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ヒーローの名のもとに。  作者: ぼうすけ
2/2

第二話『夢を叶える力!!』

ヒーローにあこがれる少年円加光一が住む降星ヶ丘にX獣が出現する。

X獣の見た目は驚いたことに光一の好きなテレビ番組に登場する生物にそっくりだった。

【グガガガガグアア】


異形のそいつは醜悪な身体を震わせた。


「なんなんだよあれ!?」


「鉄砕岩竜|≪てっさいがんりゅう≫ガルゴノス…!?」


「ガルゴ?はぁ!?お前あれ知ってるのか?」


「あの岩に包まれた巨体、頭部に突き出た角…間違いない。」


「とにかく、逃げねぇと!!俺ら外にいてラッキーだったな!!」


藤宮に言われてハッとする。


「そうだ!校舎内に居る生徒や先生を避難させないと!」


校舎に向かって走り出す光一。


「おい!!どうなっても知らねえぞ!!」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「びっくりしたー」

「今日一日晴れの予報だったよな」


(あいつまた藤宮にボコられに行ったのかねぇ)


稲妻騒ぎで教室はざわざわする中昂平の関心は別のところへ向いていた。


(またボコボコになって教室に入ってくるんだろうなぁ…おじさん、マジごめん)


昂平が心の中で謝罪していると


「おい、なんだあれ!!」


生徒の一人が窓の外を指さし叫んだ!!


【グガガガガグアア】


異形のそいつは醜悪な身体を震わせていた。


「うわああああああ!!!!」

「えっ!?CG!?」

「やばくない!!??」

「写真写真!!」

「twinchにあげよ!!」


「こら、お前たち!!落ち着け!!」


先生がその場を鎮めようと大声を出す。


【ガッアガ・・・ガガッガガッガグアアアアア!!!!】


ガルゴノスは再び体を震わせると体表が少しずつ赤く光りだした。


(あっ、これやばっ…)眩しい光に昂平が眉を顰める


【アアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!】


ガルゴノスの雄たけびと同時に背中の突起から火の弾がほとばしる。


1発、2発、3発、4発、そして5発目


『みんな!!伏せろ!!』


学園の1km手前に落下。


火の弾は不自然に空中で跳ね返り地面に落下した

何か「見えない壁」のような物に防がれた様子を見たものは誰も居なかった。


激しい轟音、そして揺れが校舎に響く!!

爆風で教室の窓は割れ、煙が校舎に流れ込む。


幸い、割れたガラスによる怪我人は出ていないようだった。


『危ないところだった、みんな無事か!?』


「光一か!?」


校内放送で光一の声が響き渡る。


「円加くん!!」

「光一!」

「円加!!」

教室内の生徒が口々に光一の名前を呼ぶ。


(くぅこのヒーロー展開をかみしめたいが今は落ち着こう!!!!)

『みんな大丈夫か!早く校舎から脱出してくれ!!』


「でも、またあの火の弾が来るかもしれない!!」

「校舎の中の方が安全なんじゃ…」

「てか、普通にこっちに向かって来る可能性のが高くね?」


生徒たちの不安な声をかき消すかのように光一の声が全教室へと響き渡る。


『不安かもしれないが落ち着いてくれ!!あいつの今の攻撃は〈鉄流火弾〉(てつりゅうかだん)あの攻撃をした後は反動でガルゴノスは動けなくなる!時間にして10分ほどだけど…今の内ならみんな避難できる!!』


ざわざわ


「がる…なんだって?」

「本当かよ…」

「急に胡散臭いな」


教室内がざわつく


「みんな!!」


昂平が教壇に立つ


「あの怪物を見ろ!」


先ほどまでの体表の光は消え、おそらく目であろう位置に輝いていた光は消えている。


「確かに、光一の言ってることは信じにくいと思う、うん。マジ俺も思うけど、現にあいつは弱っているように見えないか?」


「確かに」

「さっきまでの体の光とかは消えたよね?」

「死んだ?」


「今がチャンスだってことはなんとなくわかるだろ?今のうちに避難しよう!!先生!!」


爆風によって半壊したドアをゆっくりとぶち破る大和先生。


「飛鳥の言う通りだ、みんな今のうちにここから避難を!!必要ないものはおいておけといスマホと財布くらいは持っていけ!!先生は他のクラスの様子を見てくる!」


そういうと大和先生は別の教室へと向かった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「おい、光一!!」


「昂平無事だったか!!」


昂平は教室から放送室へと向かい、光一と合流した。

顔面ボロボロで煤にまみれた光一はひどいもんだったが

まぎれもないヒーローの顔をしていた。


「何をのんきな…俺たちも脱出しよう」


「あぁ、だけどその前に逃げ遅れた生徒がいないか確認しな…」

「それは先生方に任せるべきだ!!」


光一が言い切る前に昂平の怒号が飛ぶ。


「お前はヒーローじゃない!!ただの一般人だ!!」


「…。」


「お前に何かあったら俺はお前の親父さんに顔向けできない!!」


「…。」


「なんとか言えよ!!」

昂平が光一の肩を掴む。


ガラン!!

