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【連載版】連勤術師の悠々自適な生活  作者: ラクシュミー
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17.初めての依頼

 東門からウインドウショッピングをしつつ歩いて30分。冒険者ギルドに到着した。スウィングドアを開けて、中へ入るとまだ午前中ということもあり多くの冒険者がいた。


「えーっと、まずは掲示板を確認するんだったよね。 Gはどこだろ? G、 G 、G……」


 掲示板には、ランクごとに依頼が貼り付けてあり、受けたい依頼書を持って受付に行くらしい。そこで、依頼書とギルドカードを提出して受付したら、依頼をこなす。依頼人がいる場合は依頼達成の確認サイン、討伐の場合は討伐部位、採取なら採取したものとギルドカードを受付に提出したら、依頼完了。


 報酬は現金で貰うこともできるし、ギルドカードに貯めておくことも出来るらしい。ギルドカードは、身分証明書でもあり銀行のカードでもあるようだ。


「ランクGだと、ほとんど薬草採取か街の便利屋さんみたいな仕事だって聞いてたけど本当だなぁ。……んじゃ、とりあえずコレかな?」


 私は、依頼書の一つを選び受付を待つ列に並んだ。受付は、元の世界の銀行のように横長のカウンターがありに、スタッフが3人対応している。10分ほど並んで私の番になったので、受付に依頼書とギルドカードを出す。担当してくれたスタッフは、女性で和やかに受付してくれる。


「いらっしゃいませ。えーっと、ランクGの依頼で薬草を採取……あー、薬師のミャンさんのね」

「ミャンさん?」


「あなたは、初めての依頼みたいだから知らないのね? ミャンさんはこの街で薬屋をやっている人なんだけど、偏屈なお婆さんでねぇ。少しでも素材が気に入らないと達成のサインしてくれないのよ。だから、あなたも苦労するかも知れないわよ」


「マジですか? でも、まぁ、やるだけやってみます」

「そう? まぁ、ここで冒険者をやっていれば一度はミャンさんと関わった方が良いかも知れないわ。この街で、ポーションを作ってくれている人でもあるからね。……はい、受付終わりよ。頑張って!いってらっしゃい!」

「ありがとうございます。いってきます」


 受付のお姉さんに、お礼を言ってギルドを出る。再度、依頼表を確認してみる。

 今回の依頼内容は、薬草20、上薬草10、魔力草10。


「薬草、上薬草、魔力草かぁ。これって、やっぱり採取しないと行けないのかな? とりあえず、わからないから聞いてみるか」


 私は、ギルドのお姉さんに教えてもらった薬師ミャンさんの薬屋へと向かった。薬屋の場所は大通りから少し外れた所にあり、店の前には大きく【薬】と書いた板がぶら下がっていた。


「すみませーん。ミャンさん、いらっしゃいますかー?」


 店内は薄暗く、壁面には色々な薬になるであろう材料の草や虫やゲテモノ類が並んでいた。そして、薬屋だからか独特な匂いが店内に漂っている。


「誰だい? 見ない顔だ……新人だね?」


 奥から出て来たのは、杖をついて見た感じ70代の鉤鼻で腰の曲がったお婆さん。


「うおっ、魔女?」

「誰が魔女だい! 失礼な」

「あっ、すみません。あの、私、ミャンさんの依頼を受けた者なんですけど」

「依頼? あー、薬草のかい? 昨日出したばかりで、今回はえらい早いね。どれ? 見せてみな」


 ミャンさんが、ドカッとカウンターの所の椅子に座り掌を上に向けて手招く。


「あっ、いや、質問があって来たんです」

「なんだい、まだなのかい。んで、質問って何だい?」

「依頼って採取ってありましたけど、採取以外でも良いんですか?」

「は? どう言う意味だい?」


「育てた物でも良いのかな? と」

「育てた!? 嬢ちゃんがかい?」

「はい。まぁ、自宅の花壇で育てた物なんですけど……」


 そう言って、カラビナポーチから10を1束にした薬草を2束、上薬草を1束、魔力草を1束出してカウンターに並べる。自宅の花壇に花の苗を植えるついでに、森で採取した薬草を植えたのがきっかけで、いつの間にかおじぃ達の手で花壇が増えており、花とは別に薬草用の花壇が私の担当となっていた。

 

 ちなみに、花壇で薬草が育つのは花壇の土に、私が使い終わったコーヒーの豆カスを肥料として混ぜているから。普通のコーヒーの豆カスなら育たないかも知れないが、私のコーヒーは私のペットボトルの水ーー一般的には聖水ともいうーーを使って入れているので、豆カスにも何らかのご利益があるのかも知れない。


「どれ……。ほう、どれも鮮度が良く特級品といっても良いぐらいじゃわい。これを花壇でとは……お主、街の者じゃないね?」

「はい。家は、オチュード村です」

「何!? どうりで……」

「で、どうです? 依頼達成で良いですか?」

「良いも悪いも、こんな特級品出されたら文句の付けようがないだろうよ。依頼書貸しな、サインするから」


 依頼書を渡すと依頼達成の確認の欄にサインをし、その下に何か書き込んでいる。ミャンさんは、私に依頼書を返しながら確認をしてきた。


「なぁ、嬢ちゃん。これから指名依頼しても良いかい?」

「指名依頼? 私に?」

「そりゃそうだろう?こんな良い薬草を卸してくれる人間を、易々逃がしゃしないよ。イヒッヒヒヒ」

「おぉー、笑い方も魔女だ」


「だから、誰が魔女だい! 年寄りは敬うもんだよ」

「痛っ! 年寄りは杖で人を殴りませんって」

「うるさいね〜。で? どうなんだい? 指名しても良いのかい?」

「私の薬草なら喜んで」

「そうかい、そうかい。じゃあ、これからよろしく頼むよ。嬢ちゃん」


 手を出したミャンさんと握手をする。


「私は、イツキって言います。これ、良かったらお茶菓子にでもどうぞ」

「何だい、これは?」


ミャンさんに渡したのは、先日、ヴェスターさんと作ったポン菓子。火属性の練習がてら、古米を破裂させて水飴と絡めて、一口サイズに切ったもの。興味深そうに眺めていたミャンさんは、一つ摘むと口に入れた。

 

「こりゃ美味いね。ありがたく頂くよ。そうだ、お返しにコレやるよ」


カウンターの下から出して来たのは、私からしたら見覚えのある箱だった。




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