アルベールside9
あれから色々と策を練ってから、話し合いの場を作って集まってもらった。
話し合いの場は王宮の一室を借りて、俺は勿論の事、俺の両親とリリーの両親、ユリウスと何故か陛下もいた。
しかも、とても良い笑顔で座っていたので、誰も触れないでいる。
策としては、リリーが学園に入学する前にアダンを拘束したい。入学してしまったら、接触する機会が増えてしまうからだ。
リリーに近付くことは絶対に許したくない。
だか、入学前に誘き寄せるには、何かしらの機会を別で設けなければならない。
リリーはまだデビュタントしていないので、夜会で嫌な思い出を作って欲しくない。
ならば、昼間のガーデンパーティーを開くことにする。
それもシルフィード公爵家で開くとなれば、リリーも参加しやすいだろうし、此方としてはテリトリーに入ってくれるので、色々と動きやすいし、管理しやすい。
何よりアダン自身が侵入しやすく、知っている場所故に油断をしてくれる。
リリーが来ているとなれば、アダンは必ず侵入してくる。あいつには、然り気無く情報が入るように叔母上に操作してもらう。叔母上にはパーティー当日は、別室で待機してもらおう。
リリーには別の場所に誘導して、安全を確保しておきたい。
誘導や安全確保はジンにしてもらうので、安心して欲しい事を合わせて伝えた。
予想通り、反対したのはノベトリー伯爵、リリーの父上だった。
「うちのリーを囮にするなんて!!君は婚約者として失格だ!!やっぱり、リーは他所には出さない!!」
「······」
当然の意見だ。
今日、初めてお会いしたが、ノベトリー夫人と比べると小柄な男性で、リリーのお父上は可愛らしい雰囲気の方だった。
何より、見た目がリリーとそっくりのお父上なので、リリー本人に言われている気がして、突き刺さるものがある。
「······あなた、何を言っているのですか?」
「だって~!リーが囮だなんて······うっうっ······」
「······お拭きなさい」
リリーのお父上を泣かしてしまった······。それを見て動揺しているのは俺とユリウスだけだ。
ここに居る親達は何も思わないのか?
「······エルは学園の頃から変わらないな~」
「お父様、知り合いなんですか~?」
陛下の言葉にユリウスが反応して、聞いてくれた。
「あぁ~。お前達は知らなかったのか~。ノベトリー伯爵は私達の一つ下でな~。それは可愛がっていたのだよ~」
「んっ?では、此方にいらっしゃる大人は皆さん、学園で一緒に過ごした時期があったという事ですか~?」
「そうだ~。ノベトリー伯爵夫人は三年で、私とベルンハルトが二年、エルドールが一年だったな~。いやぁ~懐かしいなぁ~。ハッハッハ~」
成る程、交流があったからこんなに気安い雰囲気なのか?
「······懐かしい話はさて置き、私はアルベールの案で進めていくべきだと思うぞ」
「うっうっ······ハル先輩は娘がいないから、僕の気持ちがわからないんだぁぁっ······うぅっ······」
「お前な······それを言うか?うちに嫁いでくれる子なのだから、私の娘も同然だからな」
「違うぅ~!!リリスは僕の娘なんですぅ~!!お嫁になんて出さないぃ~!!」
それは困る。本人は知らされていないが、婚約だって済んでいる。
何よりもリリーは、俺と結婚するのは確定しているのだから。
「リリーとは結婚させてもらいます」
「~っ!アルベールくん!!まだ僕は許してないんだからね~!!」
「リリー自身を俺が愛しているので、お父上は関係ありません」
「関係あるもん!!ノベトリーの当主である僕がダメって言ったらダメなんだから~!!」
それもそうか······。では、リリーのお父上より上の者から言ってもらえば良いだけの話になる。
「······分かりました」
「えっ!ホント?分かってくれたの~?じゃあ~リリスとは結婚しな······」
「陛下からの王命にしてもらいます」
「えっ!?」
「んっ?私のか~い?」
それでスムーズにいくのならば、是非、陛下にお願いをする。
リリーと結婚出来るのならば、苺の献上でも、ユリウスの側近にでも何でもなる。
「ジェイ先輩ダメー!!ジェイ先輩が言ったら僕は逆らえないですぅ~······うっうっ······」
「おいおい、泣くなよ~。私がエルの涙に弱いの知ってるだろ~」
陛下なんだから、泣き脅しされて落ちないでもらいたい。
ーーバチン!!
急にノベトリー夫人の扇子の音がなり、ピタリと会話と涙が止まった。
「いい加減になさい」
「うぅっ······だって~、ルチアナさぁ~ん······」
「はぁー。揃いも揃って······。陛下、一国の王が友人の涙に絆されてどうするのですか?」
「はいっ!面目ありませんっ!!」
「シルフィード公爵様、泣いている相手をあおっても話にはなりませんよ?」
「はいっ!冷静になります!!」
「エルドール、涙はいりません。話が出来ないのならば、出てお行きなさい」
「はいっ!泣きません!!言うこと聞きますから居させて下さい!!」
「「······」」
「······ルチアナ様、素敵~」
逆らってはいけない。
ノベトリー夫人が誰よりも一番上の者であることが、俺もユリウスも分かった。
「私は、アルベールの提案で進めていけば良いと思います」
「ありがとうございます」
「そろそろ、動き出しても良い時期かと思っていたし、色々と抱えていたようですからね」
「······」
俺の気持ちを知られていたのか······。
「では、皆さん宜しいですね」
「「「「「はい」」」」」
「······はぃ」
「······エルドール。帰ったら納得が行くまで話ましょう」
「······はぃ」
ノベトリー伯爵はまだ納得がいかない様子だったが、夫人がきっと何とかしてくれるだろう。
「······幼い頃から鍛えてきて、アルベールならばリリスを任せられると思っています」
「はい!!お任せください!!」
ただ稽古をつけていただけでなく、分かってくれていたのか。
「シルフィード公爵夫人。この件の後、リリスを公爵家で預かってもらえるかしら?」
「勿論です!!お任せください!!」
「ありがとう。アメリア」
「~っ!!幸せ~!!」
昔から思っていたが、母上もノベトリー伯爵夫人に助けてもらって以来、かなりのめり込んでいるな。
取りあえず、これで俺の案には了承を得られたので、進めていける。
絶対にリリーを守る。
ーー帰り際。
「ジン、リリスを頼みましたよ」
『なんでいるのバレてんの~?まぁ~いいけど~』
「あなたとアルベールならば、リリスを守れると期待しています」
『??今回の件?守るよ~』
「······よろしく頼みます」
そんな話をしていたのを、俺は知らない。
最後まで読んで下さって、ありがとうございます。
リリス達のお父さんをやっと出すことが出来ました。