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17話



 ーーコンコンコン。


 レティアが部屋を出てすぐにドアがノックされた。お茶の用意にしては早すぎない?


「はーい。どうぞ」


 ガチャ······


 入ってきたのはアル様だったので、急いで駆け寄った。こちらが思ってたよりも早く来てくれた。

 まだゆっくり出来るかと思って、お茶の準備をレティアがしに行ったので侍女がいない。

 あれ?アル様に付いてるはずのクルトさんもいない。


「アル様!今、お茶の準備を······」

「それなら大丈夫だ」


 そう言って私の手を取り、アル様が来るまで座っていたソファーに戻されて、アル様は隣に座った。


「大丈夫とは?」

「ここに来る途中、リリーの侍女に会ったから、クルトが一緒にお茶の準備をしに行った」

「なるほど~」

「······何か不足はないか?」

「大丈夫です!あっ、あの······たくさんの服なんですが······」

「どうした?気に入らなかったか?」

「いえ、そうではなくて······」

「?リリーの為に用意したんだが、やはり足りなかったか?」

「いえいえ!十分可愛くて、私が好きなデザインばかりで驚いたんですよ!」


 レティアの言った通り、全部私の為に用意された服だったのね。

 それを聞いて、嬉しくてソワソワしてしまった。


「ならば、良かった」

「「······」」


 どうしよう。会話が止まってしまった。

 さっきの言葉が嬉しくて、気恥ずかしさが出てきてしまったので、続けて言えなかった。

 ちらりとアル様を見ると目が合い、うっとりとした顔で私を見つめられた。

 これはを直視しては気絶しそうなな気がするので、本能的に目を瞑ってしまった。

 私は今、とても不細工な顔になってると思う。


「目を開けないと、リリーの美しい瞳が見えないな······」

「む、無理です!」

「······そんなに俺の顔が見たくないのか······」

「ちっ、違います!」


 あぁ。見えないけど、アル様はとてもしょんぼり顔をしているのだろうと、分かるくらい寂しそうな声をしていた。


「では、目を開けて話をしようか」


 そっと私の頬にアル様の手が触れられて、一気に顔に熱が集まった。


「ふぁ!ふぁい!」


 変な返事をした手前、余計に開けるのが恐くなってしまったが、真っ赤な顔で目を開けると瞑った時よりも近くにアル様の顔があって驚いた。

 こんなにも綺麗でキラキラした笑顔で、甘い言葉を言われたら、皆さんが虜になってしまうのは頷ける。


「あっあっぁ······アルしゃまっ!」 

「!?」


 何でこんな時に噛むかな!私!あぁ······アル様がより一層とろけた顔になって、眩しすぎる。


「······どうした?」

「ちっ、ちっちち······近いです~!」

「済まない。リリーが可愛いあまりに······もっと······と思ってしまって······」

「!?」


 可愛い!?まさかアル様から可愛いって言われるなんて!!

 会わずの名ばかりの婚約者に対して、気軽にそんな事を言う方ではないはず!

 きっとこの可愛いは妹的存在で可愛いというやつですよね?家を離れた寂しさをまぎらわすための慰めか何かなの??

 政略結婚なのだから、勘違いしてはいけないわ!


 あぁ~そんなはにかんだ顔で言われたら、眩しさの供給過多で倒れる!助けてー!


ーーコンコン、コンコン。


「失礼致します」


 ドアのノックと共にアル様は私の頬から手を離した。危なかった。気絶寸前で助かった。

 お茶のセットを持って、クルトさんとレティアが入ってきた。


「あらっ?お嬢様、お顔が真っ赤!暑かったんですか?扇ぎましょうか?」

「えっ!?だっ大丈夫よ」

「リリス様、こちらをどうぞ」


 クルトさんが冷たい濡れタオルを渡してくれた。顔にあてるとひんやり気持ちが良く、火照った顔が冷えて心も少し冷静になり、リセットされた。


「あぁ~、気持ちいい。クルトさん、ありがとうございました」

「いいえ、お役に立てて何よりです。私の事は気軽にクルトとお呼び下さい。敬語もいりませんよ」

「はい。クルト、よろしく······です?」

「「······」」


 人を担いでいた第一印象とは打って変わって、爽やかな笑顔で気遣いが細やかだった。

 流石、アル様を支える優秀な公爵家の執事だ。


「ちょっとクルトさん!!調子に乗らないで下さいね!!」

「レティア!?」

「私のリリスお嬢様なのよ!!髪の毛一本から爪の先まで私がお世話しますから!!」

「はい。お好きなように」

「お嬢様は誰にでも笑顔を振り撒いて、とてもお優しい方なんだから、自分だけ特別だと思わないことね!」


 あれ?それは褒めてるの?貶してるの?褒めてると受け取っていいのかしら?

 クルトはレティアの話を流しながら、手際よくお茶を淹れてくれた。


「どうぞ」


 とても茶葉の良い香りがする。一口飲んでみると、ほんのりフルーティーな後味でいくらでも飲めそう。

 あぁ~自然と顔が綻ぶわ。


「ん~美味し~い。幸せ~」

「······クルト、よくやった」

「お褒めに預かり光栄です」

「おじょーさまぁー!!私が淹れたかったのにぃー!!」


 そんなに泣き崩れなくても、いつも淹れてくれてるし、レティアのお茶も美味しいのに······。


「レティアの淹れたお茶も飲むよ!でも、クルトの淹れたお茶も飲んでみて?」

「~~······」

「レティアにも一息入れて欲しいな?」

「~······お嬢様が言うならば······」

「どうぞ」

「!?美味しい······どうやって!?」


 良かった。レティアも、落ち着いたみたいだわ。美味しい物は誰もが幸せになれるのよね。


「そろそろ、俺を見てくれないか?」

「ひゃいっ」


 そっと手を取られて、寂しげな目をされたら私の心臓持ちませんけど!!

 



 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


 私事ですが、週末にバタバタしていて、ストックが少なくなっています。

 時間がある時に何とかします!

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