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13話



 絶体絶命です。


 お母様が、お母様が来ているなんて······。

 んっ?ちょっと待って!何でそんなに早く来れるの!?

 もしかして······単騎で!?お母様ならばあり得る······。

 知らせを聞いて走れば、十分程で来られる距離だもの。いや、お母様ならば十分かからなかったかもしれない。

 でも、そんなに早く知らせは出せないはず。ここまで早いのはどうして?

 公爵家の秘術??


「えっ······どっ、どうやって······知らせ······た、の······ですか······?」


 震えながら疑問に思った事をアル様に聞いてみた。ふむっ、と少し考えて言った。


「それは······まだ秘密にしておこう」


 人差し指を口に立ててシーッという仕草をアル様がするなんて!!これはズルい······。そんな事されたらこれ以上は聞けないです。

 それもそうだが、やはり公爵家の門外不出の方法を匂わせるような答えだった。

 でもアル様は"まだ"と言っていたので、いつか教えてくれる約束が取り付けられたということで留めておこう。

 あまり詮索してしまうと嫌われる原因になってしまうかもしれないし。


 それよりも、お母様の方に今は集中しなくてはいけない。

 どうしたら今回の失態を叱られずに済むのか······。


「あの······アル様。お母様の事なのですが······」

「どうした?」

「······だ、大丈夫でした?」


 願わくば、何もなく終わって欲しい。ヴィクトルお兄様だけ叱られて、収まってくれれば良いな······。


「先程お会いして、リリーが世話になったと仰っていた」


 アル様がとても眩しくて良い笑顔で教えてくれた。美しい笑みと、アル様から教えられた内容からの恐怖で震えが止まらない。

 何処までも世話のかかる娘が迷惑をかけました。再度、躾をするから許して下さい的な内容の"世話に"の事ですか??


「アッ、アル様は······お母様に会ったのですか······?」 

「あぁ、リリーを心配していて優しいお母上だな」

「「······」」


 アル様の言葉にセドリックお兄様と私は絶句。

 お母様に会って尚且つ、言葉を交わしたのに優しいと言う単語が出てくるなんて思っていなかったので、驚き過ぎて瞬きも忘れてしまう程だ。


「······アル······、さっきの母様とビック兄さんのやり取りを見たのに、よく優しいなんて言えるな······」

「······アル様······大丈夫ですか?」

「······」


 私達兄妹の本気の心配を尻目に、不本意そうな顔をしている。

 "さっき"と言っていたが、セドリックお兄様もお母様に会ってからここに来ていて、無事でいるのならば、今回は私も安全なのではないかしら。


ーーコンコン、コンコン


「アルベール様、ルクセルです。入室してもよろしいでしょうか?」

「あぁ」


 一瞬、お母様かと思って少しドキッとしたが、アル様と一緒にいたクルトさんてはなく、公爵家の別の執事らしき人の声だった。


「失礼致します」


 入ってきたのは老齢のダンディな執事だったが、その背後には禍々しいオーラを纏ったお母様がいた。


「「ひぃ!!!!」」


 セドリックお兄様と私は恐怖のあまりガクガクしてしまう。


「ノベトリー伯爵夫人、もう良いのですか?」

「えぇ、お騒がせ致しました」

「いえ、お気になさらず」


 何でアル様は和やかにお母様と会話してるの!?

 アル様の方が少しお母様より目線が上だが、女性としては長身の百七十七センチあるし、体格はビクトルお兄様と同じようにゴツめなので、とても存在感が大きいし威圧感がある。

 そのお母様が左手に引き摺っているのは······ビクトルお兄様!!

 あぁ······やはり助からなかったのですね。


「公爵家にご迷惑をお掛けしたコレについては、きっちり再教育いたします。······それとセドリック」

「はいっ!!」

「お前がいてもこの醜態ですか?」


 ギンっと赤い瞳が獲物を狙うような目で見詰められて、ターゲットされるなんて不運だと思う。


「も、申し訳ありません!でっ、でも、リリスの安全に関しては······」

「言い訳はいらないわ」

「うっ······」

「セドリック。お前もビクトルと一緒に鍛え直しです」

「ひっ!」

「返事は"はい"しか聞きません」

「はいっ!」


 お母様は怒鳴りはしないが、怒っていないわけではない。

 何故か、怒鳴られるよりも淡々と話される方が精神負担大きいのかしら······。


「では、ユリウス殿下。ビクトルとセドリックは一週間程、私の実家で鍛え直しますので、ビクトルの手続き等はよろしくお願い致しますね」

「勿論!伯爵夫人の仰せのまま進めていきます!」


 あれ?ユース殿下いたの?"仰せのままに"って、お母様と立場が逆なのは王族としていいのかしら······。

 セドリックお兄様撃沈。一週間の辺境伯での地獄の訓練は辛すぎる。しかもお母様付きだなんて······。

 私への躾は何を用意しているのか······。考えるだけでも震え上がる。


「リリス」

「ひゃっい!」

「······」


 ビクついていたので、噛んで返事が変なのになった。お母様の目が細くなり、呆れた表情になってしまったので、この後の私の予定も地獄行きが確定した。


「リリスはここに残りなさい」

「へっ??」


 お母様と地獄の訓練ではないようだ。




 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


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