アルベールside8
「物騒だな!!」
「······もう野放しにはしない」
「誰をだ?」
「······アイツはリリーの素性を直ぐに調べ上げるだろう」
『お前んとこは、ねちっこいのばっかだもんなぁ~』
「······」
否定はしない。自分でも自覚しているからこそ、従兄弟がどう出るかくらい分かる。
アイツは詰めが甘いだけで、行動力は人一倍ある。だからこそ、リリーに近付けさせたくない。
「ん~そうだな~。律儀に約束を守るストーカー幼馴染みの為に作戦を考えようか~」
「ストーカー??どういう事だ?」
「······」
「アイツがストーカーになってんのか?」
「······」
ユリウスは俺がリリーと接触できないでいたことも含めて、もどかしく過ごしていたのを分かっていたようだ。
『オレはストーカーの片棒担がされてんのか~』
「誰がストーカーなんだ??」
「リック~。リリス嬢の安心安全第一だよね~?」
「当たり前だろう!!うちの家族は皆、リリス最優先だ!!」
「よ~し!リリス嬢の為にもアルの為にもやるぞ~!!」
「えっ!?何でアル??」
言いたい放題だな。
まぁ、今後はセドリックの扱いはユリウスに任せよう。
ユリウスはまず、ノベトリー夫妻に今回の件話して、一緒に進めていくべきと言った。
勿論、シルフィード公爵家の親戚相手という事で、俺の両親にも話をする。
だか、恐ろしい事にユリウスはリリーを囮にすると言い出した。
それについては、俺とセドリックは大反対した。
「リーを囮にするだと!?ユースは悪魔なのか!?」
「えっ~だって~丁度目をつけられてるんだから良くない~?」
「······リリーに何かあったらどうするんだ!?もし、傷付きでもしたらユリウスだろうが許さない」
「アルの言う通りだ!!」
俺も力が入って殺気だった。
珍しく、ユリウスが真剣な顔を此方に向けてため息を着いた。
「ふぅー······アル。それだとお前は、リリス嬢を守りきれないと言ってるんだぞ?」
「「!?」」
ユリウスの言葉にハッとした。確かに俺が守ってやれば良いだけの話か······。
「この状況を打開したいのであれば、リスクも承知で動くべきだと思うぞ」
「アルじゃなくて、兄の僕が守ってやる!!」
「······」
「はぁー······。リリス嬢本人は勿論、周りから見たら君たちは知り合いでもなんでもないんだぞ」
「······」
ユリウスの言う通りだ。
リリーと俺は両家と書類上は婚約者だか、限られた人しかその事は知らない。
当のリリーには婚約を伝えていないし、あれから俺とは会っていないので、覚えていないだろう。
何なら今のリリーも、俺の存在を知らないかもしれない。
このままで良いなんて思わない。早くリリーに俺を見て欲しいし、俺がずっとリリーを守りたい。
「······分かった。ここからは俺が仕切らせてもらう」
「友人として当たり前だから~」
「まぁーいいけど!リーの安全第一だからな!!」
『オレいるし~大丈夫だぞ~』
「あぁ······」
幼い頃の俺と違って、今は友人と呼べる者が出来ていた。
他人と関わるのがあんなに億劫だったが、リリーと出会ってからは俺自身も驚く程、他人と過ごすようになり、忖度なく助けてくれる友人が出来ていた。
進む為には、友人がくれたチャンスを絶対にモノにする。
「セドリック、ノベトリー伯爵夫妻と内密に話が出来るようにしてくれ」
「分かった」
「公務以外にやる事が出来たなぁ~」
「······すまない」
王子であるユリウスが公務で忙しいのは知っている。学園の合間に視察に行ったり、書類に目を通したりしているのを俺も手伝っている。
だから、ユリウスを煩わせるつもりはない。
「ユリウス、お前には迷惑掛けないように······」
「な~に言ってるの~?こんな面白い事~。陛下お願いして、優先させてもらうに決まってるじゃ~ん」
「······」
陛下か······。あの親にしてこの子ありと言うくらい似ている親子。
俺とユリウスの父親同士も同年で、学園前からの旧友だと聞いている。
陛下に苺を献上しに王宮へ行った際も、父上と陛下が談笑していたが、陛下もユリウスもやたら絡んできていたな。
多分あれは······
「アルを揶揄えるしなぁ~」
「······」
「ユースはよくアルを揶揄えるな······。こいつキレると恐ろしいのに······」
そうだと思った。
ユリウスと陛下は俺達親子を揶揄う機会を伺っていた。
揶揄われても何とも思わないので、特に気にしないが、度が過ぎると此方も黙っていないのを分かっている。
だから、そこは線引きしていて、一線は越えてはこない。
気心が知れてる仲と思っているので、良しとする。
「······お前達がいてくれて良かった」
『「「!?」」』
『熱でもあるのか!?冷たい風で冷やしてやるよ!』
「······」
「······何か変な物でも食べたのか!?」
「······」
「何言ってるのジン、リック。明日は王都に魔獣が押し寄せて来る日なんだよ!」
「······お前ら」
「あっはは~。冗談だよ~。少し力抜きなよ~」
「!?······あぁ」
気を許せる友人が居て本当に良かったと思えた瞬間だ。
幼い頃の俺のままだったら、こんなに自分を思ってくれる友人は出来ていなかっただろう。
君は知らないだろうけど、きっかけはリリー。
早く君の近くへ行きたい。
だから必ず君を守って、ノベトリー夫人にも認めてもらう。
最後まで読んで下さって、ありがとうございます。
何だかんだ仲良しな三人とジン。