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12話



 そういえば、家に運ばれて着替えたりとしているのにも関わらず、私って起きなかったのよね?

 一体何れくらい寝てしまっていたのか。

 まだ日が傾いていないみたいだから、二、三時間といったところだろうか。


「あの······」

「どうした?どこか痛むか?」

「いえ······私って、何れくらい寝ていたのでしょうか?」

「あぁ、二、三十分だろうか」

「??」


 聞き間違えかしら?シルフィード公爵家の大きなタウンハウスから、うちのタウンハウスまでは馬車で四十分はかかる。

 出入りする時間も然る事ながら、着替えたりしていたら最低でも一時間以上はかかるはずなのに、何をどうしたら二、三十分で済むのか分からない。

 きっと聞き間違えたのね。


「えっと······二、三時間······?」

「いや、二、三十分だ」


 聞き間違えじゃない!?


「······どういう事ですか······?」


 もう一度聞こうと思ったら······。


「リー!!大丈夫か!?」


 バァン!!と勢いよく扉が開いて、走って私の所まで叫びながらセドリックお兄様が来た。

 また思い切り抱き締められると身構えたが、抱き締めに来なかった。というか、来れなかった。

 何故か、私とセドリックお兄様の間にアル様がスッと立ち塞がっていた。


「っ······」

「セドリック」

「アル、退いてくれ!」

「······」


 セドリックお兄様は、無言で退かないアル様を越えて、無理に近付こうとはしなかった。

 お兄様なりに気を遣ってくれているのかしら。


「セドリックお兄様、ご心配をお掛けしました。私はもう大丈夫ですよ」

「リー!?何か飲むか?」

「先程、アル様に頂いたので大丈夫です」


 水を飲んだ時に、アル様が微笑んでくれた顔を思い出して少し頬が熱くなる。

 それを見たセドリックお兄様は目を見開き、ついにアル様を越えてベッドに座っている私の傍まで寄ってきた。


「リー!!帰ろう!!」


 突飛な発言に口をポカンっと開けてしまい、二の句が継げないでいると、矢継早に言い始めた。


「ここに居ては駄目だ!家に帰ろう!いや、家もきっと駄目だ!!ならば領地に帰ろう!!······いや!!領地もきっと駄目だ······どこなら、どこならリーと無事逃げれるんだーー!?」


 セドリックお兄様は私の部屋で何を叫んでいるのか······。


「セドリックお兄様、落ち着いて下さい。今、家に居るのに何処へ帰ると言っているの??」

「違うんだ!!リー!!」

「違うも何も、ここは私の部屋でしょ?」

「だから!!違うんだ!!」

「何が違うのよ??」

「ここはうちでもない!!リーの部屋でもない!!」

「······何を言って······るの??」


 動揺しているとセドリックお兄様は、はぁーとため息をついて自分自身で冷静になってくれた。

 私はお兄様に言われたので、この部屋をゆっくりと見てみる。

 よく見ると······私の部屋とは少し違う?

 間取りや置いてある家具や使っている製品は私の部屋の物より凝っていて、高そうな物もちらほら置いてある。

 とても良く似ているので、寝ぼけ眼で間違えてしまったのだ。


「んっ??では······ここは何処ですか······??」

「ここはまだシルフィード公爵家の一室だ」


 まさか寝ぼけた状態で、あまりにも似ていたとは言え、自分の部屋と間違えてしまうなんて、恥の上塗りになってしまった。

 恥ずかしくてアル様には顔を見せられないので、手で覆ってしまった。


「すみません!とても似ていたので自分の部屋かと思ってしまいました!!」


 一度ならず二度もお慕いしている人の前での失態だなんて、言い訳も通用しないのではないか。何だこの図々しい子は、と思われてないだろうか。

 アル様の事だからそんな卑下する事は思っていないだろうけど、万が一思われているとしたら立ち直れないわ。


「そうか、間違える程似ていたのか······」

「はい······。てっきり自分の部屋かと思い、安心して微睡んでしまいました」

「そんなに似ていたとは驚きだ。リリーが安心出来る部屋で休めて用意した甲斐があった」


 何て素敵な人なのかしら。

 勘違いした私に対して、嫌な気持ちは一切ないようだし、私を労るような声掛けもしてくれる心遣い。

 心の中で拝んでおいた。


「リリーが倒れる時に受け止めたが、本当に何処も痛くはないのか?」

「受け止めて下さったのですね······ありがとうございました。お陰さまで何処も痛くはありません!」

「そうか」


 アル様が私を受け止めてくれていたなんて、嬉しいけど重くなかったかしら?

 でも、ほっとした表情を見せてくれたので、心から心配してくれていたのが伝わる。

 あれ?そもそも私は何で倒れて寝ていたのか······?


「あっ!!ビクトルお兄様!!」


 思い出した!ユース殿下との会話中にビクトルお兄様が私の口を塞いだのだった。と言うことは酸欠?

 寝ていた間も含めて、アル様とセドリックお兄様に詳しく聞けば分かるだろう。


「そう言えば、ユース殿下とビクトルお兄様は?」


 何気なく問い掛けてみたら、セドリックお兄様がビクッとなって、急に固まってしまった。

 んっ?これは······。仕方なくアル様の方を見てどういう事か説明を求めようと顔を見たら、ニッと微笑んで教えてくれた。


「今、ビクトル殿は別室にて叱られている」

「??誰に?ユース殿下??」

「ユース殿下も含め、ノベトリー伯爵夫人に」


 アル様の言葉に私も固まった。



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