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【連載版】連勤術師の悠々自適な生活  作者: ラクシュミー
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3.ポジティブシンキング

本日は、2話投稿。

こちらは、2話目です。途中から短編の続きになります。

 夜になると、村長の呼び掛けで村人が集まり私の歓迎会をしてくれた。村長から聞いていたように、村人は年配の人ばかり。


「今日から、村の仲間となった迷い人のイツキじゃ。皆、よろしく頼む」

「ただいま、ご紹介頂きました川村伊月です。イツキと呼んで下さい。今のところ、私に何が出来るかわかりませんけど、これから宜しくお願いします!」


 挨拶と共に頭を下げると、おぉーっと歓声と拍手をされた。その後は、皆んなが持ち寄った料理や酒を頂きながら、この国や村、魔の森の話を聞いた。元々、人見知りもなく職業柄人の顔を覚えるのが得意な私が村に打ち解けるのは早かった。おじぃ、おばぁの家族は他の場所で暮らしている様で、私を家族の様に優しく時には厳しく受け入れてくれた。


「イツキちゃーん! ちょっと、手伝ってくれるかーい」

「はーい。イツキ、行きまーす!」

「イツキー! その後、畑に頼むなー!」

「はいはい、了解でーす!!」

「それが終わったら、ワシと添い寝じゃよー」

「いや断るっ!!」


 翌日から村人達に色々と手伝いをお願いされた。労働のお礼にご飯をご馳走してもらったり、野菜や狩ってきた魔獣の肉を貰ったり。それでも、今までの仕事で連勤しているよりも生活は充実していた。


 4年間、ずっと取れなかった目の下のクマもなくなり、丸1日会社の中で陽を浴びず不健康に見えた青白い肌も畑仕事で健康的に焼けた。何よりも、食事をまともにとっていなかった私が、3食ちゃんと食べていた。1食でも食べないと、村長の奥さんを筆頭におばぁ軍団に説教案件になる。


 念願の村でのスローライフで、人並みの生活を楽しんでいた私は、この村にいるおじぃおばぁが、現役時代に活躍し国民誰もが知る英雄達だなんて知らなかった。

 

 魔の森の隠れ里オチュード、ここは伝説級の人達が引退した英雄が静かに暮らす村だった。



*****



 村に来て2週間がたち、村の生活にも慣れてきた。村長さんをはじめ村の人たちは、時には優しく時には厳しくして色々と気遣ってくれる。


 私の1日は朝起きて、身支度を整えると食堂へ向かう。食堂では、侍女長のルピナ婆ちゃんと侍女のセレスさんが朝食の準備をしている。2人に挨拶をして、準備を手伝う。


 朝食は、村長夫妻だけでなく家令のハデス爺ちゃん侍女長のルピナ婆ちゃん夫妻、料理人ヴェスターさん侍女セレスさん夫妻ーー2人はこの村で1番若いから "さん” 付け希望されたーーの7人で食べる。


 使用人も一緒に食べる事は、通常ではあり得ないことらしいが村長夫人のヘラ婆ちゃん曰く「準備も後片付けも一回で済むし、何より皆んなで食べた方が美味しいでしょ?」とのこと。


 朝食の後は、村長夫妻とテラスでモーニングティータイム。こちらの世界では、朝食後、15時のおやつタイム、夕食後にティータイムがあるそうだ。モーニングティータイムでは、今日の村長夫妻の予定をハデス爺ちゃんが伝えるのを聞きながらお茶を飲む。それが終わるとハデス爺ちゃんかルピナ婆ちゃんに、何か手伝う事がないか聞きに行く。


 最初の3日間は、何もしなくて良いと言われ喜んで、村を散歩したり、おばぁ達とおしゃべりして過ごしたが、4年間の社畜生活のせいで何もしないでいる事が苦痛になってきた。それを村長夫妻に相談してみた。


「いつの時代も迷い人は、働き者じゃなぁ〜。今まで会って来た迷い人も数日はのんびりするものの、結局仕事が欲しいと言ってきておったわい」

「本当にね〜。女性ですら、働いていないのは自分の性には合わないって言うもの。それから、侍女に世話されるのも嫌がるわよね〜」


「あー、確かに。私の世界では、よっぽどのお金持ち以外は自分の事は自分でやっていましたし、女性が働くことはおかしな事ではありませんでしたから」

「それも言うとったのぉ。まぁ、それならハデスにでも何かイツキが出来る仕事を見繕うよう頼んどくよ」

「ありがとうございます」


「でもイツキちゃん、食事も含めて自分を疎かにしちゃダメよ?」

「は、はい!」


 そうして、モーニングティータイムの後はハデス爺ちゃんとルピナ婆ちゃんの指示で仕事をさせて貰っている。屋敷の掃除だったり、草取りだったり、花壇の水やりだったり。屋敷の仕事のない時は、村のおじぃおばぁの手伝いをした。内容は同じような事だったが、仕事の合間に皆んなとお茶を飲んだり会話する事が楽しかった。


 それでも5日間ぐらいすると、元から要領の良かった私は同じ仕事を今までよりも短時間で終わらせることが多くなった。そうなると、また手持ち無沙汰の時間が増えていく。15時のおやつタイム、アフターヌーンティータイムにヘラ婆ちゃんにその事を話すと苦笑された。


「イツキちゃん、この国のこと勉強してみる? 本当は、もう少し生活に慣れたらと思っていたけど、イツキちゃんってば今までの迷い人よりも適応するのが早いんだもの〜。それに、仕事も早くて丁寧だし、皆んなからも評判良いのよ」

「ありがとうございます! 私、この国のこと知りたいです!」


「わかったわ。通常なら家庭教師を雇うのだけれども、この村の人はその道のプロも多いし、何よりも暇だから私達が教えてあげるわね」

「はい、ありがとうございます」


 ヘラ婆ちゃんにお礼を言っていると、後ろから声がかかる。


「その前に、やらんといけない事があるじゃろうて」

「何かしら?」


 首を傾げているヘラ婆ちゃんは、とても可愛らしい。その隣に座った村長さんは、私のほうを向いてやらなければいけない事を説明し始めた。


「この世界では、誰しも魔法が使えるんじゃ。迷い人もまたこの世界に落ちた時に、今まで使えんかった魔法が使えるはずなんじゃ。今までがそうだったからのぉ。だから、イツキには【鑑定】を受けて貰い、どの魔法が使えるのか調べんとな」


「えっ? 私も魔法使えるんですか?」

「それは【鑑定】してからじゃな。どうじゃ? 【鑑定】すーー」

「ぜひ!」

「「………」」


 聞くところによると迷い人が、再び元の世界に戻った事例はないと言う。普通の人は落ち込む事が多いらしいが、私のモットーはポジティブシンキング。異世界に来たからには目一杯楽しみたいと思っている。


 元々、玩具店に勤めるぐらいアニメやラノベ、特撮ヒーローが大好き。そんな私がアニメやラノベの世界に迷い込んだのなら、そりゃあ、食い気味で返事する。


「お、おう。そうかそうか。では、早速【鑑定】するかの。ハデス」

「かしこまりました」





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