転移させられた
都内の小さな公園、のどかな昼下がりのベンチに人生の終わりを迎えたような青年が座っていた。
「就職……出来ない……」
彼は絶望の淵に立っていた。大学生最後の年、周りの知り合いが優良企業からの合格通知が届くなか、彼だけ卒業してからの働く場所を見つけられず、どうしていいのか分からなくなっていた。
田舎の親に無理を言って進学させてもらい、遊びの誘いを断って真面目に勉学に取り組んできた。単位は1つも落とさず、教員からの評価も上々のはずだった。こんな真面目な人間なら就職先も引く手数多だろう。
しかしフタを開けてみればどうだ。
『勉強以外に取り柄とかある?(笑)』
『真面目すぎて頭固そうだね(笑)』
『つまらないねぇ(笑)』
『うちでは厳しいかもね(笑)』
大企業の面接官からの厳しい言葉に打ちのめされた。
ならば中小企業なら高学歴だけで武器になると挑んだが、
『今年の募集は終わったから』
『なんか使える資格持ってないの?(笑)』
『体力無いとうちは続かないよ(笑)』
『大卒だと給料高くなっちゃうから(笑)』
中小企業でさえいらないと手を振られた。
家に届いたお祈り通知は40以上、面接の最後に祈られたのを含めると100くらい。
勉強しかしなかったせいで知らないうちに使えない人間になっていた。
ついでに言うと童貞だ。