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26話



 取りあえず誤解が解けたので、私が気になっていた事を聞こう。

 だって、そのためにアル様を探していたのだから。


「アル様、私お聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」

「······何だ?」


 アル様は急にぐっと表情を変えて、真っ直ぐに私を見た。


「私とアル様の関係についてなのですが······」

「政略結婚ではないからな!!」


 勢い良くアル様は私の発言に反応して、両肩を掴んだ。


「······は、はい。その点については、ハルお義父様からお聞きしました」

「父上から聞いた?んっ?ハルお義父様?」

『おい、それ聞いてたら話が進まね~よ』


 アル様は、ハルお義父様と言う呼び方に引っ掛かったようね。でも、ジン様の言う通りで、進まなくなるので今は話を流します。


「私も勘違いしていたようで、アル様とは政略結婚ではないかと思っていたのです」

「違うからな!」

「はい。それをハルお義父様から聞いたのですが、どうしてアル様程の方が私なんかに······と思ってしまって······」


 私の中では今もまだそう思っていて、でも政略結婚するのにうちにはメリットあれども、シルフィード公爵家にメリットはないように思える。

 今の所は、うちのお母様に脅された説が一番有力なのだ。


「······俺は自分が望んでリリーと婚約をしてもらったんだ!!」

「えっ?えっ?昨日が初対面では?!」

「······リリーが三歳の頃に一度、君の家の邸で会っているんだ」

「······三歳の頃」


 そんなに前?三歳の頃なんて覚えてないな······。断片的になら覚えてる事もなくもないけど······。


「あの頃は外には行かなかったから、母上に無理矢理連れていかれた。でも、そこでリリーに会ったんだ。君が作ったジャムサンドクッキーも一緒に食べた」

「えっ!?」


 そう言えば三歳の頃、ジャムサンドクッキー作りをよくやっていたと聞いたな······。

 シェフが作ったクッキーに苺ジャムを塗って挟むだけのやつね······。


「その時、リリーが甘くて大きい苺が一番好きだと言っていたから、育てることにしたんだよ」

「······私が好きだから、ですか?」

「あぁ······」


 三歳の私が好きだと言ったものを育てるなんて、五歳のアル様の発想力と行動力が凄いかも。

 そんな三歳の子の発言をそのまま今もやっているアル様の気持ちって······。


『おい~アル~。そんな言い方でいいのか~!?ハッキリ言えよ~。リリスには伝わんないぞ~』


 要所要所で促してくれて、ジン様は本当に有り難いわ。乙女心が分かっていらっしゃるのかしら。


「······~っ。分かっている!!」


 ニヤニヤしながらアル様を見て、フワフワ浮かんでいる。


「······リリー」

「はい······」

「幼い頃に君に会った時、その綺麗な瞳は、澄んだ青空や輝く海の水面のように美しくて、俺は心惹かれた。政略結婚ではなく、ただ君を愛しく思っているんだ······リリス······。リリー!?」


 ーーブワッ。


『!?』


 いきなり風が吹く。その瞬間、涙が溢れ出てくる。


「なっ、なっ泣かないでくれ」

「~っ」

『······』


 嬉しすぎて涙が止まらない。


「~アルさまぁ~っ。わっ、わたっしっっ、も~すっ、きぃ、でっすぅ~」


 感情が先に出すぎて、上手く言葉の方が出てこないが、何とか伝えられた。


「······ありがとう」


 フワフワ、そよそよと風が吹く。何て心地の良い風が吹くのだろう。

 きっとジン様は、今まで気持ちの良い風を吹かしてくれてたんだ······。


 アル様と私は抱きしめながら、幸せを噛み締めていた。


「······俺はあまり他人と話をするのが上手くないが、リリーには何でも話をするから」

「はい。たくさんお話ししましょう。······私も先走らないように気を付けます!!」


 恋愛結婚が良いと思っていたけれど、これは恋愛結婚になるのかしら?

 アル様は私を好きになってから婚約してくれているので、恋愛結婚になるとおもうけど、私の方は婚約後の恋愛になるのかしら?

 でも、婚約を知らさせる前に好きになってるから恋愛なのか······。


 まぁ~幸せならば、どちらでもいいか。


「リリー。俺がどんなに君を愛おしいと思っているか知っても、嫌いにならないでくれるか?」

「嫌いになんてなりませんから!私の方が好きが大きいかもしれませんよ?」

「いや······俺の方が······」


 アル様は何か言いかけたが、途中で止めてしまった。

 そう言えば、フワフワ気持ちが良い風がずっと吹いているからか、ジン様は難しい表情で静かにしている。


「ジン様、ありがとうございます」

「ジン。色々と気に掛けてくれて、ありがとう」

『······あっ、いや』


 どうしたのかしら?ジン様なら間を取り持った甲斐があったと、大喜びしてそうなのに。


「どうした?もう風を止めてくれていいぞ」

『······止めれない』

「「??」」


 風の精霊が止められない風なんてあるの?


『······オレは風を吹かせてない』

「どういう事だ!?お前じゃなかったら誰が!?」


 二人共、少し焦った喋り口調になっている。もしかして、有り得ない事なのかしら······。

 ジン様とふと、目が合った。


『······リリスだ』


 何の事!?




 最後まで読んで下さって、ありがとうございます。

 読んで下さる方が増えると、嬉しいです。

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