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【連載版】連勤術師の悠々自適な生活  作者: ラクシュミー
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9.誰?

 取りに行ったのは、冷蔵庫に入れていたペットボトルの水。別に常温で置いておいても構わないのだが、今までの習慣で冷蔵庫に入れていた。



ペットボトルの水……イツキの水。

          聖水。

          どんな呪いも一瞬でサヨナラ。

          決してなくならない。



「イツキちゃん、コレって……」

「はい、聖水です」

「良いの?」

「はい。必要な時に使わなきゃ意味ないですもん」

「じゃあ、この瓶に入れましょう」


 アポロ婆ちゃんに手渡された、きれいな細工のガラス瓶に聖水を入れる。


「おぉ〜。ペットボトルの水もこうやってきれいなガラス瓶に入れるとそれっぽく見える」

「まぁ、見た目も大事ってことね」


 それから、村長とディーテ婆ちゃん、アポロ婆ちゃんは、村長宅にある転移門を使って、王都へ行ったらしい。そして、国王は私が提供した“エリクサー”と“聖水”で死の淵から脱出し、回復に向かっているらしい。



*****



 そして今、なぜか私は秘密裏に国王陛下と王妃様に謁見していた。


 早朝から、おばぁ達の手腕でお風呂からのマッサージを受け、村長夫人のヘラ婆ちゃんが用意してくれたドレスに着替え、侍女長のルピナ婆ちゃんの知り合いだと言うおば様に詐欺メイクを施してもらった。


「だ、誰、これ!?」


 準備が終わり、姿見を見た私が驚くのも無理はない。そこには、水色のセンスのいいドレスに身を包み、髪の毛をハーフアップに黄色の花の髪留めをしたきれいな女性がいた。


「うふふふ、似合うわよ。イツキちゃん」

「えぇ、とっても綺麗だわ。相変わらず腕が良いわね」

「お褒め頂きありがとうございます、奥様」


 そこへ、ディーテ婆ちゃんとアポロ婆ちゃんがやって来て私の姿を褒めてくれる。


「あらあら、綺麗じゃない。とっても素敵よ」

「ヘラさん、髪留めイツキちゃんの瞳に合わせたのね」

「えっ? 私の瞳?」

「あら? 気付いてなかったの?」


 アポロ婆ちゃんが言うには、私がオチュードの村に来てアポロ婆ちゃんに魔力の力の使い方を習い始めてしばらくたった頃、黒だと思っていた私の瞳がよく見れば茶色で、さらに瞳の奥に黄色の花が咲いているように見えたらしい。そして、真っ黒だと思っていた髪色も焦茶色だったと。


「あ〜、そういうこと」


 確かに、私は純日本人だけど元々色素が薄く、髪色も焦茶色、瞳も茶色で瞳の中に向日葵が咲いているように見えた。髪色が真っ黒に見えたのは、仕事上黒に染めていたから、そして黒目に見えたのはカラーコンタクトをしていたから。こっちに来てからヘアカラーもないし、カラコンをつける意味もないからそのままにしていただけだった。


「なんだって、そんな面倒なことしないと悪かったの?」

「変な仕事先なのねぇ〜」

「今のイツキちゃんの方が、いいわよ」

「そうよねぇ〜。来た時は、青白くって栄養足りてなかったもの。今にも倒れそうで」

「あは、ははは。ご心配おかけしました」


 そんな話をしていると村長と家令のハデス爺ちゃん、アレス爺ちゃんが、迎えに来てくれた。


「「「ほぉ〜」」」

「いつもより大分綺麗じゃぞ、イツキ」

「えぇ、別人のように見違えましたよ」

「これが、ワシと剣術を交えてるイツキとはなぁ〜」

「おじぃ達、それって褒めてる?」


 そう聞くと、おじぃ達はスッと目を逸らした。しばらく沈黙が続き、誰かの吹き出し笑いからみんなで笑い合った。

 そして、初の転移門。なんの躊躇いもなく村長の後に続く私に、おじぃおばぁがクスクス笑いながら小声で「躊躇いもないな」「さすがイツキちゃん」「肝が座っとる」なんて言っているのが聞こえたけどスルーです。


 門を抜けると、どこか部屋にいた。キョロキョロと部屋を見回していると「後で好きなだけ見学すりゃいいじゃろ」と先に部屋を出ようとする村長から言われ急いで追いかける。

部屋から出ると、そこには知った顔の青年が口をパカっと開けたマヌケ面で私を見ていた。


「なんじゃ、リュウ。出迎えか?」

「へっ? あ、あぁ。爺ちゃんだけならまだしもイツキも来るって聞いたから」


 そう、そこにはいつもナーガに乗ってオチュードの村に来るリュウが、いつもの冒険者のような服ではなく、騎士のような服を着てソファーに座っていた。ちなみに、転移門の先はお城の離宮。村長夫妻つまり先代国王夫妻のお屋敷だった。


「で? リュウよ。イツキに何か言うことはないのか?」

「えっ、あっ、その、に、似合ってるぞ。その、なんだ、迷い人風に言うと『馬子にも衣装』って言うのか?」

「「は?」」


「リュウ、それ褒め言葉じゃないから」

「えっ? そうなのか?」

「はぁ〜、お前はもう少し本を読め!」

「……本は眠くなる」


 リュウが脳筋だということを再確認したところで、国王陛下が待っているという場所へ表向き3人で向かう。表向きというのは、村のおじぃおばぁに強化訓練された気配察知を使えば、他にも何人かこちらを警備なのか監視なのかしているのがわかったから。


 で、簡単言うと謁見した国王陛下と王妃様はとってもフレンドリーな方達だった。会った途端、王妃様にギュッと熱い抱擁を受けた。おばぁ達に習い、必死に習得した挨拶の仕方を忘れるぐらいに。それを見た国王陛下はニコニコしてるし、村長は額に手を置いて呆れてるし、リュウは「は、母上!?」と驚いていた。





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