20.兄王子達とのお茶会
リュウがオチュードに来てから半月後、私はまた早朝からお風呂からのマッサージを受けた。そして前回同様に、ルピナ婆ちゃんの知り合いのおば様に詐欺メイクを施してもらった。
そして、前回は水色のドレスだったからてっきり同じ物を着ると思っていたのに、今回は黄色からオレンジ色のグラデーションが綺麗なドレスだった。
「えっ? 前回の水色のドレスじゃないの?」
「何言ってるの? まさか同じ所に行くのに、同じ物は着れないでしょう?」
「そういうものなの?」
「そうよ」「「そうでございます」」
ヘラ婆ちゃん、ルピナ婆ちゃん、メイク担当のおば様に、そう言い切られたから私は受け入れるしかなかった。『郷に入っては郷に従え』とも言うし……。
「でも勿体なくない?」
「まぁ、そういう考えもあるわ。下位貴族だと同じドレスを着回すこともあるから。でも、イッちゃんは迷い人でしょう? 迷い人が身につけている物は、後見人の力量次第なの」
「あー、つまり私の後見人はゼウス爺ちゃんとルピナ婆ちゃんだから、2人の財力や手腕が如実にわかるってこと?」
「そうよ。イッちゃんは理解が早いから良いわ」
私が準備を終えて応接室に行くと、そこにはゼウス爺ちゃんと騎士服を着たリュウがお茶をしていた。
「おぉ、イツキ。準備できたか。今回も綺麗じゃな」
「ありがとう、ゼウス爺ちゃん。ルピナ婆ちゃん達のお陰で今回も化けることが出来たよ」
「いやいや、そこまで卑屈にならんでも良いじゃろう。イツキは、元々可愛いぞ。なぁ、リュウ」
「えっ、あ、うん。その……綺麗だぞ、イツキ」
「あ、ありがとう」
私はいつもと違い顔を赤くしながら褒めてくれるリュウに、ちょっと戸惑いながらもお礼を言った。ゼウス爺ちゃんは、近隣の村長との会合があるらしく今回、私をエスコートしてくれるのはリュウらしい。前回も使った転移門でお城の離宮まで移動する。
「あー、イツキに謝らないといけないことがある」
「ん? 何?」
「実は……一番上の兄上も来ることになった」
「えっ!? ……まっ、一人に会うのも二人に会うのも一緒か。なんならまとめて会った方が、気が楽かも」
「気が楽って……そんなにドレスが苦手なのか?」
「だって、以前の世界じゃ着ることなかったもん」
「あー、なるほど。それなら納得だな」
「でしょう?」
リュウの兄ちゃん達に会うのは、お城の応接室のような所かと思っていたら中庭のテラスに案内された。中庭には色とりどりの花が咲いていて、中央には白いオシャレなガゼボがあった。ここは、王族専用の中庭らしく許可した人間しか入れないらしい。
私達が到着してしばらくした頃、騎士に囲まれながら中庭へ入って来た美丈夫が二人。
リュウから先に聞いていた情報だと、金髪碧眼なのは第一王子で紺色のロン毛を片寄せで緩く三つ編みにし深緑色の瞳にモノクルが第二王子だ。
「待たせて申し訳ない。早速だが、そちらが噂のカワムラ嬢かな?」
「はい。イツキ、こちらは長兄のドリー兄上、そして次兄のクノン兄上だ」
「お初にお目に掛かります。イツキ・カワムラと申します。本日はお招き頂きましてありがとうございます」
「カワムラ嬢、先日は国王陛下の為にありがとう。心から感謝する。本日は私達だけであるから、気を楽にして構わない」
第一王子のドリー様が私に礼を言うと、一緒に第二王子のクノン様も私に黙礼している。
「いえ、恐れ多いことでございます。私が所有していた物を提供させて頂いただけで……。ですが、それが役に立ったのであれば、私も嬉しいです」
「フッ。カワムラ嬢は謙虚な性格なのか、知識がないのかどちらなのだ?」
「クノン! そのような言い方はないだろう。父上を助けて頂いた恩人には代わりないのだぞ」
「しかし兄上ーー」
「お言葉を遮って申し訳ありませんが、クノン様の言う通りです。私には、こちらの世界の知識はありません。私がこちらに持ってきたものが魔道具やエリクサーなどに変化しただけですから」
「ほらみたことか」
クノン様の言葉を嫌味な客の接客だと思い軽く受け流し、私はスマホを取り出して写真の許可を貰う。
「あの、記念にお二人の写真を撮っても良いですか?」
「ほう、それが噂にきくガラッケの後継機のスマホというものか? 写真というのはその場のものを記録に残せる事だったな?」
クノン様は魔法省に所属している魔術師として魔道具にも興味があり、特に迷い人の持ち物は一度は自分の目で確かめることが好きだと聞いていただけあって、私の提案にのってきた。
「では三兄弟で。はい、チーズ」
私は写真を確認しているふりをしながら、クノン様を検索した。
【クノン・スプリーム・ユーピテル】
人族。ユーピテル王国、第ニ王子。
魔法省。
風、水属性。スキル多数。
〈その他〉
魔道具、新しもん大好き。
負けず嫌いのツンデレ。
ピーマン、ニンジン、トマトが嫌い。
小動物、甘いもの大好き。
虫が大嫌い。
「どうした? イツキ。ニヤニヤして……」
私はクノン様の情報、特に子供の様な食べ物の好き嫌いに無意識にニヤけていたらしい。
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