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16話



 それにしても、改めてこの部屋を見ると私の部屋に本当にそっくりなのよね。部屋の広さは公爵家の方が倍くらい広いけど。

 お母様かお兄様達に趣味とか聞いたのかしら?まぁー何でもいいか、見慣れた方が落ち着けるものね。


「レティアが来てくれて良かったわ。ありがとう」

「リリスお嬢様がこちらにお世話になるのに、私が居ないなんて有り得ませんよ」

「レティアがいれば安心だわ~」

「まだ、横になられますか?」

「ん~もう大丈夫よ」

「では、お着替え致しましょう」


 体調はすっかり良くなってるし、この後はアル様と話をするので、服を整えなくてはいけない。

 部屋の造りが似ていたが、まさか衣装部屋まで同じだったのには驚いた。広さはこちらの方が広いけど。


「きゃ~!リリスお嬢様に似合いそうな、素敵な服ばかりですね」

「すっ、凄いわね······」


 流石にこの服の量には圧倒された。ドレスから普段使い、寝間着まで私好みの色やデザインが揃っていた。

 幾つか私が気に入っている服もあったから、家から持ってきたのかな。やっぱり自分の服を着た方がいいよね。


「急いで来てくれたから、荷造りも余り出来なかったわよね······」

「いえ、身一つで来てくれと言われたので、荷造りはしていないですよ」

「えっ?じゃあ······後から届けられるのかしら??」

「いえ、用意してあるからいらないと」


 どういう事?この服は?全て公爵家で用意されたもの!?私が持っているものと同じ服は、よくよく見るとまだ袖を通していない新品。

 これ全部新しいものだった。私が来ても良いのかしら?


「私が着ても良いの······?」

「そうですよね······こちらに居る間に全部は着られないかもしれませんが、全てお嬢様に似合うものばかりのデザインですよ~」


 あれ?レティアはそっちを心配していたの?私の為に用意した部屋だからと言って、服まで揃えるなんて気遣いし過ぎじゃないの?

 普通は家から服を持ち込むと思うけど。公爵家の誰か別の方ではないかと考えないのかしら。


「違う人の服じゃないかってことは······?」

「それはないです」

「えっ?何で?」


 レティアはキッパリと否定したが、何処からそんな自信が出てくるのか。


「今お召しになられている寝間着、お嬢様にピッタリのサイズですし。何よりこんなに素敵なドレスがお似合いになるのはうちの可愛いお嬢様しかいないですよ~」


 基準はそこ!?確かに、この寝間着のサイズはピッタリなのよね。生地もさらっとしていて着心地も気持ちいいし。


「それに、婚約者様からの装飾品のプレゼントを受け取らないなんてマナー、教えてもらいましたか?」

「······それは、受け取らないと駄目ね」

「ですよね~!さて、どれにしましょうか~。これなんて動きやすくて、可愛らしい花柄ですよ~」


 レティアの言う通り、お母様のマナー講座では婚約者から贈り物は身に付けるようにと教わったわ。

 ······そう、アル様は婚約者なのよね。でも、こんなに平凡な伯爵令嬢と婚約なんておかしいでしょ。


「んっ?アル様が婚約者って誰から聞いたの?」

「奥様からお聞きしてますよ。あっ、こちらのパステルピンクも似合いますね~」

「今日、公爵家に来る前に聞いたのね」

「いえ、婚約された日にお聞きしましたよ」

「!?」

「やっぱり、このフワッとした雰囲気のデイドレスがいいですよね~お嬢様が精霊のようです~」


 と言うことは、私より先に知ってたのよね?でも、そもそも、いつ婚約していたのかしら?

 家族全員とレティアも黙っていたという事は、きっと政略結婚というのを知られたくなかったのね······。


「夕食もありますので、髪は結い上げておきますね~あぁ~可愛いです~」

「ねぇー私って、いつから婚約していたの?」

「それは婚約者様に直接お聞き下さい」

「分かったわ、聞いてみる」


 手早いわ。喋っている間に準備が整っていた。いつも可愛いと言ってくれて、私を着飾って飾ってくれるのはレティアなんだけどね。


「あぁ~もぉ~可愛いです~何処にも行かないで下さいね~」

「可愛いくしてくれるのはレティアだよ。いつもありがとう」

「~~お嬢様ぁーー!!あ"あ"ぁぁー!」


 レティアは私が二歳、レティアが十二歳の頃からうちの邸で働いている。幼すぎて覚えてないけど、メイドの時から私を可愛がってくれていたそうだ。

 私付きの侍女になったのは私が五歳の頃で、レティアが十五歳なので初対面は覚えている。

 泣きながらの自己紹介で何を言っているのか分からなかったから、インパクトが強かった。その後、侍女長に怒られていたのも覚えている。

 時々、会話が噛み合ってないと感じるのは昔からなので、通常運転なレティアは居るだけで落ち着けるわ。

 アル様は後で来ると言っていたので、まだ時間があるかな。取りあえず、この部屋で待っていれば良いのかしらね?

 

「レティア、一緒にお茶しましょうよ」

「勿論でございます。ご準備しますので、お待ち下さいね」


 いつもながら、切り替えが早いわ。ちょっと私を可愛がりすぎな所もあるけど、やる時はやれる優秀な侍女なのだ。


 お茶の準備をしてくれる為にレティアは部屋を後にした。私もソファーに座って待っていることにした。


 広くて豪華な部屋だけど、何となく自分の部屋感があると心から落ち着ける。



 ーーそよそよ、そよそよ。


 他人の邸でこんなに馴染むのは不思議。




 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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