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アルベールside6

 今回は少し短めになっています。



 その日帰ったら、父上に書斎へ呼ばれた。

 

「お帰りなさいませ、アルベール様」

「あぁ、ただいま」

「旦那様が帰られたら書斎へ来るようにと」

「分かった」


 ーーコンコンコン


「入れ」

「お呼びという事でしたが、何でしょう」


 珍しく俺よりも早く帰宅していた父上。そして、母上と向かい合ってお茶をしている伯母上。

 三人が揃っているという事は、昼間の学園での話がジンを通して伝わったのが分かった。


「久し振りね、アルベール。見ない間に益々、兄さんに似てきたわね」

「ご無沙汰しております。メリネッタ叔母上」

「も~畏まらないでよ~。あまり愛想がないと令嬢達に嫌われるわよ?」

「······」

「やぁ~ねぇ~メリーったら!アルベールはリリス嬢さえいればいいんだから~」

「そうだったわね!」

「「うふふふ~」」


 毎回挨拶のように恒例になってるこのやり取り。父上を見ても、ニコニコと母上と叔母上を見ているだけだ。

 俺はからかわれるだけなので、早くこの部屋を出たいが、まだ話さえも始まっていない。

 こちらから切り出して終わらせ、早く温室へ行こう。


「もう良いでしょうか?」

「良いわけないだろう。昼間、ジンから話を聞いた為、こうして集まったのだろうが」

「もぉ~冗談が通じない子ね~」

「冗談くらい言えないと、慕ってくれる令嬢いなくなるわよ~?」


 あぁーもう絡まないで欲しい。早く苺の様子を見に行きたい。


「はぁー、そうですね。俺はリリー以外の令嬢に慕われなくて結構。叔母上は、ご自分の息子のやっている事が冗談では済まないという事だと理解して下さい」


 この大人達は時間を無駄にし過ぎだ。少し苛立ちながら言ってしまったが、このくらい言っても許されるだろう。


「「「!?」」」

「そうだな······。アルベールの言う通りだ。二人共、遊びが過ぎるぞ」

「あら、ごめんなさい。つい、からかいたくなっちゃうのよ~」


 父上は俺の思っている事が分かったようだ。おかげで話が進みそうだが、母上は俺をからかって何が楽しいのか。


「貴方の言う通り、アダンが本当に迷惑を掛けて申し訳なかったわ······」

「起こった事は仕方がありません。対処と今後どうするかを聞きに来たまでです」

「ふぅー。何でこんな事したのかしらね······幼い頃は本当にアルベールもアダンも双子の天使のようだったのに······」

「今回はその見た目が原因だったな······」

「アルベールは見た目は良くても性格がねぇ~」

「······」


 真面目に話しているのに、母上はどれだけ俺を茶化したいのか······。こんな面倒な事よりも、リリーが今日一日どう過ごしていたかの報告をジンに聞きながら、苺の世話をする方が大事だ。


「アルベールが何かするような事はない。全てこちらで何とかする。もう手筈は整っている。ノベトリー伯爵家にも話はしてある」

「ありがとうございます。では、これで」

「もういいのか?詳しくは?」

「後程、ジンから聞きます」

「では、父上、母上、叔母上失礼いたしました」

「······あっ、あぁ······」


 俺は一礼して書斎をあとにした。

 温室で苺の手入れをしながら、リリーの今日の様子をジンから教えてもらったついでに、先程の件についての結論を報告してもらった。


 アダンが声を掛けたイリス・ハーベル侯爵令嬢は、俺に釣書を何度か送ってきていたそうだ。


 いくら内密にしているからとは言え、五歳からリリーと婚約が成立している以上、受けるわけがない。


 そして、学園入学後に俺と特徴が少し似ているアダンが偶然声を掛けたのが、イリス・ハーベル嬢だった。

 ハーベル嬢も始めのうちは俺だと思い込んでいたようだが、途中で違う事に気付いていた。


 しかし、知らぬ素振りのままアダンが騙したのを逆手に取って、本当の俺にすり寄ってきた。

 ハーベル侯爵から父上に"弄ばれた責任を取って婚約しろ"と手紙がきたそうだが、真実の内容とその証人が王族であるユリウスなのだから、相手は引き下がるしかない。それ以上は何も言っては来なかった。


 爵位と見た目の両方で寄ってくる他人には嫌悪しかない。媚びる目が穢らわしい者ばかりだ。

 特に学園に入ってからは、女子生徒が近寄ってくるのが目に見えて増えた。


 俺にはリリーしかいらない。あの綺麗な輝く青い海のような瞳が見たい。


 まぁ、アダンに対しては叔母上も相当お冠なので、シルフィード家にある拷問部屋の一つ『無音の間』へ一日入れる事になった。

 無音の間なので、音が一切しない部屋。勿論、自分の出した音や声、外からの音も全てが聞こえない作りなので、ジンの力を借りている部屋なのだ。

 アダンの反省を促すために入れる事になったそうだ。

 音の無い世界なんて、不安でしかないだろう。孤独との戦いだ。これを機に反省すると良いのだか。


 それはどうでもいい。此方側が被害に合わなければ良し。


 この荒む心の癒しはリリー。あぁ、リリーに会いたい。





 最後まで読んで下さって、ありがとうございます。

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