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【連載版】連勤術師の悠々自適な生活  作者: ラクシュミー
19/39

19.残念な主

 冒険者の仕事にも慣れ、サクサクと依頼をこなすとどんどんとランクが上がり、半年もするとランクDの冒険者となっていた。私が、2ヶ月ごとにランクが上がっていったのは、おじぃおばぁ達の鍛錬の賜物と、頼りになる相棒である朱雀のお陰だった。


 朱雀が頼りになるというのは、以前、毛繕いをしている朱雀を何気なくスマホで写真を撮り、これまた何気なく検索してたところ……



【朱雀】

 フェニックス。雄。

 火属性。

 スキル:身体強化。威嚇。

 契約:イツキ・カワムラ

  〈その他〉

   小鳥時代にイツキに助けられた恩あり。

   イツキの作る唐揚げが大好物。

   


「えっ!? 朱雀、フェニックスだったの?」

「なんじゃ、イツキは気づいておらんかったのか?」

「てっきり知ってるもんだと思ったんじゃがな」


 朱雀のことを知ったのは、おじぃおばぁと我が家のテラスで、お茶をしている時だった。しかも、私以外はみんな朱雀がフェニックスだということに気づいていた。確かに、朱雀を保護した時に、おじぃ達が苦笑いしていたけど、まさかフェニックスだからだったなんて知らなかった。


「朱雀も言ってよ」

『えっ? 知ってると思ったし。だって、普通の鳥よりデカいし気づくでしょ? それに契約できるのは魔獣だけだしな。主……残念だな』

「うっ」


 確かに朱雀の言う通り、朱雀は怪我が癒えてくるとどんどん大きくなった。半年前は片腕に止まっても大丈夫だったのに、今は止まられると傾くぐらいに大きくなった。そして、完治した時に私と朱雀は契約した。


 契約後、朱雀は私と念話で会話出来るようになり、身体のサイズを変更が可能になった。今は、毛繕いが終わり鳩サイズで私の肩に止まっている。ちなみに、通常サイズは体長約1m、翼幅約2.5mでかなりデカい。そして辛辣だ。



 そんな冒険者活動を頑張っていた、ある日、ここ何ヶ月か顔を見せなかったリュウがナーガと共に村へ来た。


「リュウ、息災だったか?」

「ちょっとリュウってば、痩せたのではなくて?」

「はい、ちょっと遠征があって、王都に戻って来たのが3日前で。それから婆様、ちゃんと食べてるよ」


 リュウの祖父母にあたる村長夫妻が気にかけてリュウに話しかけている。それを私は応接室の隅で、ナーガと朱雀にバナナとジャーキーをあげながら眺めていた。ちなみにこのジャーキーは、ギルドの依頼で狩ってきたオークで作ったもの。


 元々は、朱雀のオヤツ用に作っていたけど、味見したところかなり味が良くて自分用にスパイスたっぷりのを作って晩酌のアテに作ったら、おじぃおばぁにも好評だった。そしてジャーキーを食べたら無性にサラミも食べたくなり、AIのミクちゃんに頼んでレシピを探してもらった。


 サラミは腸詰めなしの作り方もあるらしく、そのレシピで作って今は冷蔵庫で乾燥脱水中。


「遠征とな……アレか? 西の森のスタンピードか?」

「そう。中々の規模で、10日ほどかかった。今回は、竜騎部隊だけじゃなく獣騎部隊と魔法省からも応援が来た」

「なんと……それは凄いな。して、戦果は?」


「スタンピードは終結。怪我人はいたけど、死者はいなかった」

「そうか、それは何よりじゃった。で? しばらくゆっくり出来るのか?」

「あぁ、今日から1週間の休暇をもらった」

「よし! 今夜はリュウを労って宴じゃな」


 村長夫妻が嬉々として、応接室を出て行った。そして、みんなに宴の準備を頼む声が聞こえてきて、私とリュウは顔を見合わせて笑った。


「絶対、飲みたいだけでしょ」

「まー元々、祭り好きな人達だから。で? ナーガは何を食ってんだ? これは……ジャーキーか?」

『グルルッ』

「いや、取らねーから怒んなって」


 リュウがナーガの目の前にあるお代わり用のジャーキーに手を伸ばそうとして、ナーガに怒られていた。それを見て、私はカラビナから人間用のジャーキーをリュウに渡す。それを「ありがとう」と受け取り、躊躇いもなく食べるリュウ。


「うっま! 良いな、このスパイス効いたやつ。どこで買った?」

「……あのさ、それ毒入ってたらどうすんの?」

「ブッ!!」

「うっわ、汚ったな!」

「お前がそんな事言うからだろ!」


 口を拭いながらリュウに怒られたので、お詫びに私の淹れたコーヒーを渡す。


「申し訳ない。ただ、リュウが私の手渡しの食べ物を躊躇いなく食べるからさ。王族って毒味とかしないの?」

「あ? あー、城にいる時はな。でも、この村では気にしてねーな」

「そうなんだ。まぁ、この村でやらかす人はいないからねぇ」

「そうそう。信用できる人だけだしな、イツキも含めて」


「それはそれは、ありがとう」

「はははっ。それに、子供の時からある程度の毒には耐性つけられてるしな」

「大変だな、王族生活」

「ホントだぜ。だから、ここの方が落ち着くんだ。気を張ることもねーしな」


 そう言いながら、リュウはお腹が満たされて寄り添って昼寝をしているナーガと朱雀を優しい目で見ていた。


「ところで、さっき聞こえた獣騎部隊とか魔法省って?」

「ん? あー、俺ら竜騎部隊がドラゴンに乗るように、大型の獣に乗って戦うのが獣騎部隊、で、主に魔法や魔術で戦うのが魔法省の魔術師団。あっ、そう言えば二番目の兄上がイツキに会いたいって言ってた」


「えーっと第二王子ってこと?」

「そう。魔法省にいて久々に会ったら父上の件を解決してくれたイツキに会いたいって」

「マジか……」


 また城に行くとなったら、前日から揉みに揉まれて詐欺メイクすんのか……。面倒くさい。ここは、潔く……


「面倒だからって断るのなしだぞ」

「グッ……」


先にリュウに言われて、また城にドナドナされる事が決まった。


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