静寂を遮ったのは電灯が床に落ちた音だった。

火が校舎にまで回り始めたのだった。


「…昂平。」


光一が昂平の手を掴む。


「ありがとう。俺はヒーローじゃない」


ゆっくりと力強く昂平の手を放す。


「ヒーローになりたいんだ。」


「っ!!」

(おじ、さん)


光一とある男性の姿が昂平にはダブって見えた。


「早く!!急ぐぞ!!」


「昂平…!!ああ!!」


二人は放送室を後にした


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(ここまでか…)


力なく地面に伏したゼクスの体は半透明になっていた。


〖ハハハハハ!!!!ゼクス!!!!キサマノサイゴダ!!〗


脳内にゼロンとの戦いの情景が拡がる。

(あの姿は一体…)


ビゴォン


再びガルゴノスの目に光が灯った。


【ガゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!】


(ゼロン、またさっきのをやる気か!?)


ゆっくりと力なく立ち上がるゼクス。


(この星はゼルスに似ているな…この星の未来をなぜ奪うんだ!!)


ゼクスは立ち上がりガルゴノスへ突撃する!


〖グアァ!?馬鹿め!!お前のその体で何ができる!!〗


ガルゴノスの尻尾がゼクスを強打する。

しかしゼクスはその尻尾を受け止め脇に抱えて投げ飛ばす!!


『ハァハァ…』


〖まだ、邪魔をするかゼクスさすがは勇者様だ!!〗


『俺は何も守れなかった。せめて、この星とこの生命体くらい守って見せる!!』


再び激突!!その衝撃はすさまじく地面を空を揺らすのだった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ドォン!!


どこからともなく轟音が鳴り響いている。


(これで何度目だ?)


光一と昂平は校内の逃げ遅れた生徒を探し続けていた。

このたった10分の時間の中ですでに二人の生徒を発見していた。


「あとは体育館か」

「体育館なんて外に一番出やすいだろ、もう俺らも脱出しよう」

「昂平、倉庫に閉じ込められてたりっていう可能性を考慮しよう」

「こういうときだけ頭回るよな」

「ヒーローだからな!!」


ドォン!!


「っ!!確かにもうすぐタイムアップかな…」

「急ぐぞ!!」


ドォン!!!!


(音がデカい!!)

「昂平!!」

背負っていた男子生徒を昂平に押し渡す!


「おまっ!!何を…」

瞬間、天井が崩れ分断される二人。

校舎が揺れ、壁にかかっていた額や壁が崩れてくる


「危なかった!!」


「おい、光一!!大丈夫か!!」


「ああ、何とか!!お前はそのまま脱出してくれ!!俺はこのまま体育館へ向かう!!二人も任せてしまって申し訳ない!!」


「俺はそんなにダメージ無いし、問題ないが、無茶すんなよ!!」


「大丈夫だ!!外で会おう!!」


光一が走っていく音が聞こえる。


「…ったく。よい、しょ!!あともう少しだ、頑張れ。…俺もがんばれ」


昂平はふさがってしまった通路に背を向け外に向かった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「おーい!!誰かいないか!!」


体育館に着いた光一だったが、最悪なことに火の回りはこちらの方が早く一刻を争う状態になっていた。


(こっちは改装しただけの木造建築だから燃えやすいのか!!)


「おーい!!誰か居たら返事をしてくれ!!」


ドォン!!


また衝撃!!

ドシャアアア!!


音の方を振り返ると入口が瓦礫によってふさがれていた。


「こ、これは!!まさしく『機電武人シャットル』第19話「SOS!刑事(デカ)」のような展開だぜ!!…なんて言ってる場合じゃないか」


光一は体育倉庫の中を覗く


「おい、誰かいないか!!…!?」


体育倉庫はいろんな道具が散乱していたがその中に生徒がいるのを見つけた


「ビンゴ!!」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


〖ガアアアアアアアアアアアア!!!!ここまでだあああああ!!〗


『ガフッ!!』


ガルゴノスの角がゼクスに突き刺さっている。

突き刺さった部分からは光の粒子が力なく溢れている。


〖最後に言い残したいことはあるか、勇者?〗


『クソくらえ』


〖では死ね〗


ガルゴノスは首を振り、角に刺さったゼクスを軽々と放り投げた。


ドゴオオオオン!!


ゼクスは光響学園の体育館へと落下した。


ゼクスはそこで原生生物と目が合うのだった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(なんだこいつ!?)


