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23話



 ルクセルに案内してもらい、アル様が手入れをしている庭へ向かった。

 歩いているとそよそよと心地良い風が吹いた。


 あぁ。またこの気持ちがいい風だ······。


 ふと、庭を見ると見た事のあるバラが咲いていた。ここも丁寧に手入れされていて、見応えのある庭だ。

 バラに目が行ったのに気付いたようで、ルクセルがバラについて教えてくれた。


「こちらのバラは、バラの砂糖漬けで使われたバラですよ」

「あ~。やっぱりそうだったのね!見覚えがあったの」


 こんなに綺麗なバラが美味しく食べれるなんて凄いな。


「実は、公爵邸のバラはベルリック様が手入れをしているのです」

「そうだったのね······」


 アル様は苺。ベル様はバラ。シルフィード公爵家は何か育てなきゃいけないのかしら?


「公爵家でそういう決まりはございませんよ」

「えっ!?私、声に出してました!?」

「何も仰ってはいませんでしたが、そう思っているのかと」


 驚いた。まさか思っていた事を口から発していたのかと思った。


「決まりがないという事は、お二人共、自主的にですか?」

「そうですね。アルベール様は幼い頃から外にはあまりお出にならず、お部屋に籠ってばかりでした。ベルリック様は自由に動き回られていましたが」

「それは想像がつきますね」


 想像がつくというより、あまり今と変わらないのではないかしら?


「ですが、アルベール様に転機が訪れ、それからは積極的に外に出られるようになったのです」

「······転機?苺栽培ですか」

「······そんなアルベール様を見て、ベルリック様は兄に構ってもらいたいと思い、バラの手入れをするようになったのです」


 二人はあまり仲良くなかったのかな? 

 うちの三人兄妹が仲良すぎるのは自覚がある。昨日の感じで二人はそうは見えなかったけど······。


「前は仲が良くないのですか?」

「仲が悪いわけではないのですが、距離があるという感じですかね。アルベール様が籠っていたので関わらなかっただけですね」


 育てる種類は違えど、共通な点での会話が出来るのは関わりが増えるという事ね。

 なるほど、ベル様はブラコンね!!うちのお兄様達と似ているわ。


「アル様が籠っているのは、想像付かないです」


 あれ程外の光にキラキラ照らされているのが、似合うのに······。


「昔のように籠って人と関わりたくないというのが出ないといいのですが······」

「······やはり、私とは関わりたくないのでしょうか······?」


 昨日から急に距離が出来たと思ったのは、気のせいではなかったのかな。


「······関わりたくないのではなく、関わるのが怖いのではないでしょうか」

「······怖い?」

「······男心は繊細なのですよ」


 んー。確かに、うちのお母様は動じない人だし、人様の屋敷でも寝られる私も図太い。

 お父様は刺繍が趣味で、お兄様達は甘い物好きとぬいぐるみ好きだから繊細かも。

 これは繊細なのか?


「······分かったような」

「はは······寄りの話にお付き合い下さいまして、ありがとうございます。······着きましたよ」


 ルクセルと話をしていたら、いつの間にか着いていた。

 ここがアル様が育てている、外の苺畑なのね。


「わぁ······。一面、苺畑······綺麗」

「こちらでお待ちください」

「······はい」


 ここの苺はまだ、実を付けてはいないのね。でも緑の葉がとても生き生きしているわ。


 アル様は本当に凄いな。




 ーーそよそよ······


 ふわっと風が吹き抜けたと思ったら······。

 あのマカロンくらいの大きさの白い光の球が、目の前でフワフワとしている。


「また会ったわね。あの素敵な庭園へ連れて行ってくれるの?」


 光の球は昨日と同じように、私の周りをくるくると回って誘っている。

 きっとまた、付いて来いと誘っているのだろうけど、私はアル様に会いに来ているので行けない。


「誘ってくれて、ありがとう。でもね、私はここに会いたい人がいて来たから、付いて行けないの······。ごめんなさい」


 光の球は私の言っている事が分かるのか、しつこく飛び回っている。

 意志が通じるとなると、何だか可愛く見えるわ。


「だから、ここに会いたい人がいて······」


 その時、背中を温かい何かに押されてる感じがした。振り返ると、背中辺りにフワフワと浮かぶ光の球。

 もしかして、私を押してるの??


 こんなに必死に押すくらいだもの、誘った先に何かあるのかもしれない。昨日の綺麗な庭園よりも素敵な場所なのかな?


「······分かったわ。あなたに付いて行くから」


 すると、背中の温かさが消えて、また目の前をフワッと飛んだ。

 取りあえず、公爵家の敷地内なのだから何とかなるだろうと思い、フワフワと飛んでいく光の球についていく事にした。


 後でアル様には会って、話をしよう。


 光の球はどんどん進んでいくが、昨日、通った場所ではなく、全然行ったことのない方向へ向かっている。


「ねぇ、待って!昨日の青い花の庭じゃないの!?」


 立ち止まって(光は立ってないか)ユラユラ揺れている。

 これは肯定なのか否定なのか、どちらですか??


 また、ぐるぐる回って進んだので、付いていくしかない。




 最後まで読んで下さって、ありがとうございます。


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