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10話



 お兄様二人は打ち拉がれているが、それを尻目に、アル様はせっせと私の口元に苺持ってきて食べさせてくれている。何故か私もそれを受け入れてしまう。


「······私達と離れてる間に急に仲良くなって~」

「むぐっ、そうれふはぁひぇ~?」


 ニヤニヤしながらユース殿下は私達を見ている。その間も親鳥のように苺を次から次へと食べさせてくれている。

 甘いわぁ~。あぁ~幸せ。この苺なら何十個も食べられるわぁ~。


「どうだ~い?」

「ごっくんっ。はい、好きです」


 ユース殿下の問い掛けに対して、私の答えを聞いたアル様は固まった。その瞬間、ファァーっと風が吹き抜けた。

 テラスの窓が開いてたのかしら?先程と同じで、とても心地良く吹き抜けていった。

 気持ちいいわ。この風が吹くと、外で食べているような錯覚さえも起こす。

 それなのに······。


「「あ"あ"ぁーー」」


 また、叫んでいる。お兄様達は反応がいちいち煩いわ。こんなに美味しい苺を楽しんでいるのに、何をそんなに叫んで邪魔をする事があるのか。


「えぇ~?リリスは私よりアルの方が好きなのか~い?」

「??」


 あれ?苺の話をしていたのでは?

 何故、そこでアル様が出てきたのか。ユース殿下は何の話をしているの?

 いくら砕けた感じの雰囲気だとしても、一応相手は王族なので、質問されたからにはそれなりの返答しなくていけないのだろう。

 ん~アル様が好きか······と聞かれたらまだ断定は出来ないが、惹かれているのは間違いない気がする。

 けれど、私にはこれが恋愛の好きなのかどうか、はっきりとは分からない。

 アル様を好きか嫌いかと問われたら好きだと思うし、何ならユース殿下より好きなのは確かだし。

 あとは、拝み倒して彼の綺麗な透き通った若葉色のような瞳には、常に私を写していて欲しいし、何ならずっと近くに居て手を握ってもらえたら心も落ち着ける。

 と言っても、恋愛初心者どころか入門したばかりの私には本当の恋なのか知る術がない。

 分からないのならば、誰かに聞いてみるのも、知るための一つの手なのかもしれない。

 

「そうですね、アル様の事を好き······かぐっ!」


 えっ!?口を押さえつけられた!!何で??ビクトルお兄様!?


「もがっ······うぐっぐっぐ······」

「ビクトル!?何をしてるんだい!?」


 慌ててユース殿下が止めようとしてくれているが、ビクトルお兄様は大きな手で私の口を含めた鼻まで覆っている。

 セドリックお兄様は地面に突っ伏していて使い物にならないし、アル様は真っ赤な顔で固まった状態のままだ。

 あっ、アル様の顔が苺みたいで可愛らしいわ。って違う!!こっちを何とかしなきゃ!


「もう駄目です!!これ以上は耐えられない!!」

「いや!!今、耐えられないのはリリスの方だと思うぞ!!」

「もう無理です!!」

「無理ではない!!落ち着け!!」

「落ち着けるわけないでしょ!!」

「う"ぅっ······ふっ······」


 ビクトルお兄様手を退けて欲しいです!私が落ちる!!ユース殿下!何とか説得頑張って下さい!


「リリスの口から手を放せ!」

「む"ぐっ······」

「嫌です!!聞きたくない!!言葉にまで出してしまったら傍に居られない!!」

「このままでは本当に傍に居られなくなるぞ!!」

「······ふっ······」

「だから言えないようにしてるんじゃないですか!!」

「いや!!そうじゃないんだよ!!あ"ぁー!アル!!何を惚けてる!!リリスが危ない!!リック!!ビクトルを何とかしろ!!」


 ユース殿下がそう叫ぶと、ハッとした二人が直ぐに私とビクトルお兄様を引き離して助けてくれた。


「リリー!!」

「ビック兄さん!!」


 アル様の呼び掛けが聞こえるけど、私は段々と意識が遠退いていきそうになる。

 ふわと温かい腕の中に包み込まれた。その安心感から、自然と目を閉じて身を任せても大丈夫だと思えた。


「リリー、ゆっくり息を吸え」


 あぁ······こんな間近でアル様の綺麗な顔を拝められて嬉しいわ。

 固まったり、真っ赤な苺のような顔も焦った表情もなかなか見られないだろうけど、どんな表情でも素敵。


「······ぁっ······ア······ルさ······ま」

「リリー、大丈夫だ」


 この香り······腕の中にいてもそよぐ風に乗って、あの青い花の庭の香りがふんわりと漂う。


 この香り······。


 アル様の全てが私を落ち着けさせてくれる。温もりから美味しさ、ふわふわする気持ちや恥ずかしさ。色々な感情を与えてくれる。

 アル様をずっと見ていたいし、アル様には私だけを見ていてもらいたい。これは独占欲というものなのだろう······。

 この独占欲がただ一人に対して向けられるものならば、その人は紛れもなく特別な人になったのだ。


 こんな状況ですが······私、恋しました。

 




 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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