アルベールside24
お待たせしていた方、本当に遅くなってすみません。続きを投稿しました。
寝不足のせいか、何となくフラついて歩き着いた苺畑。
「うん。良い色だ······」
色付いた苺を収穫したり、生い茂り過ぎた葉や枯れた葉を取り除いたりしていると、没頭できて少し冷静になれる。
無心で手入れしていると、スィーとやって来たジン。
『おいおーい。アルは何でここにいるんだ~?』
「何で······。いつも通り手入れだが?」
『違うだろ~!?リリスと朝食はしないのか!?』
「······」
『うわぁー!!マジかよ~!!』
お節介なうちの精霊は、人の頭の上で項垂れた。
そのまま気にせず作業を続けると、またお節介が始まった。
『そんなんで良いのかよ~?』
「······何がだ」
『リリスと行き違ったかして、何か下らん事で悩んでんだろ~?』
「······」
見ていたかのような口調で見透かされ、的確な所をつかれてしまう。
『······で?オレには言えないのか?』
「······バラが」
『バラ?』
ジンに話しても変わるかは分からないが、クルトに言うより自然と言葉が出てきた。
「······リリーは俺の苺よりもバラの方が、ベルリックの方か雰囲気も似合いな感じもあるし······」
『あぁ~。昨日の夜のな~』
「俺はリリーの邪魔なのか······」
昨日の夜の出来事からずっと考えていて、寝ずにモンモンとしていたのを引きずっている。
『あんなに幼い頃からストー······、見守ってるだけだったのが、急に近くなったら執着止めんのか~?好きじゃなくなったのか~?』
何が言いたいのかは分かる。だが、ストーカーはしていないとは思うぞ。ただ、情報を集めて、悪い虫がつかないように見守っていただけだ。
「そんなわけないだろ!!今でも好きだ······。近いからこそ、どうして良いか分からないんだ!怖いんだ!」
『オマエそんな事で怖じ気付いてたら、すぐに誰かにとられるぞ~?火の精霊がいるエフリート家の次男とか~?』
「!?」
あいつは絶対リリーに気があるとは思っていた。親戚だからとリリーにやたら近いし、俺がリリーに会えないのに対してあいつは会える事を自慢してきた。
それでも俺は、リリーと婚約しているというアドバンテージがあったから抑えられていた。
「······誰にも渡さない」
『アルはストーカーくらいが丁度良いんだよ~』
「······誉めてないだろ」
『それに······本当の恐怖はリリスの母親だと、オレは思うけどな······』
ジンは何を思い出したのか、身震いをしていた。それが分からなくもない自分がいる。
『あとは、ちゃんとリリス本人と話せよ~。オレが読んできてやるから、いつもの温室な~』
「あっ!!おい!!」
行ってしまった。
何を話せと言うのか······。正直に嫉妬してたと言って良いのか。気持ち悪いと思われないか。
気持ちを落ち着かせてから行こうと思ったが、なかなか足が進まない。
どうしたものかと迷いながらも、温室まできてしまった。
入り倦ねていると、リリーが入っていく姿を見た。その後すぐ、ジンが飛んできた。
『連れてきたんだから、全部話せよ~?』
「······全部」
『隠してるからダメなんだよな~。オレの事も話していいからな~』
「駄目だろ!?」
精霊の存在はリリーも知っているだろうが、ジン自身を明かしてしまうのはもう少し先の方がリリーの負担にならないと考えていた。
『······リリスは特別だからな~』
「······特別?俺にとって?」
『オマエにとってもだけど、オレにも他のヤツらにも······』
「どういう······」
『あっ!早く行くぞ~。リリスが出てきちゃうぞ~』
何かはぐらかされたが、それよりはリリーの方が優先なので、取りあえずリリーに会って話をしなくては。
温室に入るとリリーがいた。何やら思い切り深呼吸をしている。
何度も深呼吸をしているので、つい、気になり声を掛けてしまった。
「······何をしてる?」
俺に声を掛けられて驚いていたが、リリーは俺に会いたかったからここに来たのだと言ってくれた。
その一言で恐れなどなくなった。より一層、リリーが、好きになった。
俺に会いに来てくれた。俺を求めてくれた喜び。
全て話そう。ジンの事も話して、リリーが俺から逃げられなくなれば良いだけの事だ。
どうやってここへ来たのか聞くと。
「······あの······アル様。信じてもらえるかは分かりませんが······。ここまで白い光の球に導かれたんです!!昨日話をしたのと同じ球に!!」
リリーの言う事はこれから先、何でも信じるからなら。と心で呟きながら、ジンに出てきてもらった。
リリーは驚いてはいたが、興味津々な表情でジンと挨拶を交わしてくれた。
ジンも白い光ではなく、精霊の小さい姿をリリーに見せた。
「可愛い~」
そう言っていたが、俺からしたら可愛くない。正直に"俺からしたら可愛くない"と言うと、幼い頃の話を暴露しようとした。
ジンは味方なのか敵なのか、分からない事をしてきた。それくらいリリーを気に入っているようだった。
だが、あまりにもジンがヒートアップしすぎて、リリーをここに連れてきた事を咎めるような言い方になってしまった。
傷付けるような言い方をしたのにも関わらず、リリーは俺に避けられているのではないかと思い、話がしたいと探してくれていたそうだ。
それを聞いて喜ばないなんて有り得ない。リリーが俺にを探してくれていた。愛おしいにも程がある。
今までは俺がひっそりと探して追いかけていたのに、今はリリーがしてくれる喜び。
これは本音を伝えても大丈夫なのでは?と思って、リリーに昨日の嫉妬についてを話してみた。
最後まで読んで下さって、ありがとうございます。
間を空けずにと言っていたのに、申し訳ありませんでした。お待たせ致しました。
昨日、連載とは全く関係のない短編を投稿しました。よろしければ、そちらも読んでいただけたらと思います。
次の投稿も頑張ります。




