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アルベールside16



 応接室では、三人掛けのソファーにユリウスが先に腰掛け、護衛のセドリックはユリウスの斜め後ろに立つ。

 ユリウスは、リリーとビクトルをローテーブルを挟んだ反対のソファーへ座るように促した。

 俺は当然一人席か······。

 リリーの隣が良かったな······。そう思っているとリリーが言った。


「私は座らずに、端で立っています」


 ソファーが気に入らなかったのか!?部屋が駄目か!?

 なるべく、リリーの好みそうな家具や調度品の応接のつもりだったのだが。


「リリス、座らないのかい~?」

「お兄様の隣は嫌です」

「リ、リリス······」


 部屋やソファーではなかったか、良かった······。どうやらリリーは、ビクトルに怒っていたようだ。

 ならば、俺の隣に······。


「ハハッ、まだ怒りが治まらないなら僕の隣はどうだい~?」


 ユリウスの奴。お猪口っているな。お前の隣ではなく、俺の隣だろうが!!

 やっぱり、今度泣きついて来ても仕事は手伝ってやらん。


「いえ、私は問題ないので立っています」


 駄目だリリー。愛らしい君を立たせたままなど出来ん。


「さっきもぐったりしてたし、体調悪い子を立ったままにさせるわけにはいかないよ~」

「私が立っています!!」

「え~!?ビクトルは立ってるだけで圧があるからな~」

「······すみません」


 体格もあるから居るだけで存在感があって、護衛としてはいいのではないか?


「じゃあ~ビクトルは一人用のソファーに座って。リリスはゆったり座るといいよ~」


 これは俺にチャンスをくれたのか······?

 前言撤回、仕事は手伝ってやろう。


 リリーが座りあぐねているので、手を引いて隣に座れる機会が出来た。

 思わずニヤリとしてしまったが、バレていないだろうか······?


 あぁ、可愛い。その瞬間、バッとビクトルが立ち上がったのを見てリリーが、ビクッとなってしまった。


 おい、リリーを脅かすな!!


「アルベール殿!!」

「······」


 ビクトルが俺に対して威圧感をぶつけながら、名前を叫んでいるがそれより。

 あぁ。愛らしいリリー。

 手を取るともっと触れていたくなる。リリーさえ居てくれればいい。


 リリーもそう思ってくれているのか、手を取り合っているのを嫌がらず、じっと俺の目を覗き込んで見詰めてくれている。

 周りなんてどうでもいい。ずっと綺麗な瞳で俺だけを見てくれ。


「······リリー」

「はい、アル様」


 名前を呼ぶと返してくれる。夢にまで見た世界だ······。


「「あ"あ"ぁーー!!」」


 雄叫びを上げたり、いつになく騒がしくしているが、無視だ無視。


「駄目だ駄目だ駄目だぁー!!リリスがぁ······ぁぁ······」

「まだ早い!!何でこうなった!?アルに······リーが······」


 これからもずっと、ここに居てくれないかな?


「んっ?何の話ですか??」


 心の声が出たか?と一瞬思ったが違っていたようだ。


 やはり、ノベトリー夫人に掛け合って、リリーをうちに居させられるようにするか······。

 花嫁修行とか言えば、夫人も許可してくれるだろう。


 此方が真剣に考えているのに、ユリウスの奴は腹を抱えながら何とか堪えて話をしている。


「あはっ、はっ、はぁ~。ぐっぐっ······。いやぁ~リリス、君達兄妹は面白いね~ふははぁ~」


「からかってますよね······」


 あっ、少し膨れた顔も可愛い。


「ふはは~。それにアルも······うはっ······取り繕えなくなって······くっふっ······いつもと······ぶはっ······」


 ユリウスはうるさい。

 取り繕えなくなってるのは、分かっている。だからと言って笑いすぎだ。


「あははぁ~······はぁ······笑った~。まぁ~あまりにも君達が二人だけの世界になっているから、兄二人の方がおかしくなったよね~」


 ユリウスが何か話しているが、リリーはそれに耳を傾けている。

 別にユリウスの話しなんて聞かなくてもいいのに、王族相手だからと気にしているのか、律儀で可愛いな。


「はぁ~······。笑ったら喉渇いちゃった~」


 笑うなんて失礼な奴は、熱い茶でも飲んで痛い思いすればいい!!


 あっ、それよりもリリーが気付いてくれたみたいだ。


「わぁ······これ······」


 こんなに目を見開いて、溢れそうな輝かしい瞳で、この苺を見てれていたのか······。


「あぁ、リリーが食べたいと言ったからな」


 お茶を用意する時に持ってくるようにして良かった。


「そっか~リリスも気に入ったんだ~。アルの苺は美味しいよね~。何たって、僕が何度お願いしてもなかなか持ってきてくれない貴重な苺なんだよ~」


 元々、リリーの為に作った苺だからな。他の誰でもない。リリーに食べて欲しいだけだ。


「貴重な苺······。たっ、食べていいのですか?」


 当たり前だ!!


「勿論だ。リ・リ・ー・の・た・め・に・用意したんだ」

「えぇ~、僕は食べちゃ駄目なの~?」


 お前の為ではない!!!

 こいつ、分かっていてわざと言っているな······。


「······」

「まぁ~駄目と言われても食べちゃうけどね~。パクッ。ん~あっま~い」


 どうせ駄目だと言っても食べるのだろう。

 ユリウスに構っている時間よりリリーに構う時間が大事だ。

 あぁ、リリー。食べたそうにモジモジしている姿が、リスの様でとても可愛いな。

 

 早く食べて欲しい!!いや!!食べさせたい!!!!


 俺は苺を手に取り、リリーの口に近付けた。


「リリー、あーん」


 一度やってみたかった夢で見た行為。


「「「「!?」」」」

「えっ?ふぐっ······、もぐっ······」




 驚いて口が空いた隙に、苺を入れ込むと食べてくれた!!!

 口一杯に頬張る姿が、可愛らしく似合う人がいるなんて······。


「「「······」」」

「ふぁ~!!美味し~い!!」


 溢れ落ちそうな程、瞳を大きくして喜んで食べてくれた。


「そうか」


 このリリーの反応を見ると、全てが報われた気がした。


 あぁ、幸せだ······。


「「あ"あ"あ"ぁぁーーーー!!」


 本当にノベトリー兄弟はうるさいな······。

 静かにリリーを堪能させてくれ。




 最後まで読んで下さって、ありがとうございます。

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