28話
私とアル様、ジン様とで話し合いをした結果、ハルお義父様とリアお義母様にまずは相談することになった。
全てを隠すのは私達だけでは、行き詰まる事が出てくるだろうという判断からだ。
アル様はあまり他人を頼らなさそうな方かと思っていたが、案外そうではなかった。
本人曰く「使えるものは親でも使え」と言っていた。でも、後でこっそりジン様が「アイツ面倒臭いことは人に押し付けるヤツだからなぁ~」と言っていた。
これも意外だった。色々なアル様を知れるのは、自分がアル様の特別な存在になったようで嬉しい。
いや、婚約者だから特別な存在かもしれないけど、まだそれを知って日が浅いから実感が沸かないのだ。
ーーカチャ
「落ち着いたかしら?」
「······はい」
あれから直ぐに、アル様と一緒にハルお義父様の書斎へ相談に来ていた。
ジン様が先に話をしていてくれたので、私達が行くとハルお義父様、リアお義母様もいてお茶を用意してくれていた。
書斎での話が漏れないように、ジン様が力を貸してくれた。
「光の精霊か······知れ渡ればリリスが狙われるな······」
「狙われるなんてダメよ!!」
「だから無かったことにするんです」
「そうね!無かったことにしましょう!!良い考えだわ~」
リアお義母様は賛同してくれた。ハルお義父様は少し渋っていた。
「その場しのぎは、只の時間稼ぎにしかならん。他の精霊達も分かっているのならば尚更、何か対策をせねばならんな······」
私と関わったせいで、シルフィード公爵家の皆さんを巻き込んでしまっている。
「······ごめんなさい」
「リリーが謝る必要はない」
「そうよ~。リリスちゃんはもうお嫁に来たも同然なんだから~。楽しく生活するために話し合うのは謝ることじゃないわ~。もぉ~!!あなたが変な言い方するからよ~!!」
私の話だったのに、ハルお義父様はリアお義母様に凄く怒られてる。
「すまない。リリスを傷付ける言い方になってしまったな······」
「いえ、心配して下さっているからこそ、だと思っています」
こんなにも心配してくれて、親身になってくれる公爵家に迎え入れられて本当に有り難い。
『ハル。オレも今は無かったことにすればいいと思うぞ~』
「······しかし」
「あなた。少なくとも、ルチアナ様はこの事に気が付いていたのではないかしら。だからこそ、うちに預けてくれたのではないの?」
お母様は何か知っていて、ハルお義父様に話をして預けた?
「······ノベトリー伯爵夫妻からは、リリスに何か力があるとは話していた。だが、それが何かは教えてはもらえなかった」
お父様もお母様も気付いていたのね。全然知らなかった。
「では、ノベトリー夫妻と同じように、無かったことにして過ごしましょ~」
「「えっ?」」
「母上、そうしましょう」
ハルお義父様と私は目が点になった。まさか、アル様とリアお義母様の意見が一致するなんて······。
「だってそうでしょ~。今までもそうだったんだから~。これからもそうすれば良いのよ~」
「いや······」
「もぉ~。あなたは難しく考えすぎよ~。どういう状況でも、日常を憂い無く過ごして欲しい親心はあなたも分かるでしょ?」
リアお義母様格好いい。
不安な気持ちが一気に吹き飛ぶ程の言葉で、ハルお義父様を説得した。
「······そうだな」
「じゃあ~皆で知らん顔よ~。そして、何かあれば必ず助けるから大丈夫よ~」
アル様はぎゅっと私の手を握ってくれた。安心感のある綺麗な瞳を向けられる。
ブワッと風が吹き抜ける。
「······隠すしかないな」
「親の役目よ」
「そうだな」
本当に素敵なお義父様とお義母様だ。
「ねぇ~学園も後一週間もしないうちにはじまりますし~ベルリックにも協力してもらいましょ~」
「······」
「ふむ。そうだな。今年度は珍しく四大公爵家が学園に揃う年だからな······」
そうなんだ。四大公爵家という事は、精霊も四大精霊が揃うという事かしら。
「じゃあ~早速、ベルリックをここに呼んで頂戴~。後、ルチアナ様にも報告しないといけないわねぇ~。ジンちゃん、よろしくね~」
『相変わらず精霊使いが荒いよね~』
「だって~使えるものは使わなきゃ~。ジンちゃん行かないの~?」
『······行くよ』
「お願いね~」
今までアル様はハルお義父様と似ていると思っていたけど、今日のやり取りを見ると、リアお義母様にも似ているわ。
アル様は、間違いなくこの二人の子だと思った。
ジン様の呼び出しで直ぐに、ベル様も書斎に来てくれた。
事の次第を話すと快く引き受けてくれた。
「勿論協力するよ~。リリスちゃんに何かあったら、兄上が発狂しちゃうし~。そんな事になったら誰も止められないや~」
言い方が少し楽しんでいるように聞こえたが、ベル様は構ってちゃんのブラコンだから仕方ない。
「······俺が居ない時にリリーを頼む」
「うぇっ?う、うん······」
ベル様の顔が一気に赤く染まって、照れているのが良く分かった。やっぱりブラコンね。
来週から始まる学園生活はどうなるのかしら。
入学前に不安や心配な気持ちになるが、アル様がついて居てくれるし、何とかなる気がする。
恋愛については叶った。
だから次は、友人作りを頑張ろう。
アル様やお兄様達の様な、素敵な友人が出来るといいな······。
最後まで読んで下さって、ありがとうございます。
一旦、ここで区切りをつけました。
この後、アルベールsideを入れていきます。