14.冒険者登録
ギルマスと共に、ギルドの演習場に向かう。
「イツキは、あの方々が……その……何をしていたとかは知っているのか?」
「あー、元の職業のことですか? 知ってますよ」
「だとしたら、強いな。あの方々を黙らせるんだから」
「いやいや、おじぃ達よりおばぁ達の方が怖いってだけですよ」
「あー、なるほど……納得した」
演習場は予想以上に大きく、壁側には観客席もあった。上位ランクの冒険者達が戦う時には、観客席が埋まるほどだという。でも、先程ギルドの外観を見た時には、こんな大きな演習場があるとは思えずギルマスに聞いて見ると、空間魔法で作られているようで見える空も幻影だという。しかも、どんな戦闘にも耐えれるらしい。
「じゃあ、イツキと対戦するのはランクCの冒険者だ。おーい!」
ギルマスに呼ばれて、演習場の観客席に座っていた何人かの男性のうち1人が下りて来た。
「コイツは、ウチのギルドのランクCの冒険者ミッキーだ」
「イツキ・カワムラです。今日は宜しくお願いします」
「あぁ。で、得物はなんだ?」
「えーと……何でもいいんですけど」
「「はっ?」」
使用する武器を聞かれたが、私としては何でもいい。なぜなら、おじぃおばぁからどんな得物でもある程度戦えるように指導されたから。この世界に来てから、1年もたっていないのに格闘技に興味がある私に色々と教えてくれた。側から見ればスパルタ的に。
そのおかげで、どんな武器でも使えるし気配察知も出来るようになったのだが……。それを知らないギルマスとミッキーさんは困惑して聞いてきた。
「いやいや、何でも良いってことはねーだろ?」
「いつも使ってるのは何なんだ?」
「いつも……色々?」
「……もしかして、どの武器でも使えるのか?」
「あー、まー」
「マジか……」
とりあえず、演習場にある刃を潰した剣を借りて試験を受ける事にした。
「イツキ、いっきまーす!」キンッ。
「うっ。マジか……。本当に初登録なのか?」
「そうですよ〜」
先手必勝とばかりに掛け声と共に、ミッキーさんに向かい剣を振るうと案の定受け止められた。
まぁ、真正面から突っ込めば受け止められるよね〜。じゃあ、この後は……。
一旦、後方にジャンプして距離を取る。そして、ミッキーさんが体勢を整える前に、再び距離を詰めて剣を真っ向から垂直に地面スレスレまで斬り降ろした。そして、すぐに地面スレスレにある刀の刃を上部に返して、ミッキーさんの股から顎まで斬り上げた。いわゆる、佐々木小次郎の燕返し。
もちろん狙うは、ミッキーさんの持つ剣であって怪我をさせるつもりはないので、ちゃんと間合いは考えている。その結果、ミッキーさんの剣が、後方に飛んで行った。
「「「あ……」」」
剣を飛ばされたミッキーさんと観客席にいるミッキーさんのお仲間さんが剣の行方を見ながら声を出した。
「止め!!」
なーんだ、別に相手を倒さなくても良いなら、他にもやり方あったのに。誰も教えてくれないんだから。
「イツキ。問題なく合格だ。手続きは、こっちでやるぞ。ついてこい」
「はーい。あっ、ミッキーさん、お時間頂きありがとうございました」
「お、おう。まぁ、頑張れ」
「はい」
ギルマスに連れて行かれた先は、ギルマスの執務室だった。
「さて、まずはコレがお前の冒険者カードだ。ここの窪みに血を一滴垂らせば登録が完了する」
そう言われて、血を一滴垂らすとカードが淡く光った。ただ、それもすぐ収まる。
「実力的にはEランクくらいから始めさせても良いんだが、いきなりやりすぎると周りの連中から反感を買うかもしれん。Gからコツコツやって実力を示していってくれ」
「はい! ありがとうございます」
執務室を出て、先程の食堂へ向かうと、まだおじぃ達は楽しそうに酒を飲んでいた。
「おう! イツキ、どうじゃった」
「うん、無事に登録したよ」
「で? ランクはいくつじゃ?」
「G」
「「「「なんじゃとー!!」」」」
おじぃ達が、立ち上がり大きな声を出すから周りにいた冒険者達に注目を浴びる。
「納得がいかん!」
「ワシがダルシムに話をつけてくる!!」
「なら、ワシも」
「ワシもじゃ。アイツにわからせてやる!」
「いやいやいや、地道にやった方が良いからって配慮だから。ギルマスは悪くないから」
そう言っておじぃ達を宥めていると、近くにいた冒険者達が笑いながらこちらを見ていた。
「じぃさん達、いくら孫が可愛いからって言っても文句言うなよ」
「そうそう。その娘が配慮だとか言ってるけどよー。どうせ配慮じゃなくて実際弱いんだろうよ」
「違いねぇ」
「じぃさん達も登録するのか? だとしたら、いつから、ここは養老院になったんだ?」
「「「「あっははは」」」」
酔っ払った冒険者達が、口々に言いたいことを言い笑っているのを見て、私は「あー終わったな」と思い、おじぃ達を宥めるのを止めそーっと距離を取った。
「クソガキが、調子のってんじゃないわい!」
「今、何と言った?」
「弱いのは、お前らじゃろうて」
「んだと、ジジィ!! 俺らは全員ランクDだ!」
「ランクDで偉そうにしてるとは、ここのギルドも腑抜けたのぉ」
「うっせー!死に損ないが!!」
「あー、煩い煩い。弱い犬は、よう吠えるのぉ」
「んだと? コラッ! クソジジィ達なんて、俺らにかかればすぐあの世だ!」
おじぃ達があー言えば、酔っ払い達がこー言う。だんだんと声も大きくなり、隣のギルドの方にいた冒険者やスタッフまでもが、何事だと見に来てギャラリーが増えて来た。
あー、こんなんだったら、おばぁ達と来れば良かったかも。
カウンターでアイスティーを飲みながら、ボーッとおじぃ達を眺めていると声が掛かった。
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