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アルベールside18


 リリーを寝かせねばと、抱えて別の部屋へ移動する。

 気を失う程、今日は疲れてしまったんだろうな······。


「アル、リリスは大丈夫か?」

「······あぁ。俺が連れていく」

「······分かった」

「ユリウス······、ここを。あの二人を頼んでいいか?」

「あぁ、勿論だ」


 ユリウスはいつになく、真面目な表情だったので、安心してここを任せられる。


「ジン。ノベトリー夫人に話をして、ここに来てもらえるようにしてくれ」

『わかった~』


 急いでノベトリー夫人に来てもらえれば、お灸を据えてもらえるだろう。


 リリー、もう安心してくれ。君が安らげられるよう、これからは俺がずっと側にいるから。


 リリーに寝てもらう部屋は、彼女の好みの物や愛用している家具などを探してきて、なるべくリリーの普段使っている部屋を真似て用意してある。

 そっとベッドに寝かせ、邸の侍女に着替えも頼み、一度部屋を出た所でジンが慌ててやってきた。


「ノベトリー伯爵夫人には伝えたのか?」

『それは伝えたけど!やっべーんだって~!!』

「······何がだ?」

『あの恐ろしい母親は、やっぱり恐ろしかった!!』

「??」


 焦りすぎて何を言いたいのか、よく分からないが、何かノベトリー伯爵夫人の事であったのだろう。

 すると突然、声を掛けられた。


「アルベール。リリスの様子はどうですか?」

「······!?はい。······気を失う前に俺が抱き止めました。ですので、怪我はありませんが今は寝ています」

「そう······。では、愚息達の所へ案内して下さるかしら?」

「はい。こちらです」


 まさか、ものの五分で来るとは思わなかったが、この人ならばやれるであろう。


『何で自然と受け入れてんの!?五分で来れるなんて、人間じゃあー無理だろ!!ってならんか!?』

「······無理だろうな」

『だったら何で何も聞かないんだ!?』


 何でと言われてもな······。

 辺境でノベトリー伯爵夫人に稽古してもらっていたから、夫人がどんな手を使っていても不思議に思わない。


「聞いて何になる?」

『なるだろ!!この人、俺の力を借りて来たんだぞ!?』

「「······」」


 精霊の力を借りたのか······。ノベトリー家ではないのに。

 でも、可能性としては、夫人のご実家であるアルバディス辺境伯家の前辺境伯夫人は火の精霊がいるエフリート家の娘だから、精霊の存在から扱い方について知っていてもおかしくはない。


 夫人の事を詮索するつもりはない。リリーを守れる方法を教えてくれて、認めてくれさえすれば、それがどんな相手だろうが方法だろうが構わない。


「······成る程。力を上手く扱えば、移動時間の短縮にもなるのか」

「そうです。精霊の力の使い方は多種多様。固定概念に囚われず、色々試してみることですよ」


 これが使いこなせれば、何処にいてもリリーの所へすぐに行ける。


「はい。やってみます」


 そう話していると先程の応接室に着いた。

 ドアを開けて直ぐ、夫人の強烈な威圧感がビクトルに向かった。


「あぁ······。おっ、かっ母、さ、ま······」

「お前はいつもいつも······」


 夫人が対処してくれるだろうから、俺はリリーの所へ戻ろう。知らない所で目覚めたら、不安になってしまうだろうからな。


「では夫人、俺は戻ります」

「分かりました。あの子が世話になりました。これからも頼みますね」

「······はい!お任せ下さい!!」


 み、認めてもらえた!!ノベトリー伯爵夫人からやっと認めてもらえた······。


 これからは遠慮なく、リリーと過ごしていいということだな!!

 逸る気持ちを抑えながら、足早にリリーが休んでいる部屋へ行った。

 寝室のベッドを見ると、まだリリーがスヤスヤと眠っていたので、起こさないように側の椅子に座った。


 天使が眠っているのかと思う程、愛らしいリリー。

 ずっとここに居てくれ。


「よう御座いましたね。ノベトリー伯爵夫人に認めていただけて」


 クルトが涙ぐみながら言ってくれた。クルトは俺の側でずっと見ていた従者だから、俺の気持ちを一番分かってくれている。


「······あぁ。やっと、堂々とリリーの側にいられる」

「······はい。これからはリリス様がアルベール様のお側にいられるよう、尽力していきます!!」

「······頼む」


 クルトと今後の話をしていると、リリーが気付いたようだった。


「······んっ」


 直ぐに目が覚めて良かった。

 

