第一章: 勇者の召喚
物語は、異世界の王国「エリュシオン」で始まる。エリュシオン王国は長い間平和な時代を築いていたが、最近になって魔王「ザルゴス」の復活により暗雲が立ち込めていた。魔王ザルゴスは強大な魔力を持ち、周囲の国々を次々と侵略し、エリュシオン王国にもその魔の手を伸ばそうとしていた。
エリュシオンの王、「オズワルド三世」は、魔王ザルゴスに対抗するための切り札を求めていた。彼は、古くから伝わる伝説の「勇者召喚の儀式」に望みを託すことにした。この儀式は、異世界から強大な力を持つ勇者を召喚し、王国を救うというものだった。
王妃の「セリーナ」もまた、この儀式に深い関心を寄せていた。セリーナは王国の未来を案じる優しい女性であり、オズワルド三世と共に王国の安定を常に願っていた。
エリュシオンの首都、「カサンドラ」にある大広間。王や王妃、そして魔法使いたちが集まり、儀式が始まろうとしていた。大広間の中央には魔法陣が描かれており、その周囲には古代文字が刻まれている。王国の最高魔法使い、「ルシウス」が儀式の中心に立ち、古代の言葉で呪文を唱え始めた。
「聖なる力よ、この王国を救うために異界の勇者をここに召喚せん…」
その言葉と共に、魔法陣が青白く光り始め、眩い光が大広間を包み込んだ。風が吹き荒れ、王と王妃、周囲の者たちは息を飲んでその光景を見守った。光が収まると、魔法陣の中央には二人の若者が立っていた。
光の中から現れたのは、一人の青年と一人の少女だった。青年は茶髪でしっかりとした体格をしており、驚いた表情で周囲を見渡していた。彼の名前は「雨音淳也」。現代日本では普通の社会人として働いていた青年だ。
隣に立っていたのは、短いボブカットの可愛らしい少女。「姫乃あゆ(ひめの あゆ)」という名で、ジュンヤとは幼なじみの間柄だった。彼女もまた、目の前の異様な光景に戸惑いを隠せないでいた。
「ここは…どこなの…?」と、アユが小声で呟く。
ジュンヤも困惑しながら、彼女の肩に手を置いた。「わからない…でも、どうやら異世界に来てしまったみたいだ」
王が二人に歩み寄り、威厳ある声で話しかけた。「ようこそ、勇者たちよ。私はこのエリュシオン王国の王、オズワルド三世である。君たちをこの地に召喚したのは、我が国を救うためだ」
ジュンヤとアユは互いに顔を見合わせた。ジュンヤが意を決して質問する。「救うって、何からですか?」
オズワルド三世は深刻な表情で答えた。「我々は、古代の魔王ザルゴスの復活による脅威に直面している。君たちにはその魔王を討伐し、この王国に平和を取り戻してほしいのだ」
ジュンヤとアユが状況を理解し始めた時、ルシウスが一歩前に出て、二人に向かって手を掲げた。「安心してくれ。君たちには、この世界で特別な力が授けられている。それを確認するために、目を閉じ、心を集中させるんだ」
ジュンヤとアユは互いに頷き、言われた通りに目を閉じて心を集中させた。次の瞬間、二人の目の前に青白い光でできた「ステータスウィンドウ」が現れた。それは、彼らの名前、能力、称号などが記された画面だった。
•ジュンヤのステータスウィンドウ
•名前: 雨音淳也
•称号: 勇者
•レベル: 1
•能力: 剣術、基本魔法
•アユのステータスウィンドウ
•名前: 姫乃あゆ(ヒメノ アユ)
•称号: 僧侶
•レベル: 1
•能力: 回復魔法、攻撃魔法(炎、氷、雷)、浄化
「これが…私たちのステータス…?」と、アユが驚きの声を上げた。
ジュンヤはウィンドウに表示された自分の称号を見つめ、「勇者か…」と呟いた。彼は一瞬戸惑いを見せたが、同時にその言葉に込められた期待と責任を感じ始めていた。
オズワルド三世は二人の反応を見て微笑み、王妃セリーナも優しく彼らに語りかけた。「君たちはこのエリュシオンの希望です。どうか私たちのために、その力を使ってください」
ジュンヤとアユは、エリュシオンの首都カサンドラの城に滞在することになった。カサンドラは壮大な城壁に囲まれた美しい街で、石畳の道が広がり、賑やかな市場や職人たちの工房が並んでいる。ジュンヤとアユは初めて見る異世界の光景に驚きつつも、その美しさに魅了されていた。
「ジュンヤ、すごい…本当に異世界なんだね」とアユが感嘆の声を上げる。
「うん、まるで夢みたいだ。でも、ここでやるべきことがある」とジュンヤは真剣な表情で答える。