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15話

 見つけてくれて、ありがとうございます。

 いつもより、少しばかり長めです。






「おっ、お母様······今、何と仰いましたか?」

「仲が良いとは素晴らしい」

「違います!その後!」

「このままもっと、深めていきなさいね」

「違う!その後!!」

「当たり前じゃない。婚約者同士なのだから」

「誰と誰がですか!?」

「あなたとアルベールよ」

「えっ?えっ?えっ??」

「では、アルベールあとは頼みましたよ」

「はい。お任せ下さい」


 お母様は淡々と話しているけど、頭の中が混乱して目が回りそう。

 話のやり取りを見ていると、アル様は勿論知っていたのだろうけど、他の人は知っていたの?

 ビクトルお兄様は!?あっ、駄目だ······気絶していた。

 セドリックお兄様は!?あっ、目を反らした。これは知ってたな。

 ユース殿下は!?王族スマイル。これも知ってたな。


「リリス、しっかりと学ぶのですよ」

「えっ?あっ、はい!?」

「では、ご無礼致しました」


 反射的に返事をしてしまったが、何も分かってないのですが······。

 私が混乱したまま、お母様はお手本かのような綺麗な礼をして、あっさりと踵を返した。ビクトルお兄様を引き摺ったまま。


「リー······」

「セドリックお兄様······」

「やっぱり一緒に行こう!」

「あっ、それは嫌です」


 いくら混乱しているとは言え、これだけは拒否させてもらう。辺境伯での地獄の訓練(お母様付き)は絶対に回避させてもらう。


「セドリック何をしているのです?走ってアルバディスに行きたいということですか?」

「うっ!?馬がいいです!!馬が!!」


 お母様の実家の領地アルバディスは隣国フォリオムとの国境にあるが、その間には魔の山が広がっており、魔物が出るので討伐が中心となる領地なのだ。

 王都からは馬車で5日、単騎で丸2日、お母様が単騎で走らせたら丸1日で着く場所なので、いくらセドリックお兄様が自分の足で走ると一週間以上はかかるはず。

 そんな事したら、訓練どころではないでしょうね。そもそも、道中も訓練させられるのだから、こちらを気にせず早くお母様に追い付いた方がいいと思う。


 焦りながらお母様に付いていくセドリックお兄様と意識なく引き摺られるビクトルお兄様を見詰めながら、無事で帰ってくる事を願うしかなかった。


「さぁ~て、私もビクトルの手続きしなきゃいけなくなったから帰るね!早くやらないと伯爵夫人に······うぅっ······」


 ユース殿下は身震いしながらそそくさと帰ってしまった。

 殿下でさえも恐怖を感じる程のトラウマを植え付けられているなんて······。

 やっぱりお母様は最強だという事と、逆らってはいけない人だという事が再認識された。


「······リリー」

「あっ、アル様」


 そうだった!皆は部屋を出ていってしまったから、アル様と二人残されたのだった。

 どうすればいいの!?

 私はアル様と今日初めて会ったのに醜態を晒したくせに恋して、もう駄目だと思っていたのに以前から婚約をしていた。

 そして、家から放り出されて公爵家に置いていかれた······ということであってるのかしら?

 それよりも、何故あんなにお母様と仲良くて、気を許しているかが気になる。

 相手はあのお母様なのに気を許しているのが気になり、もやもやとした黒い醜い感情が沸き上がる。

 本来、聞かなくてはいけない事が盛り沢山なのに、何からどう聞いていいのか分からない。

 私が話倦ねていると、アル様は握っていた手を優しく包み込んでくれた。


「······驚いたか?」

「とても······」

「すまない。条件や事情があったから今まで会うことが出来なかった······。何か聞きたい事はないか?」

「聞きたいこと······」

「あぁ、何でもいい」

「あっ、アル様とお母さ······っ」


 アル様とお母様がいつから仲良しなのか聞いてどうするの?それよりも聞くべき事は沢山あるのに······。


「いえ······その······」


 こんな泥々した感情が自分の中から沸き上がってきてるなんて知られたくない。もし、知られてしまったら、何だこいつと思われて嫌われてしまいそうで聞くのは躊躇われる。


「······アル様」

「んっ?」


 アル様は整った美しい顔でキラキラした瞳をこちらに向けて近付いてきている。そんな綺麗な人が私となんて、釣り合うわけがない。

 やっぱりこれは政略結婚なのね!きっとアル様も何かしらのトラウマがあって、逆らえないんだわ!だからお母様とも仲良く話をしているのね!


