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アルベールside4



 全てがスムーズという訳ではなかったが、俺とリリーの婚約は両家の話し合いと書類提出もトントン拍子に終わった。

 少しリリーのお父上、ノベトリー伯爵がごねたようだが、夫人の一声により渋々承諾してくれたと聞いた。


 俺はというと、婚約が整うまでの間はノベトリー夫人から訓練を付けてもらえないので、シルフとのコミュニケーションを取るようにと、夫人から言われていた。


「改めて、よろしくお願い致します。アルベール・シルフィードです。アルと呼んでください」

『そんなに畏まらないでくれよ~。オレはジンって言うんだ~。ジンって呼んでくれ~』

「分かった、ジン。この前、聞き途中だったんだが、彼女の所へも遊びに行ってたっていうのはどういう事なんだ?」

『ん~?あぁーあの、恐ろしい母親の子ね~』

「······恐ろし······ノベトリー夫人か」


 ノベトリー夫人は精霊に恐ろしいと言われる程の人なのだな。


「俺はシルフの血筋だから分かるんだが、リリーは違うだろ?」

『そう言えばそうだな······ん~······居ると心地良いというか、何か気になると言うか······何でだろ~?』


 何かリリーにはあるのか?ノベトリー夫人もシルフが見えていたし。

 でも、悪い方での気になるではないようなので、シルフ自身も分かっていないようだ。これ以上詮索しても今、答えが出るものでもなさそうに思えた。


「そうか。俺は見えなかった時から、時折そよぐ風で近くに居るのは何となく分かってた」

『そうそう~。お前が生まれた時も側にいたんだからな~』


 シルフは嬉しそうにクルクルと回りながら浮かんでいる。

 本当に不思議な存在だとまじまじと見ていた。

 改めて、シルフの力の範囲はどれくらいなのかを把握しないといけないと思う。


『んっ?な~に?』

「ジンの力を借りて、やりたい事があるんだが······」

『勿論、貸す~何がやりたいんだ~?』

「······」


 下らないとか、そんな事に力は貸さないとか言われないかな······。


『なに~?』

「······育てたい作物があるんだ」

『いいよ~♪』

「!?······そんなことに?って言わないのか?」

『何で~?』

「祖父や父上みたいに国を守るために使う訳ではないし······自己満足というか、欲望を満たすための手段というか······」


 代々シルフィード家はシルフの力を借りて、魔石に風の精霊の力を込めたり、この国を囲む風防壁の緩み修繕をしているのに、自分がリリーに好かれたい為にシルフの力を使って良いものか。


『元々、精霊は自然の存在なんだから、そういう事に使えるのは嬉しいよ~』

「いいのか······?」

『何育てんの~?楽しみぃ~♪』

「実は温室を使って······」


 俺はジンの力を借りて温室の温度管理に成功し、土の精霊がいるノーム家の土と肥料を用意して、水の精霊がいるウンディーネ家からは作物に最適な栄養の入った水を定期的に購入し使うようにした。

 時期をずらし改良を重ねて、通年通して品質の良いもが一定量採れるようになるまで八年かかったが、自分でも満足がいくものが出来上がった。


 その中でも最上級のものが"リリーズベリー"。大きくて甘い、リリーの為に作った苺だった。

 本当は出来てすぐにリリーに食べてもらいたかったし、俺の手で食べさせたかった。それはノベトリー夫人との条件があったので我慢した。


 直接会えた時にすればいい。それを糧に俺は全てをやり遂げる。


 両親は俺がここまでするとは思っていなかったようだが、やりたいようにやらせてくれた。何なら、苺をブランド化して貴族に販売していた。

 

「アルの考えた栽培法を他の作物でも作って販売しましょう!」

「そうだな!技術も国に登録して、栽培法も広めていこう!ノーム家とウンディーネ家にも話をして進めるぞ!」


 公爵家だが、商魂逞しい親だった。


 あまり仲良くなれないだろうと思っていたノベトリー兄弟は、夫人の訓練を通して交流して思った以上に距離が縮まった。


 述べなくては家の庭にいた一角兎は、夫人が放っていたそうで、他の種類の小型魔獣も庭に放って、息子達の訓練に使っていた。

 ノベトリーの邸には、庭師含めた使用人達は仕留められる者しか雇っていないそうで、魔獣は夫人自らが管理していた。

 

 夫人との訓練はリリーに会わないように時間をずらしたり、公爵家や夫人の実家のアルバディスにも何度か行って訓練もした。

 アルバディスの隣は火の精霊がいるエフリート家の領地もあり、アルバディス家とは親戚になるそうだ。

 親戚なので、魔物討伐の協力関係もしある。夫人の訓練にも何度か参加していた。


 エフリート家の次男は俺とセドリックと同じ歳だった為、何度か顔を合わせて訓練したが、お互い気が合わなかった。

 俺は何とも思っていなかったが、リリーが俺と入れ替わりで来ていた時もあり、あいつはリリーと会えるのかと思うと嫉妬する時もあった。


 俺がリリーの為に作った苺があると知ったノベトリー兄弟は······。


「アルベールが作ったのか!?俺の妹の為に!?~っだが、リリスは渡さん!!」

「確かにリーは可愛いし、愛らしい······色々やってやりたい······それでもアル、お前には渡さないからな!!」


 この兄弟も大概シスコンだと思う。

 でも、俺の方がリリーを愛しているが。


 ユリウスとは学園に入学する二年前に苺を献上した際、王宮へ父上と行った時に陛下に引き合わされた。


「あの苺は婚約者の為に自分で作ったのか!?重いし面白い奴だなぁ~」 

『オレもそう思うわ~』

「······」


 コイツら······。

 それ以来、何故かユリウスには懐かれていて、今ではセドリックも一緒になって行動するようになった。



 最後まで読んで下さって、ありがとうございます。

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