
銃弾は綺麗に貫通したが、灰原は生きている。
「な、なんなんだこいつは。」
武装した集団が怯えて灰原を見ていた。
灰原は集団に少し苦笑いをして、怯えているレジの人にお金を払い、その場を去って行った。
主治医に連絡し、灰原は処置を受け、人里離れた山に引っ越した。
数年以上経ち、身体の損傷も激しいが灰原は死んでいるが生きていた。
その後数年、数十年、何年経っても灰原は死ねず、生きているが死んでいた。
END
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
この物語には、起伏も希望もありません。
ただ“生きているはずなのに死んでいる”という状態を、
できるだけ静かに、逃げ場のないまま描きました。
誰かにとって、この作品が「自分だけじゃなかった」と思える夜になれば嬉しいです。
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