13.冒険者ギルド
「おぉー、これが異世界の街!」
異世界に飛ばされてから半年過ぎて、初めての街。
門を潜ると、大通り沿いには宿屋や飲食店、商店が並び、街へ入って来た旅人や冒険者達に至る所から声が掛かる。その大通りを進むと広場があり、そこでは多くの露店が軒を揃えていた。
露店の近くにはフリースペースにテーブルと椅子が並んであり、皆んな購入した食べ物をそこで食べるらしい。今も、何人かの冒険者グループが食事をしていた。
冒険者ギルドは、その広場に面した所にあった。キョロキョロとしながらも、おじぃ達について行く。
スウィングドアを入ると、外とはまた別の活気があった。掲示板らしき物を見る人、カウンターでギルド職員に手続きをしてもらっている人、また別のカウンターでは狩ってきた品物などを買い取りしてもらっていた。
「うわぁ〜、スゴい!ねー、ねー、アレは何? あっちは?」
「イツキ、どーどーどー」
「まずは、落ち着け。今、ヘルメスが対応してるから」
「あっははは。初めてだから、しょうがないじゃろうがな」
まさに、異世界アニメで見たような冒険者ギルドに、私は興奮し外よりもキョロキョロと挙動不審になっていたらしい。
「どうせ、時間かかるんじゃろ? 食堂で待とうかの」
「そうじゃな。ここの食堂も久々じゃ。ほんじゃ、ヘルメスに言ってくるかの」
「ほら、イツキ行くぞ」
「えっ? あっ、ちょっ、猫じゃないから」
オウル爺ちゃんが食堂に行く事を提案すると、クロノス爺ちゃんはヘルメス爺ちゃんの元へ、フラフラと掲示板を見に行こうとしていた私はセイドン爺ちゃんに後ろ襟を掴まれて食堂へ連れて行かれた。
食堂は、テーブル席とカウンター席があり、まだ昼前だからなのかさほど混んではいなかった。セイドン爺ちゃんにテーブル席の椅子に座らされると、そのタイミングでオウル爺ちゃんが飲み物を運んで来た。どうやら冒険者ギルドの食堂は、セルフ方式らしい。
「クロノスとセイドンはエールじゃろ? イツキは、アイスコーヒーじゃ」
アイスコーヒーを飲みながら、気になっていた事を聞いてみる。
「登録ってどんな感じなの?」
おじぃ達が教えてくれたのは、冒険者ギルドのランクはGからSSの9段階ということ。基本的には自分のランクと同じランクの仕事しか受けられないけど、数人でパーティーを組むかギルドが複数のパーティーを集めて行う大規模な作戦の場合は人数が多い分難易度が下がり、1つか2つ上のランクの仕事を受けられるそうだ。
登録は10歳からなので年齢制限はもちろんクリアしてる。登録時には、試験官の立ち合いの元戦闘能力試験があり、その試験の結果でランクが決まるらしい。
「えっ!? 戦闘能力試験? 戦うの? 私、人と戦ったことないよ? 大丈夫?」
「もちろんじゃ」
「余裕じゃろ」
「それより、やり過ぎんかの方が心配じゃ。今まで、ワシらと山歩きしてたんじゃからな。ランクFでホーンラビットを1人で倒せるぐらいじゃぞ」
「えっ? じゃあ、この前私が仕留めた、あのイノシシ……じゃなくてワイルドボアは?」
「「「Dじゃ」」」
ホーンラビットは、角の生えたウサギ。ワイルドボアは、前世で見たイノシシの3倍は軽くある、大きなイノシシ。
オチュードの村では、半自給自足なので食肉も自分達で仕留める。
武術や魔術を教えてもらい、半ば強制で山に連れて行かれ「さぁ、狩れ」と前に押されて初めて1人で狩ったのがホーンラビット。そして、つい先日、またもや狩らされたのがワイルドボアだった。
「美味かったじゃろ?」
「確かに、美味かったけど……。ワイルドボアの時は、いきなり突っ込んできたから無我夢中で、あまり記憶がないんだけど」
「それでも、倒したことには間違いないじゃろ」
「でも、討伐部位はボロボロだったって、クロノス爺ちゃん言ってたじゃん」
「まあ、最初なんてそんなもんじゃろ」
そんな話をしていると、ヘルメス爺ちゃんが強面でガタイの良い男性を連れて食堂へ入って来た。
「おぉ、待たせたのぉ。イツキ、コイツはここのギルマスじゃ」
「なんじゃ、今はダルシムか。大丈夫なのか? お前で」
「ダル坊がギルマスとは、ワシも年を取ったもんじゃな」
おじぃ達にボロカスに言われているギルマスのダルシムさんは、苦笑いをしながら頭を掻いていた。そんなギルマスを、食堂にいる冒険者達は物珍しそうに見ている。
「ちょっ、今はちゃんとしてますって。何なんすかー。あー、で、そこの女性がさっき話してた?」
「あっ、イツキ・カワムラです。えっと……何かスミマセン」
「いや、大丈夫だ。じゃあ、早速、戦闘能力試験を……って、何で皆さんも立ち上がるんすか? ここで待ってて下さいって」
「なんじゃ、年寄りを除け者にする気かの〜」
「あー、嫌だ嫌だ。ここのギルマスは、横暴じゃのぉ〜」
「昔は森で迷子になっておった、ダル坊がなぁ〜」
私とギルマスが移動しようとすると、当たり前のようにおじぃ達が付いて来ようとする。それを止めようとすると、年寄りという事を盾に言いたい放題だ。
「おじぃ達は待ってて!」
「まぁ、イツキがそう言うなら……」
「しょうがないのぉ」
「じゃあ、エールのお代わり貰おうかのぉ」
「イツキ、ツマミは置いていっとくれ」
「はいはい」
カラビナポーチから、枝豆のペペロンチーノとホーンラビットの唐揚げをテーブルに出す。
「こりゃ、酒が進みそうじゃな」
「エールも良いが、蒸留酒でもいいのぉ」
「飲み過ぎると、おばぁ達に怒られるからね!」
「「「「………」」」」
「いい?」
「「「「……はい」」」」
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