アルベールside7
結局、アダンは『無音の間』から出た最初のうちは反省していた。
だか、暫くするとまた俺のふりをして誰かを誘っているようたった。
『アイツは一生なおんねぇ~だろ~なぁ~』
「まぁ~当のアルは無言だし~。女性に対して冷たい態度の公爵令息だからな~。騙してもすぐに気付くのが大半で終わるし~」
この一年、徹底的に人が多い場所には行かず、女子生徒が近寄ってきても無言を貫いた。
何よりもリリー以外の令嬢は近付いても欲しくなかった。
「けど、アルは"美しさで全てを虜にする!眩しすぎる公爵令息"として社交界でも注目の的だぞ!?」
「······」
社交界では噂好きの輩が、勝手に人の噂を広めている。いい迷惑だ。
噂の事もそうだが、ノベトリー夫人との約束もあり、他の令嬢に目を向けろの点から、夜会にも出席していた為に人目に晒される機会が増えてしまった。
他の令嬢に目を向けるというのは、自分でも守られてないとは思っているが、取りあえずノベトリー夫人からは何も言われていないので、夜会参加で向けられているという事でいいのだろう。
リリー以外に目を向ける気は更々無いけどな。
だが、時々不安になる。全くリリーとの接点を持たせてもらえないでいるからだ。
本当にノベトリー夫人は、俺をリリーの婚約者として認めているのだろうか。
リリーの事はセドリックから話か、ジンからの日々の報告を聞くか、リリーがこっそりと街へ行った時に影から見守るくらいだ。
彼女の好きな物や興味がある事、使っている物などを調査したり、似合いそうな物購入して揃えるが、プレゼントする事は出来ない。
こんな些細な事しか出来ずにいる日々がもどかしい。
そんな事を考えていると、ジンが言った。
『あっ、アル。リリスが"パティスリー・ブリーズ"へ行ったぞ~』
「あっ!そう言えば、今日は新作を買いに行くって言っていたな!」
「今話題のパティスリーだっけ~?」
その"パティスリー・ブリーズ"は苺の新作を度々販売している店だ。
「帰ったらリーは分けてくれるかな?」
「セドリックは食べるな。リリーだけが食べれば良い」
「あ"ぁ~?僕が食べても良くないか!?」
「駄目だ。リリーならいい」
「······もしかして~、アルの家がオーナー?」
「そうだ」
「うわぁー!!リーの為か!?苺が好きで、甘い物好きだからか!?その為に店まで出したのか!?」
「······」
セドリックは何を当然な事を言っているのか。
リリーが好きな物の中には、甘い物が当然入っている。彼女が安心して購入できる店を作るのは当たり前だろう。
パティスリー・ブリーズもその一つ。店で出している商品で使われている苺は、勿論うちの公爵家で作られた苺だ。
「あははぁ~。凄いなぁ~、ははっ~おっも~い、ふはは~」
「リーを思ってならそれくらい······いや、でも······」
『リックも大概シスコンだよなぁ~。まぁ~アル程、過保護じゃないけどなぁ~』
「ジン、リリーの様子を見てきてくれ」
『へいへ~い』
リリーが店で何を気に入って購入したのか、何を話してどんな仕草だったのかをジンと店の販売員に聞かなくてはいけないな。
邸に帰ってからの楽しみが増えた。
午後の授業が早く終われば良いのに、と思いながら授業を受けるとは、浮かれていると自分でも思う。
『おい!アイツがリリスに目を付けたぞ!!』
「!?」
ガタン!
「ど、どうしました?シルフィード君······?」
しまった。俺としたことが、動揺して授業中だという事を忘れていた。
「······先生、そこスペル間違いです」
「んっ?あ~、本当ですね~。ありがとうございます」
「いえ······」
アイツか。······アダン。今日は学校に来ずに、街を彷徨いていたのか。
浮かれていた所から一転して、怒りに支配された。
あいつをどうしてやろうか······。
ーーカーンカーン。
怒りのまま授業は終わり。動揺して立ってしまったミスも誤魔化せた。
さて、早く帰って捕らえなくては······。
「「アル!!」」
「······」
「お前どうしたんだ!?」
「明らかに動揺したって事は~、リリス嬢に何かあったな~」
「何!!リリスに!?」
「······」
こいつらは誤魔化せなかったか······。いつも一緒に居るからか、俺の様子が変なのに気付いたようだ。
「······話す部屋を変える」
「じゃあ~、ランチする部屋へ行こう~」
部屋を移動して、ジンの力で外部に漏れないように音を遮断させた。これなら問題ないだろう。
「どーいう事だ!!リーに何があった!?」
「ジン」
『オレがパティスリーへ行った時には問題なくて~。リリスはいつも通りスイーツを買っていたんだけど~。店を出て来た時にアダンと偶然遭遇したんだよ~』
大方アイツは俺のふりをして店の近くを彷徨いていたんだろうが、リリーにまで接触するとは······。
「リーは大丈夫なのか!?」
「リック、落ち着けよ~」
『直接何かあったわけじゃないんだよ~』
「なんだ良かった······。絡まれたりした訳じゃないんだな!」
「······」
絡まれたり、触られてないから良いわけではない。アイツにリリーの存在が知られた事が良くない。
『ってか~リックんとこの侍女スゲーよ~!!鉄壁だな~』
「レティアだな!リーの為なら······」
「潰す」
「「『!?』」」
従兄弟だろうが関係ない。リリーに近寄る事が罪だ。
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