12.冒険者ギルドと闇ギルド
サクラの木に水をあげた後に、オウル爺ちゃんと共にヘルメス爺ちゃんの家へ向かった。
「おい、ヘルメス。いるか?」
「んー。なんじゃオウルか。おぉ、イツキも。どうした?」
「あー、そろそろイツキも冒険者登録しようかと思ってな」
「何? もうか? 早くないか?」
ヘルメス爺ちゃんは、まだ鍛錬を始めてから時間がたってないことに心配だと言う。
「いや、大丈夫だ。レベルとしては既にDにはいっとる」
「まぁ、オウルが言うなら大丈夫じゃろ。で、どっちじゃ?」
「それを決めようと思っての。ダイアナはいるか?」
「ちょっと待て。おーい、ダイちゃん」
「何だい、ヘルちゃん」
ヘルメス爺ちゃんとダイアナ婆ちゃんは、幼馴染だったのもあって今でも呼び方は幼少期の頃のままらしい。
「あら、オウルにイっちゃん。なによ、お茶も出さないで。ごめんなさいね、気が利かなくて」
「おぉ、そうじゃそうじゃ。すまんかったな」
【ヘルメス】
元冒険者ギルドのギルドマスター。
土属性。
〈その他〉
元ランクSSの冒険者。
ハンマー使い。
ダイアナとは孤児院からの幼馴染婚。
【ダイアナ】
元闇ギルドのギルドマスター。
闇、火属性。
〈その他〉
元ランクSの冒険者。
鞭使い。
ヘルメスとは孤児院からの幼馴染婚。
「じゃあ、まずは2つのギルドについて説明しようかの」
《冒険者ギルド》
各町にある冒険者稼業の斡旋をしている団体。
冒険者カードの発行や、依頼の取次や討伐魔獣の買取、飲食のサービス提供などをしている。登録時は、Fランクから始めて依頼をこなす毎にポイントがたまり、ランクアップ出来る。ただし、ランクB以降は昇格試験に合格しなければいけない。
《闇ギルド》
通常の冒険者ギルドとは異なり、スパイ活動や暗殺など何でも行うギルド。
独自の魔法や知識、禁術を持っている人物が多く在籍している。以前は、冒険者ギルドとは仲が悪く裏で活動する原因にもなっていた。今は、低価格の平民相手の仕事の方が多い。こちらのランクは、仕事の出来高次第。
「以前は仲が悪かったって、今は?」
「今でも表立っては仲は良くはないわよ。でもね〜、私が言うのも何だけど、トップ1、2が揃いも揃って表の人間と結婚しちゃうとね〜。しかも相手はかたや王宮諜報機関長、かたや冒険者ギルドのギルマスだとね〜」
4人の結婚が、今までの敵対していた関係を変えるきっかけになったらしい。
「あー、確かに。でも結婚の時に、お互いに組織からの反対はなかったの?」
「いや、そりゃバンバンあったぞ。じゃが、先代国王つまり今の村長じゃがな。村長が闇ギルドを非公式的にじゃが認めたんじゃ」
「えっ!?犯罪を認めたってこと?」
ヘルメス爺ちゃんの説明によると、国が認めていないから犯罪になるのであって、認めておけば犯罪を防げると考えた村長は、闇ギルドを諜報機関の監視下に置いたらしい。
元々、闇ギルドへの依頼は高額なために、利用するのは後ろめたいことをしている貴族や違法な商売をしている悪徳商人。だったら、闇ギルドから情報を買えば諜報機関も助かるんじゃないか?というのが村長の考え。
だけど、それを公式的に認めれば利用する人間がいなくなるために、非公式で認め、それを知っているのはギルマスのみ。しかも、ギルマスになった時に契約魔法で縛られるらしい。
「じゃあ、4人が結婚してるのは……」
「限られた人間しか知らんのぉ」
「だから、デートなんて中々出来なかったのよ」
うわぁ〜、芸能人のお忍びデートと同じことかぁ〜。変装したらバレなそうだけど……。
「変装しても、強者にはバレるからのぉ」
「えっ!? バレんの?」
「そりゃ、鑑定待ちもおるし気配が違うんじゃ。まぁ、それを活かした仕事じゃからな」
「だから、もっぱらデートはこの森じゃ」
「デートが森……」
「あら? 楽しいわよ、ピクニック」
良く言えばピクニックか……。
「で、イツキはどっちに属したいんじゃ?」
「んー、やっぱり冒険者ギルドにする」
「おう、そうか。じゃあ、昼を食ったら行こうかの」
「ヘルメス爺ちゃん、付いてきてくれるの?」
「当たり前じゃ。冒険者ギルドにも良し悪しがあるからのぉ」
「じゃあ、お願いします!」
*****
昼食後、私はヘルメス爺ちゃん達と一緒に冒険者ギルドに行くことになった。
「セイドン爺ちゃんとクロノス爺ちゃん、山に行くんじゃなかったの?」
【セイドン】
元ランクSS冒険者パーティー『グレートファング』。
パーティーのリーダー。
雷属性。
〈その他〉
元ランクSSの冒険者。
大剣使い。
【クロノス】
元ランクSS冒険者パーティー『グレートファング』。
パーティーのメンバー。
水属性。
〈その他〉
元ランクSSの冒険者。
双剣使い。
「良いんじゃ、良いんじゃ。山は逃げんからの」
「そうじゃよ。それよりイツキの冒険者登録の方が面白そうじゃしな」
「面白そうって……」
「あっははは。まぁ、皆んなイツキが心配なんじゃよ」
ヘルメス爺ちゃんはそう言うと、私の頭をポンポンとしてくれる。それが何だか嬉しくもあり恥ずかしくもあった。でも、ちゃんと言わなきゃいけないことは、ちゃんと言おうと思う。
「……ありがとう!」
そう話している間に、今回私が冒険者登録をしにやって来た街に到着した。そこは、オチュードの村がある魔の森を抜けて、1番近い街、《アドベントゥーラ》。
アドベントゥーラは、魔の森に近いこともあり冒険者の街として有名で、冒険者ギルドも王都の冒険者ギルドの次に大きいらしい。街を取り囲む高い塀は、万が一魔の森から魔獣が来ても良いようにらしい。街へ入るには門を通らなければならないのだが、魔の森から1番近い門は東門。だだし、東門はよっぽどのことがなければ開かないそうだ。
その為に、私達は通常時に出入りできる中央門に向かう為に、高い塀に沿って未だ馬車を走らせていた。
面白い、もっと読みたいと思ったら、『いいね』でも、ページの下にある【☆☆☆☆☆】でもタップして下さい。あわせて、ブックマーク&評価も宜しくお願いします!
お気に入り登録や感想、メッセージも頂けたら嬉しいです
☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆




