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19話


 



 仮だとしても婚約者として恥じない為にしっかりと学ばなくては。

 誰もが虜になるような公爵家嫡男の婚約者がこんなちんちくりんだなんて、アル様にもシルフィード公爵家にも迷惑を掛けてしまう。

 だから、アル様にはあまり近づかず、他の令嬢と仲良くしているのならば、邪魔をしないように心掛けよう。


「こちらです」


ーーコンコン、コンコン


「お連れ致しました」


 クルトに連れられてやってきた部屋には、アル様によく似た眩しい顔の紳士と穏やかな雰囲気でスレンダー美人が座っていた。

 それがすぐにアル様のお父様とお母様だと分かるくらいに顔と雰囲気が似ていた。


「ご招待頂きまして、ありがとうございます。リリス・ノベトリーと申します」


 失礼がないように、お母様直伝のカーテシーでご挨拶をした。


「顔を上げてくれ」

「あなたがリリス嬢ね」


 二人とも立ってこちらまで寄ってきてくれた。

 アル様のお父様は何処と無く声も似ているが、アル様の方が若干高いかなくらいで、お母様の声は透き通って綺麗だわ。

 うちの凸凹家族と違って、整いすぎてる家族だわ······。


「初めまして、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした!それなのに、滞在まで許可して頂いて、本当にありがとうございます」


 公爵家主催のティーパーティーを台無しにしたのだろうし、お兄様達含めてお母様までが押し進めてしまったのだろうから、家族代表としてしっかりと謝罪とお礼をしなくてはいけない。

 そうしないと、友人もいない、王都の邸にも領地にも帰らせてもらえない私には、今の居場所はここしかない。

 頭を下げているとふんわりいい匂いに包まれた。


「気にすることではないわ~。顔を上げてちょうだい」


 アル様のお母様が私を抱き締めてくれた。めちゃくちゃいい匂い!優しいお母様の匂いがする。

 ゆっくり顔を上げるとアル様とは違う美人の顔が近かった。


「ふぁいっ」

「やだぁ~可愛いんだけど!!流石!ルチアナ様の子ね~。ご挨拶出来て偉いわ~。私、女の子が欲しかったから嬉しいわ~。リリスちゃんって呼んでいいかしら~?あっ、私の事はリアお義母様と呼んでね~」


 あれ?見た目との違いが凄い。若い女の子が気分が上がって、興奮している感じの喋り方をしている。

 しかも、ぬいぐるみかのように、ギュウギュウ、グリグリと抱き締めて撫でてくれる。

 綺麗な方にされると嬉しいけど、この扱いはお兄様達を思い出す。


「アメリア、よさないか!」


 アル様のお父様。シルフィード公爵様が止めに入ってくれた。


「あらやだ、ごめんなさ~い。可愛くてつい撫で回したくなったのよ~」


 公爵様が一声掛けるとパッと離してくれた。一瞬アル様かと思ったくらい、そういう間に入る所も似ているのね。

 アル様も素敵だけれども、公爵様の方が落ち着いた立ち姿で、年齢を重ねているからか、威厳が違うように感じる。


「リリス嬢。妻がはしゃいでしまって済まない」

「いえ、撫でられるの嬉しいです」

「そうか」


 ニッと笑ってくれた時にドキッとしそうになったら、急に真っ暗になり視界が遮られた。


「あれっ?」

「「「······」」」


 気付いたらアル様の体にピッタリと顔を押し付けられていた。何故、そうなった!?


「あっ、アル様??」

「大丈夫だ。リリーが気にする事はない」


 いや、気にする事だらけですよ?公爵夫妻の前で急に言葉を遮るとか、抱き寄せるなんて······。

 アル様だって両親にこんな姿を見せるのは恥ずかしくないのかしら?


「······では、食事にしよう」

「そうね~リリスちゃんがいるから、今日はいつもより更に美味しいわよ~」

「?!」


 誰も何も言わないまま、この状況を流された。

 アル様も何事もなかったかのように離してくれて、席までエスコートしてくれた。

 そうなんですか。公爵家では、こんな感じで進んでいくのですね。

 郷に入っては郷に従えという事で、私も疑問に思わず従わなくてはいけないのですね。

 ふと、見ると一席空いている。まだ誰かきていないのかと気になったが、この事も誰も言わないでいるので、これも流すべきだと思い、何食わぬ顔をすることにした。


「あいつはまだ来ていないのか······」

「庭を使ったから仕方ないわよ~気になって仕方なかったみたいだもの~」

「あいつとは、弟のベルリックだ」

「······そうなんですね」


 これは気にしていい事だったのね。何を流していいのか、聞いていいのか難しい。


「そのうち来るだろうから、食事を始めよう」

「そうね~来なくてもあの子は大丈夫よ~」

「······」

「リリスちゃんは気にしないで~そのうち紹介するからね~」

「はい。分かりました······」


 その点は流すのか。そうよね······。私は親戚以外としか関わってこなかったから、各家庭で色々な事情はあるだろうし、知られたくない事もあるんだろうな。

 友人がいないから、何処まで踏み込んでいいのか分からないな。これは気を付けないといけないわね。


 アル様の弟ベルリック様が揃わないまま食事が始まった。


 公爵様とリアお義母様が今回のパーティーの事を色々と話をしてくれた。

 このパーティーで従兄弟を誘き寄せる為に、私がお取りになるのを私のお母様が許可していたという事。

 この件でお兄様達が暴れた(主にビクトルお兄様だけ)は公にはならないし、パーティーとは別での場所という事で、醜態にはならないそうだ。


 婚約者なのに会わなかった事に関しては、シルフィード公爵家とノベトリー伯爵家で交わした条件などがあった為、これも私のお母様が許可が出てからだったそうだ。


 いや、私のお母様は本当に何者なのか······。




 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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