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第三章: 実戦経験

ジュンヤとアユが城での訓練を重ねてから数週間が経過した。彼らの技術は目に見えて向上しており、ルシウスもその成長に目を見張っていた。ある日、ルシウスは彼らに実戦経験を積ませるため、ゴブリン討伐の任務を提案した。


「君たちにはもう、訓練場での練習だけではなく、実戦を経験する時期だ。今日は近くの森にいるゴブリンを討伐しに行こう。これは王国の平和を守るための第一歩だ」


ジュンヤとアユは少し緊張しながらも、力強く頷いた。初めての実戦であり、訓練で培った力を試す絶好の機会だと感じていた。


その時、王女フィオナが現れ、ルシウスに話しかけた。「ルシウス、私も同行させてください。実戦の経験は私にも必要ですし、勇者たちの力をこの目で確かめたいのです」


ルシウスは一瞬ためらったが、フィオナの強い意志を感じて頷いた。「わかりました、フィオナ様。ですが、危険な場合には私が守りますので、無理はなさらないように」


フィオナは笑顔で頷き、「ありがとう、ルシウス。大丈夫です、私も訓練を受けてきましたから」と答えた。


こうして、ジュンヤ、アユ、フィオナ、そしてルシウスの四人はゴブリン討伐のために森へ向かうことになった。


カサンドラの城からほど近い森に到着すると、四人は慎重に周囲を警戒しながら進んでいった。森は鬱蒼と茂っており、木々の間から差し込む光が薄暗い影を作っている。ルシウスは静かに手を上げて一行を止め、耳を澄ませた。


「いる…」と彼は小声で告げた。「ゴブリンの気配が近い。注意して進もう」


ジュンヤは剣を抜き、アユは杖を構えた。フィオナも準備を整え、いつでも魔法を使えるようにした。その時、茂みの中から小柄な緑色の生物、ゴブリンが数匹現れた。彼らは不気味な笑い声を上げ、鋭い牙をむき出しにして四人に襲いかかってきた。


「行くぞ!」とジュンヤが叫び、先頭に立ってゴブリンに向かって突進した。剣を振り下ろし、最初のゴブリンを一撃で倒す。続けてもう一匹に斬りかかり、その動きは訓練で磨いた技が活かされていた。


アユは呪文を唱え、光の矢を放ってゴブリンを狙い撃つ。矢は正確にゴブリンに命中し、次々と倒していく。フィオナもまた、氷の魔法を使ってゴブリンの動きを封じ込めた。


「ジュンヤ、左側にもう一匹!」とフィオナが叫ぶ。


ジュンヤは素早く振り向き、そのゴブリンに向かって剣を突き出した。ゴブリンは倒れ、周囲には静寂が戻った。


「やったね、ジュンヤ!すごいよ!」とアユが笑顔で声をかけた。


ジュンヤも息を整えながら微笑んだ。「君も上手くやったよ、アユ。これなら魔王にも立ち向かえる気がする」


ルシウスは頷きながら、「いい動きだった。君たちの力は確実に成長している」と褒めた。


その頃、カサンドラの城から少し離れた、人気のない路地裏で異変が起きていた。空気がひんやりと冷たくなり、静寂が訪れたその瞬間、何もない空間に突然亀裂が走った。亀裂は次第に広がり、黒い裂け目が現れた。


裂け目の中から、一人の少年が現れた。黒髪の美少年で、ミディアムヘア。彼の目は半分閉じられており、どこか気だるそうな表情をしていた。彼は無造作に路地に降り立ち、周囲を見回した。


「ここが次の世界か…」と彼は低く呟いた。


その少年は「マユ」という名を持ち、次元を切り裂く力で無数の異世界を渡り歩く存在だった。彼にとって、異世界を渡ることは日常であり、そこに特別な意味を感じることはなかった。


マユは周囲の気配を感じ取り、近くに人々が集まる場所があることを察知した。彼は気だるそうに肩をすくめながら冒険者ギルドへと向かうことにした。


マユが冒険者ギルドに到着すると、中には多くの冒険者たちが賑わっていた。彼は無関心そうにギルドの内部を見回し、受付に向かって歩いて行った。


ちょうどその時、ジュンヤ、アユ、フィオナ、ルシウスの四人がゴブリン討伐の報告を終えてギルドに戻ってきた。四人はギルドのホールに入る際、ジュンヤが歩いていると、マユと肩が軽くぶつかった。


「わりぃ」とマユが短く言い、ジュンヤを一瞥した。


ジュンヤは一瞬驚いたが、マユの気だるそうな様子を見て、「なんだあいつ…」と小声で呟いた。彼は特に気にせず、仲間たちと受付へ向かう。


マユはジュンヤとアユをじっと観察し、その瞬間に彼らがこの世界の主人公とヒロインであることを直感した。だが、何も言わずにその場を離れ、再びギルドの内部を探索するように歩き出した。


「ふーん、まあいいか…」とマユは小声で呟き、自分の興味が湧くまで彼らの行動を観察することに決めた。

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