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アルベールside13

 今回はいつもより短めになってます。





 んっ?何かリリーが考えているな。そんな姿も可愛いなー。

 ハッとして、こちらを見た。リリーの方からこちらを見てくれるなんて、幸せだな。


「あの、私がこんな事を言うのは何なのですが······」

「どうした?」


 何か言いにくそうにしているが、リリーの言うことならば何でも聞くぞ。


「えっと······このままは良くないかと思うのですが······」


 リリーが俯いた。まさか、俺が手を握ったままなのが嫌なのか!?

 リリーに近付けた嬉しさから、然り気無く手を握っているのが気持ち悪く感じたのか!?

 嫌がられるのならば、嫌われる前に手を離さなくてはいけないな······。


「······嫌なのか?」

「嫌か······と聞かれましたら、良くはないのかな?と······」


 そんな深刻そうな顔もかわいいが、嫌われたくはないが、離したくもない······。

 願わくば、このまま手を握っていたい。


「······そうか、俺はこのままがいいと思っていたのだが······」


 寂しいがこれまでか······。そう思ったらリリーから意外な言葉が出てきた。


「いくらいけない事をした人だとしても、倒れていたら手当てをしなくては!と思うのです!」


 俺は驚いて目を見開いた。

 何だ。そっちの方か。

 俺に手を握られているのが嫌な訳ではないのか。嬉しさの余り、笑えてしまった。


「何だ、そちらの事か······」

「ん?そちら?」


 リリーは握っている事を気にしていない処か、何を言っているのか分からないような表情で聞き返していた。


 あぁ、愛おしい······。


「こっちが嫌なのかと思った······」


 ずっと握っていた手を少し上げた。


「あっ、ちっ、違います!これは嫌じゃなくて、あの、その······」


 

 嫌じゃなかったのか。

 その言葉に嬉しくて、いつまでも側にいて握っていたい。

 漸く気付いたリリーは、顔を真っ赤にしていたが、その姿も可愛くて仕方がない。



「嫌ではないのならば、これはそのままで。あれはすぐに処理させる」


 リリーには相応しくない者は、早急に処分しなくてはいけないな。


「えっ?そのまま?処理?」


 俺に付いている従者を呼んだ。


「クルト」

「はい」

「!?」


 このクルトは、昔から気配を消すのが得意で、俺の行く所には一緒に付いて回るので、実は先程からも側にいたのだ。


 リリーはいきなり出てきたと思ったのか、体をビクつかせて驚いていた。

 反応がいちいち可愛い。


「これをあの部屋へ連れていってくれ。それと、叔母上にも事の次第を伝えておけ」

「はい。承知致しました」


 クルトは倒れていたアダンを肩に担ぎ上げて去っていった。

 叔母上を呼んでおいて良かった。これで処理も早く進む。

 叔母上も自分の息子がここまで馬鹿な奴だと、今回はもう見限るだろうな。


 担ぎ去るクルトを呆然と見ているリリー。小さくて可愛い、鮮やかなピンク色の唇が少し開いている。


 やばいやばいやばいやばい。


 そんな可愛い驚き方をするなんて······。

 アダンを今すぐ処理して、リリーの記憶からもアイツを消し去りたい。


「あれはこちらで処理をしておく。君は心配するな」


 処理するにしても、リリーが罪悪感を感じないようにしなくてはいけないな。


「······あっ、はい、ありがとうございます。シルフィード公爵令息様」


 何て事だ······。


 他人行儀にも程がある······。先程の浮かれていた自分を殴りたい。

 グッと力が入ったが、すぐに脱力した。仕方がない。リリーはセドリックと呼び方の話をしていたのだから、俺の呼び方なんて堅苦しいままだ。


 力が抜けてしまったので、セドリックの口への拘束が解けた。


「リー!!お前は本当に心優しい子だなぁ~あんなゴミにも優しく出来るなんてなぁ~」

「セ、セドリックお兄様、く、く、苦しい······」


 気を抜いたらセドリックがギュッとリリーを抱きしめ、頭をスリスリし始めた。


 コイツら邪魔だな······。折角リリーと仲良くなれるチャンスなのに。

 引き離すか。


「セドリック、お前はユリウスを連れて会場へ行け」

「はぁ?何でリーじゃなくて、ユースなんだよ!!リーどうすんだよ!?」


 リリーは俺がいるから良いんだよ。


「扱い酷~い。王子ですけど~?」

「ユースには他の護衛を付ければいいだろ!!」

「え~!他の護衛よりもリックの方が気楽なのに~」

「······」


 ごちゃごちゃ、うるさい奴らだな。俺とリリーの仲を取り持てよ!


「やだよ!リーと一緒に帰る!!お前んちがホストなんだから、アルがユース連れてけって!」

「······」


 雰囲気とか、空気読めよ。


「······何だよ。何か言えよ」

「······」


 セドリックに空気読めよというのは、無理な話しか······。

 出来ていたら今回の件、全部伝えていた。


「リック、諦めてアルの言う通りにしようよ~」


 流石はユリウス。先程の自分の行動のお詫びか何かか?


「いーや!あんな事があったリーをこのままには出来ない!」


 誰もこのままにするとは言っていないぞ。何を言っているのだ?


「アルは私とリックに会場へ行かせるって言ったけど~リリスをこのままにはするつもりはないと思うよ~?」


 そうだ。ユリウス分かっているな。


「いや!リーは兄である俺と一緒にいないと、あの恐怖を思い出して泣いてしまう!!」


 シスコンが過ぎるぞ!!


「······はぁ~。そう言ってるよ~。リリスはどうかな~?」


 分かっていないセドリックにユリウスもお手上げか。

 リリーに丸投げしたな。


「「「······」」」


 リリーがどう出るか······。何だかんだ、兄のセドリックの方へ行ってしまうのか······。

 俺なんて今日初めて会ったと思っているだろうしな。

 兄妹と始めましてなんて、信頼度がやはり違うからな。


「えっと······流石に泣きはしないですよ?」

「リ~!!」


 大丈夫だ。俺が泣かせないからな。

 リリーの言葉を聞いたセドリックは、泣きながら落胆していた。

 兄のお前が泣いてどうする。


 いや、思っていた以上にこの状況は嬉しい。


「と言うことで~。アルはリリスを客間で休ませてあげてから会場へ来てね~。リックは私と一緒に会場へ行くよ~。ビクトルにリリスの無事を伝えないとね~」


 んっ、ビクトルの事を忘れていた。まだ厄介なシスコンがいたな。

 まぁ、そちらはユリウスとセドリックに処理をしてもらおう。


 俺はこのチャンスをものにして、リリーとの関係を進めていくんだ。


 それが今回、一番の目的なのだから。




 最後まで読んで下さって、ありがとうございます。

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