アルベールside11
内容は2話~3話辺りです。
順調に進んでいく手筈だった。
リリーはジンの誘導通り、あの庭へ向かってくれた。
俺的には、もう少し慎重に行動して欲しかった。あんな怪しい光の球体に付いていくなんて、リリーは純粋で可愛いな。
まぁ、リリーが純粋なのは分かっていたから、そういう方向へ持っていったんだが······。
警戒心の薄いリリーも可愛い。
これからリリーの事は、俺が警戒して守っていけばいい。
そして、アダンを誘導した場所には、リリーに似たノベトリー家の女性護衛騎士にリリーと同じドレスを着てもらった。
アダンが勘違いして女性騎士に手を掛けた時、捕らえるという予定だった。
まさかのアダンの動きが、誘導と違う方へ行ってしまった。
俺達は急いでアダンのいる方へ向かった。
「······チッ」
「アル、舌打ちは良くないよ~」
「いや、舌打ちもしたくなるだろ!!」
「そうだけど、まさか迷子になるとはねぇ~」
『直ぐそこだけど、オレ先に行くわ~!』
「あぁ」
予想外過ぎるだろう。アイツは何度もここに来たことあるだろうが!!
迷子って何だよ!!
よりによって、アイツが行き着く先にリリーがいる。
こんな事になるのならば、ビクトルの元にいた方が良かったか······。
いや、ビクトルが何も考えずに大立ち回りをしたら、この件が大きくなりすぎてしまう。
リリー、リリー、無事でいてくれ。
急いで駆けつけると、リリーはアダンに腕を掴まれていた。
「······クソッ!!」
俺のリリーに触れるとは!!永久に眠らせてやる!!
見えるこの距離ならば、ジンに吹き飛ばしてもらおう!!
「ジン!!」
そう言った瞬間、リリーも手を振り払った。すると、風を巻き上げながらアダンの体が宙に浮いた。
ドーンと大きな音を立ててアダンは、大の字になって倒れて気を失ったようだ。
間に合った······のか。
ホッとしてリリーの方を見ると目が合った。この距離で見詰めあったのは五歳の頃以来だ。
リリーのキラキラ輝く青い瞳に俺だけが写し出されている。
(······綺麗だ)「······きれい」
思った事が口に出たかと思ったが、言ったのはリリーだった。
同じことを思っていたのか。でも、何に対しての"きれい"なんだ?
まさか俺!?いや、この庭か??
「······リリス嬢?」
色々考えていると、俺の後ろからユリウスが声を掛けた。
「あっ、あの、えっと······」
驚いたのか、上手く説明しようと、しどろもどろしているリリーも可愛い。
「リー!!」
「セッ、セドリックお兄様」
「何で一人でいるんだ!何かあったらどうするんだー!!」
我慢出来ずにセドリックが飛び出して、
リリーを抱きしめられているが、彼女の体からミシミシと音がする。
セドリック、やりすぎだ。
だが、そうなるのも仕方がない。セドリックにはリリーとビクトルを引き離すことは話していなかった。
絶対に反対するだろうと、ノベトリー夫人が言っていたから、反対するであろう点は話さずに進めていった。
「リー!無事で良かった!!」
本当に無事で良かった。吹き飛んだおかげで、間に合ったようだった。
「リック、リリス嬢を離しておあげよ。大変な事になってしまうよ?」
「はっ······」
セドリックはユリウスの言葉でやっと、我に返って、リリーを離せた。
「すみません殿下。つい、可愛い妹がいたので、押さえきれず抱きしめてしまいました」
「いや、いいよ。こうなると分かっていたから」
こうなると分かっていたから、話さなかったんだよ。
ユリウスが話をしている時に、リリーを撫でやがって!
俺がリリーを撫で回したいのを知っていて、わざとやってるな!!
「リー、ビック兄さんはどうした?僕は今日、一緒に居られないからとお願いしたのに!!」
「ごめんなさい。ビクトルお兄様は悪くないの。私が勝手に会場を抜け出してしまって······」
そのビクトルは一緒にいると収集が付かなさそうだから、引き離したんだけどな。
リリーは悪くないからな。
「こんな所で迷子になって、魔獣ならまだしも、男に襲われたらどうするつもりなんだ!!」
セドリック、たまには良いことを言うな!!
魔獣より男の方が厄介だからな······。アダンなんか典型的に厄介な奴だからな。
······そう、アダン!リリーに謝らなくては。
「「申し訳」ない」ありません」
わぁー!俺達、気が合うのか?リリーとハモってしまった!!嬉しい!!
「あっあの、私······」
「済まない。その者は俺の従兄弟でアダン・グリストフだ」
キョドキョドしているリリーも、小動物のようで、庇護欲が出てくる。
リリーが急にハッとして、優雅なカーテシーをした。
「マリユス・メヌール王子殿下、アルベール・シルフィード公爵令息様。このような状況でのご挨拶になり、申し訳ございません。私わたくしノベトリー伯爵家の娘。リリス・ノベトリーと申します」
こんな時に律儀に挨拶をするなんて。ノベトリー夫人の教育の賜物なのか、素晴らしいカーテシーだった。
可愛い上に挨拶も完璧だなんて、流石、俺のリリーだ。
「わぁー!リー!!ちゃんと挨拶が出来て偉いね~!!」
セドリックうるさい。後、頭を撫で回して抱きつくな!!
そんなセドリックを見てハハッとユリウスが笑っている。
「ハハハッ······色々と気にしないで~。全部わかってるから~」
そう、全部分かっていることで、進めていったんだから······。
最後まで読んで下さって、ありがとうございます。