倉庫から救出した女生徒を脱出させるため

脱出経路を探していた光一は目の前に振ってきたその巨人が救世主にみえた。

煙が充満していた体育館の屋根はそいつに潰され新鮮な空気が流れ込んでくる。

崩れた壁から脱出もできそうだった。


「ありがてぇ…」


光一が女生徒の元へ戻ろうとした瞬間、光一は床に倒れた。


…煙を吸いすぎたのだ。


(クソ…ここまでか…せめてこの子だけでも…)


巨人と目が合う。巨人はゆっくりと手を伸ばしてくる。


「どこの誰か知らないけど、頼む…」


光一は自分の後ろで寝ている女生徒を指さす。


「あの子を助けてくれ!!」


巨人の顔は黒く、表情は無機質で感情はわからない。

だけどなぜだか光一には優しそうな顔に見えた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(死の淵に立つ自分よりも他者の生命を優先するのか!?)


ゼクスは目の前で今にも命の灯が消えかかっている小さな生命体の行動に驚いた。


(なんと気高く、尊い信念であろうか)


彼に向かって伸びた手を再び彼に向かって伸ばす。


(元はと言えば、我らの問題…本当に申し訳ない…せめて貴公の命だけでも)


ゼクスの右手が光り輝く。


小さな生命体もこちらへと手を伸ばした。

二人の手が触れ合う瞬間、小さな命の灯は無情にも消えていった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【ガアアアアアアアアア!!!!】


ガルゴノスは大きく首を振った後踵を返し街へと向かう。


〖フッフフフフ、アッハハハハハ私の邪魔をする者はどこにもいない!!!!…残念だよゼクス。もう少し粘ってくれるかと思ったが。〗


ガルゴノスの眼前に広がる降星ヶ丘(ふるほしがおか)の街並み。


〖美しい。早く蹂躙したい!!!!〗


【ガアアアアアア!!!!】


再び〈鉄流火弾〉の発射の構えをとるガルゴノス!!


バゴオオオオオオン!!!!


刹那!!ガルゴノスの突起が爆散する。


理解に時間が掛かるガルゴノス/ゼロン

その痛みが遅れてやってくる。


【ガアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!】

〖アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!〗


振り返るとそこには


光の粒子に覆われた巨大な戦士の姿があった。

腕には輝くブレスレットを、胸にはシルバーに輝くアーマーを。


〖お前は!!何者だああああああ!!??〗


『俺はゼクス。【光粒戦騎ゼクス】だ!!』


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


光一が目を開けるとそこは真っ暗な世界だった。


(あれ?そっか、俺死んだのか…)


『貴公は死んではいない。』


声の方に振り返るとそこには全身が漆黒に覆われたシルエットのヒトが居た


「うわっ!!なんだ!!お前!!」


『初めまして私はゼクス。』


「ゼ、クス?」


『あの怪物と私は別の世界からやってきた』


「ガルゴノスとあんたが?じゃあ、さっきの巨人はあんたか!」


『そうだ。私とあいつは同じ種族であり、私が討つはずだった。貴公ら種族を巻き込んでしまったことを心より詫びる』


ゼクスは片膝をつき、光一に首を垂れる。


「やめてくれよ!!ってか、俺に謝られても困るよ!」


『しかし、私の気が済まない。どうかこの謝罪を受け取ってほしい』


「いや、頑固だなあんた。…いや!!そんなことより、ガルゴノスはどうなった!?」


『ガルゴノス?ゼロンの事か?』


「この際、名前はどうだっていい!!あんたが倒してくれたのか!?」


『そうだ、本題に入ろう』


ゼクスはすっと立ち上がり真っすぐに光一に向き直った。


『貴公は死んだ。今は貴公の生命を私が繋ぎとめている』


「えっ!?」


『そこで提案だ。私の命を貴公に託す』


「どういう事!?」


『文字通りの意味だ。私の命を貴公に…』

「いや、わからん!!」


光一は両手を突き出し首を横に振る。


『時間がない。』


「あんたの命をもらって俺はどうすれば?」


『ゼロンを倒してくれ。そのための力を貴公に授ける』


「力って?」


『<創造・想像>の力だ』


ゼクスが手のひらを光一に向ける。


「えっ!?」


『時間がない!!伸るか反るか!!貴公に託す!!』


(ずっと考えていた。自分がある日突然力が目覚めたら)


光一はゆっくりと腕を上げる


(「誰かを守れたら」って。「ヒーローになれたら」って)


手を前に


(「母さんも助けられたのに」って。ただの妄想だったのに)


手を合わせる


(今、誰かを何かを、大切なものを守れるなら!!)


二人の掌が触れ合う


(迷う事なんてないじゃないか!!)


ゼクスは光となり、光一の体に溢れた。


(今、私は貴公の一部となった。)


力が溢れる。勇気が湧いてくる。


(貴公の思い伝わるぞ。)


ゼクス、堅苦しいのは無しにしよう。


(…では、行こうか)


「変、身!!』


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


救急隊に救出された少女は病室でゆっくりと語ってくれた。


「私が覚えているのは、体育倉庫で円加君が助けてくれたことと、その後輝く巨人が助けてくれたことだけです」


―巨人に救助された少女の証言―


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