「······私の······部屋?」


 どうやら自分の部屋と間違えているようだ。寝起きともなれば当然だな。

 この部屋は、ノベトリー伯爵家のタウンハウスのリリーの部屋を再現しているのだから。

 今度は小さくため息を付き、頭まで布団を被って考えている。

 こんなに近くで見ていられるなんて、感無量だ。何より、一つ一つの仕草が本当に愛らしいな。


「ぅぅ~······」


 顔を布団から半分出して呻いていたが、巣穴から顔を出している小動物のようだ


 難しい顔をしていたり、顔を赤くしていたりと、コロコロと表情が変わるリリーをいつまでも見ていたい。

 落ち込んだような暗い表情になったとおもったら、ぽつりと弱々しい声で漏れ出た言葉が気になった。


「······嫌われたくない」


 誰にだ!?

 まだ見ていたかったリリーの表情だが、これはもう声を掛けずにはいられなかった。


「誰に?」

「!?」

「アッ、アル様!?なっ、何で!?」


 急に声を掛けたので、驚いていたようだが、少し落ち着けるようにフレーバーウォーターをコップに注いで、リリーに飲むように渡した。


「飲めるか?」

「······はっ、はい」


 美味しいと言って飲んでくれたのが嬉しくてニヤついてしまったが、ゴクゴクと飲み干してくれた。

 何かもうこれは夫婦のやり取りじゃないか!?

 今後はは侍女ではなく、俺が世話をしてもいいのではないか?


「あの······」

「どうした?どこか痛むか?」


 リリーが怪我をしないように受け止めたはずだが······。


「いえ······私って、何れくらい寝ていたのでしょうか?」

「あぁ、二、三十分だろうか」

「??」


 そういえば思った程、眠ってはいなかったな。


「えっと······二、三時間······?」

「いや、二、三十分だ」


 リリーは気を失った後、家に運ばれて二、三時間経ったと思っていたようだった。

 君をここにずっと留める機会なのだから、端から家には帰すつもりなんてない。


 その後、セドリックが来てしまい、リリーとの大事な時間を邪魔された。


 セドリックの奴、逃げてきたな。

 

 きっと、リリーを連れて帰るつもりなのだろうが、絶対に連れて帰らせない!

 俺はリリーとセドリックの間に立ち塞がった。


「っ······」

「セドリック」

「アル、退いてくれ!」

「······」


 セドリックを気にして、リリーは心配ないという事を伝えていた。


 それでも近付き、世話をしようとしていたが、それは俺がやりたいので近付いてもらっては困る。

 リリーもそれに対して良い反応をしてくれたので、嬉しくなったが、その隙に俺を越えてベッドに座っているリリーの傍まで寄ってきた。


「リー!!帰ろう!!」


 セドリックはリリーを連れて帰ろうと必死に説得していたが、リリーは"うん"とは言わなかった。


 ここがノベトリー家ではないとバラしてしまっていたが、特に問題はないことなのて、特に気にしないが、リリーを連れていくことだけは許さん。

 それにリリーは······。


「すみません!とても似ていたので自分の部屋かと思ってしまいました!!」


 そう言って顔を真っ赤にしていたので、俺がリリーの部屋そっくりにした事は気にしていなさそうだ。

 寧ろ、気付いていないかもしれない。


 やり取りの中で、倒れる際におれが受け止めた事も嫌がっていなかったし、リリーも俺との接触を避けずに受け入れてくれている。その点については、ほっとした。


「あっ!!ビクトルお兄様!!」


 何を思ったのか、リリーは急にビクトルを思い出したようだった。

 ここにいないユリウスとビクトルを気にして聞いてきた。


「そう言えば、ユース殿下とビクトルお兄様は?」


 その問い掛けに反応したのはセドリックだった。夫人から逃げてきたから、ばつが悪いのだろう。

 リリーは答えてくれないであろうとおもったのか、俺の方を見て説明を求める顔をしている。

 上目遣いでそんな顔をするのは反則だ。可愛いすぎて、誰にも見せたくなくなるじゃないか!!という思いと、俺を頼ってくれる嬉しさに、またもやニヤついてしまった。


「今、ビクトル殿は別室にて叱られている」

「??誰に?ユース殿下??」

「ユース殿下も含め、ノベトリー伯爵夫人に」


 伝えるとリリーは固まってしまった。そんなリリーもやっぱり愛おしい。







 


 最後まで読んで下さいって、ありがとうございます。


 何かアルベールが変態っぽくなってきた気がします······。

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