 そんな事を考えていると、気のせいだろうか、アル様の綺麗な顔が近くなってる気がする。

 あれ?近いかも······。いや、近すぎるよね!?眩しい顔を直視できないよ!


「もうすぐ、リリス様の侍女がこちらにいらっしゃるそうですよ」 

「!?」

「······」


 助かった!あれ?クルトさん!?居たのね。んっ?いつからいたの??全く気付かなかったけど、常識的に未婚の男女が二人きりなんて有り得ないのだから、従者は必ず付いているものね。

 それにしても、クルトさんはいつのからいたのかしら······。


 ーーコンコン、コンコン。


「ルクセルです。お連れしました」

「入れ」

「失礼致します」


 先程、お母様達を連れてきたダンディ執事と一緒に来たのは、私の侍女レティアだった。


「あぁ、夫人から話を聞いている。私はアルベール・シルフィード。君を案内してきたのは執事長のルクセルで、こっちは俺専属従者のクルトだ」

「御目にかかれて光栄でございます。私はノベトリー伯爵家のリリスお嬢様付き侍女で、レティアと申します。以後、お見知り置きを」

「あぁ、分からない事があればこの二人に聞くといい。ここでは普段通り、リリーの世話を頼む」

「かしこまりました」


 良かった。お母様はレティアを呼んでくれたのね。

 私の一番の理解者で、侍女というよりは姉と言ってもいい程の存在だ。


「僭越ながら、本当に普段通りで宜しいのでしょうか?」

「······?あぁ、その方がリリーも過ごしやすいだろう」

「では、お言葉通りに致します」


 ペコリとお辞儀したレティアは、お母様のように長身過ぎないスラッとした体型。ブラウン色の髪を乱れなく結い上げて、メガネをかけて、知的な見た目の出来る侍女の典型。


「リリスお嬢様ー!!」

「ぐぉっ!!」


 思い切り抱き付いてきたから、変な声が出てしまった。ぎゅうぎゅう締め付けられながらスリスリしてきた。

 そう、出来る侍女の典型は見た目だけ。


「話は聞きました!もぉー!ビクトル様もセドリック様も何を考えているのやら!!やはり、私がリリスお嬢様をお守りするしかないのです!!あぁ~いつ見ても可愛いです~私の癒しです~」

「「「······」」」


 アル様もクルトさんもルクセルさんも無言のまま固まってしまった。まぁ、そういう反応になりますよね。主従関係崩壊しているように見えますよね。


 昔からレティアは私をお兄様達以上に可愛がってくれるので、私はいつもされるがままになる。もうそれが普段通りだから慣れてしまっている。

 それと何故か、レティアがいるとお兄様達はあまり近付いて来ないので、先程のビクトルお兄様の暴走も屋敷では抑えられている。


「······そっ、それでは何かありましたら何時でもお声掛け下さい」


 ルクセルさん流石だわ。老齢なだけあって場数を踏んでいるからか、レティアの奇行を見てもすぐに持ち直した。


「······リリー、後でゆっくり話をしよう」

「はっ、はい」

「この部屋はリリーの部屋だから自由に使ってくれ」

「お気遣い、ありがとうございます」

「少し休んでくれ、また来る」

「はい······」


 スッと指先にキスをして、フッと微笑みを向けてくれた。


ーーパタン。


 何!?今の!!あぁぁぁーーアル様が素敵すぎて何も考えたくない。

 私の心臓が可笑しくなるくらい、激しく動いているのが分かる。

 後、脳に対しても情報過多!!一日で得た情報が多すぎて、処理できてません。


 

 あぁーーここでの生活大丈夫かしら······。


 色々な意味で慣れなさそう······。





 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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